ミサイル指針:宇宙ロケットの開発にも制限

固体燃料ロケットの開発、米国のOKなければ不可能

 「固体燃料ロケットの技術が確保できない」

 2010年10月6日、教育科学技術部(省に相当)の国政監査会場で。与党ハンナラ党(現セヌリ党)の黄祐呂(ファン・ウヨ)議員(当時)が「韓米ミサイル指針のせいで宇宙ロケット技術の確保が困難なのではないか」と尋ねると、金昌経(キム・チャンギョン)教育科学技術部第2次官(科学担当・当時)は、ミサイル指針が宇宙ロケット技術を開発する上での障害になっていることを認めた。

 韓米ミサイル指針は、軍用ミサイルだけでなく、民間の宇宙開発のための宇宙ロケットにも各種の制約を課している。その中心が、固体燃料ロケット関連の条項だ。毎秒100万ポンド(約480トン)以上の推力を発揮するロケットは、開発できないことになっている。この程度の推進力であれば、今年5月にアリラン3号衛星を打ち上げた日本のH2Aロケットが補助用に用いた、固体ロケットブースター(SRB)の10分の1の水準にすぎない。宇宙ロケットの1段目に使える固体燃料ロケットは、そもそも製造できないというわけだ。

 韓国が現在開発している宇宙ロケットの1段目は、いずれも液体燃料ロケットだ。ロシアから導入した羅老号の1段目も、2021年の打ち上げが目標の韓国型宇宙ロケットも、100%液体燃料を使用している。

 これに対し、日本のH2Aや欧州航空宇宙防衛会社(EADS)のアリアン・ロケットなど、宇宙先進諸国の宇宙ロケットは、ほとんどが固体燃料ロケットを同時に使用する。H2Aの場合、液体燃料ロケットは1種類を固定的に使い、貨物が軽量の場合や低い軌道(高度数百キロ)に衛星を打ち上げる場合には少数の固体燃料ロケットを、貨物が重い場合や静止軌道(高度3万6000キロ)に衛星を打ち上げる際には多数の固体燃料ロケットを取り付けるという手法で運用される。

 張泳根(チャン・ヨングン)航空大学教授(航空宇宙機械工学部)は「液体燃料ロケットと固体燃料ロケットを混用する理由は効率。液体燃料ロケットは長時間燃焼し、制御もしやすいが、瞬間的な推進力という点では弱く、打ち上げの瞬間に限界がある」と語った。航空宇宙研究院のある関係者も「固体燃料ロケットを併用するのが世界的な傾向だが、ミサイル指針が足かせとなって液体燃料ロケットしか使用できない韓国の宇宙ロケットは、かなり非効率的」と語った。固体燃料ロケットを自由自在に使えるほかの宇宙先進諸国に比べ、韓国は足かせを一つはめられているわけだ。

 韓国政府のある関係者は「韓国も固体燃料ロケットのノウハウを持っており、現在開発中の韓国型宇宙ロケットにほぼ問題なく適用できる」と語った。固体燃料ロケットは、国防科学研究所が軍事用に1970年代から開発を進めており、航空宇宙研究院も90年代に2度にわたって科学観測用固体燃料ロケットを開発した。この関係者は「韓国型宇宙ロケットと固体燃料ロケットをセットにすれば、それだけ成功の可能性を高めることができる」と語った。

 しかし韓米ミサイル指針では、軍事用に開発されたロケットは民間用に転換できないよう定めた条項まで存在する。ロシアなどは、かつて大陸間弾道ミサイル(ICBM)として開発したミサイルを宇宙ロケットとして活用している。一方、韓国は、平和的な宇宙開発であるにもかかわらず、軍が開発したという理由だけで、これまで蓄積してきた固体燃料ロケット技術を宇宙ロケットに適用することができない。

李吉星(イ・ギルソン)記者
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