| ■日本ではラドンガスは心配しなくてもよい? |
| 最初は何だろうと思いました。 ロスの郊外の新開発地を訪ねたときです。 新築の住宅の屋根から細いパイプが出ている。煙突とも違う。換気にしてもおかしい。 なぜ、屋根を貫通して、空に向かって突き出ているのか。 いかに雨が少ないロスとはいえ、何の覆いもないパイプだから、雨が降れば雨が入ってくるだろう。室内で、雨が入っても大丈夫な点というと、浴室ぐらいしかない。浴室の湿気抜き? ところが、モデルハウスや工事中の中に入ってみても、浴室にそんな空へ抜ける変な穴は開いていません。 ますます疑問が深まるばかり。 アメリカでは現場監督のことをスーパーバィザーと言います。 40棟程度の現場をこまめにチェックして回っています。 そのスーパーバィザーに、日本から持参した扇子や半纏のお土産を渡し、職人の仕事振りを観察する許可をとります。 もう30年も前のことです。 アメリカの現場を調査するため、延べ3ヵ月にわたってアメリカの現場へ張り付きました。朝の7時から夕方4時まで、毎日現場へ通いました。 そして、あらゆる職人の仕事の内容、使っている道具、工具、機械類を調べます。そして、職人の技術レベルと生産性を調べました。 そうしたら、アメリカの現場の職人の生産性が高いこと! ついでに、大工さんの教育システムやスーパーバィザーの工程監理、品質監理技術も調べました。 嬉しいことに、アメリカの夜間高校のカーペンター教室では、規矩術を教えています。フィートとインチの矩尺があるのです。 その時、スーパーバイザーに屋根の上を指差して、あのパイプは何かと聞きました。 地面の中のラドンガスを抜くためだと答えました。 悲しいかな、その時の私には、ラドンガスについての知識が一切なく、ラドンがなんであるかが分かりませんでした。そのため、つたない英語ではそれ以上質問することが出来ず、奥歯に物が挟まったような思いで、分ったような顔をしていました。 しかし、その後においても、日本でラドンガスが問題にされるようなことはほとんどありませんでした。 今から15年ほど前に、日本ではパッシブソーラーというのが省エネの一つの手法として大きく取上げられました。積極的な、アクティブなソーラー、例えば太陽熱を利用してお湯を湧かすとか太陽光発電ということをやるのではなく、消極的な、控え目なソーラー の開発です。 代表的なものとして土間コン床スラブにして太陽熱を蓄積するとか、石を使うとか、冬は床下に熱を蓄え、夏は床下の冷気を利用しようというものです。いってみればみみっちい省エネでした。高気密高断熱が叫ばれる前は、公庫の割増し融資が得られるとあって、各社ともパッシブソーラーに走りました。 OMソーラーとかソーラーサーキット、エァーサイクルなどがそれです。私も友人の土間コンクリート方式を借用して、割増し融資にありついたものです。 このパッシブソーラーは、その後消費者に被害を与え、訴訟問題にまで発展しました。防腐・防蟻処理した土台や床の空気を家の中に循環するわけですから、体によいわけがありません。このため、シックハウスの患者が発生したのです。 このため、防腐・防蟻処理をしないヒバ材などが使われるようになり、問題はひとまず解決したように見えました。 9年ぐらい前、日加高気密R&A住宅会議の第3回がカナダで開かれた時、OMソーラーも日本側の一つとして発表しました。その時、カナダの友人が「ラドンガスは大丈夫なのかな」と私に囁きました。十数年ぶりにラドンガスという言葉を聞きました。 つまり、日本ではパッシブソーラーということで、猫も杓子も床下の空気利用を考えました。そして、土台などの防蟻処理は問題になりましたが、ラドンガスが問題になったことがありません。 ところが、カナダの友人に言われてみてアメリカのことを調べたら、EPA(アメリカ環境保護庁)は、ラドンに関するコンシューマー・ガイドを発表していました。 それには、ラドンというのはラジュウムが崩壊することにより発生する有害な放射性ガスで、タバコについで肺がんの原因物質であると記しています。 そして、空気中の濃度が4ピコキュリー/リットルを超える場合は改修工事を行うように指示しています。 この基準に準じて、日本の空調衛生学会は150ベクレル/m3を発表しています。この2つの数字は同じものです。アメリカでは長期的には0.4ピコキュリー/リットルを目標としているそうです。 アメリカの環境保護庁は、ラドンガスの高い地域におけるガスの抜き方を具体的に図示しています。 例えば、土間コンクリート床スラブの場合は、コンクリートを打つ前に砂利層を設け、そこにガス抜きパイプを敷設し、ビニールで覆ってから土間コンクリート床スラブを打ちます。そしてバイプはそのまま上に伸び、屋根を突き抜いて空気中に拡散するという図が示されています。私がロスで目撃したそのものです。 また、床下を空気が流れている床断熱の場合は問題ないが、地下室やベタ基礎であってもリスクが大きいとして、それぞれの対応方法を示しています。 この図が私の頭にこびりついていましたから、基礎断熱とか床下の空気を家中に拡散するシステムに対しては、何時も疑問に感じてきていました。 ラドンガスを問題にしている国は、アメリカ、カナダ、イギリス、 スウェーデンなどです。 多分、それらの国々はラドンガスの濃度が高く、人体に問題を及ぼしているのでしょう。 しかし、日本ではラドンガスについて警鐘を鳴らす学者先生は居ません。池田耕一先生の「室内空気汚染のメカニズム」を読んでも緊急の危険は感じられません。 日本は、特別にラドンガス濃度が少ない国で、露ほどの心配も必要ないということなのでしょう? そうしか考えられません。 |