資金が回らない緊縮政策のジレンマ

 世界的な景気低迷に直面した家庭、企業、政府がいずれも財布のひもを締めている。このままでは、それぞれが合理的な選択をしたと思っても、実は共倒れを招く「囚人のジレンマ」、全ての人が消費せずに貯蓄に回れば不況が起きるという「貯蓄のパラドックス(逆説)」を招くリスクがある。

(1)支出切り詰める家庭

 家計の消費支出の伸びは、昨年第2四半期(4-6月)から今年第2四半期まで1年3カ月にわたり、所得の伸びを下回っている。その結果、今年第2四半期の平均消費性向(可処分所得に占める消費支出の割合)は74.1%で、調査を開始した2003年以来で最低となった。

 家庭が財布のひもを締めているため、流通業の業況は過去最悪の状況だ。一方で、今年第2四半期の家計黒字(可処分所得から支出を差し引いた額)は17.5%増加した。03年の調査開始以来、昨年第4四半期(21.7%)に次ぐ高い伸びだ。この黒字は「不況型黒字」といえる。

(2)現金を抱え込む企業

 負債に苦しむ家計とは異なり、大規模製造業の負債比率(韓国銀行調べ)は2011年時点で84.9%となり、1998年の295.4%、2002年の128.9%に比べると、大きく低下した。通貨危機以降、継続的なリストラで企業の体質改善が進み、利益が増加したためだ。

 それにもかかわらず、企業は支出を増やそうとしない。統計庁が最近発表した6月の産業活動動向によると、企業の設備投資は前月比で3.6%減少した。これに対し、企業の手持ち現金は大きく増加した。韓国取引所によると、3月末現在で上場企業の現金性資産は前年同月比4.9%増の54兆3403億ウォン(約3兆8100億円)に達した。

(3)「均衡財政」にこだわる政府

 政府は通常、景気が悪い時期に財政支出を増やす。しかし、現政権は財政支出の拡大を極度にためらっている。

 企画財政部は今月8日、1兆6600億ウォン(約1160億円)の税収増が見込める来年度の税法改正案を発表した。しかし、予算の増加は最大限抑える構えで、2013年度からは財政赤字をゼロにすると公言している。

 政府が均衡財政にこだわる理由は、「健全な財政」が現政権の功績の一つとして評価されているからだ。

パク・ユヨン記者
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