当時の動画を見ると、暴力に加わった中国人は少なくとも数十人いる。しかし、警察はうち2人を捕まえただけで、それ以上容疑者を摘発しようとしなかった。立件した2人についても、処理を引き伸ばし、時間を稼ごうとするのが見て取れた。2カ月後に世論が収まると、警察はひそかに事件に終止符を打った。不起訴決定が出て、容疑者は「免罪符」を得た格好となった。
当時事件を担当した警察、検察関係者は例外なく「外交的配慮があった」と振り返った。中国を刺激しまいとする外交サイドの求めに従ったというのだ。政府だけを責めるわけにはいかない。最後まで監視すべきだったマスコミ、政界、市民団体も初め沸き立っただけで、すぐに事件を忘れてしまった。警察が暴力行為に及んだ2人を不起訴にしたという報道は全くなかった。それを問題視する政治家や市民運動家もいなかった。
警察関係者は「司法処理は行わなかったが、問題の中国人を出国させたと聞いている」と語った。しかし、それも確認の結果、事実とは異なった。逮捕状を請求された留学生J氏は現在も地方のS大学に通っている。韓国人と韓国の警察官を暴行した外国人が何の制裁も受けずに、そのまま放免してしまったことになる。
政府としては、韓中友好のために大局的な判断を下したと考えているはずだ。しかし、主権国家としての最低限の自尊心まで捨てる韓国の様子を見て、中国はさらに我々を軽視したようだ。最近、脱北者問題に取り組む人権活動家、金永煥(キム・ヨンファン)さんが中国公安当局による拷問を受けた事件は、中国が韓国を見下していることも背景にある。
韓国の国民性は熱しやすく冷めやすいと言われる。全国が興奮した金永煥さん拷問事件も1カ月もたたずに忘れ去られようとしている。日本には厳しい我々はなぜ中国にそれほどまでも弱いのか。