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アメリカ、猛暑と干ばつで原発停止

2012年8月20日(月)19時54分配信 ナショナルジオグラフィック

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 アメリカのコネティカット州で操業中のミルストン原子力発電所。猛暑により、冷却水の水源であるロングアイランド湾の水温が上昇、原子炉1基の停止を余儀なくされた。Photograph by Roger Ressmeyer, Corbis [ 拡大 ]

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 アメリカは今夏、記録的な猛暑と干ばつに襲われており、大量の水を必要とする発電所が深刻な影響を受けている。

 東海岸のコネティカット州から西海岸のカリフォルニア州に至るまで、干ばつによる水不足に加えて冷却用水の温度が猛暑で急上昇。数多くの発電所が電力生産量の減少を余儀なくされている。冷却水の水温規制値に関して、適用除外の特例を求めるケースも出ているという。

◆冷却水の温度が上昇

 8月12日、コネティカット州南東部のニューロンドン近郊にあるミルストン原子力発電所では、原子炉2基のうち1基が停止した。冷却水として利用してきたロングアイランド湾の海水温度が、測定を始めた1971年以来最高レベルに達したためだ。再稼働の見通しは立っておらず、原発を運用する電力会社ドミニオン(Dominion)の広報担当ケン・ホルト氏は、「残りの1基では、湾内のより深い海水を汲み上げている。深層水に影響が及べば、もう打つ手がない」と話す。

 電力供給量には余裕があり、一般市民の生活に影響はまだ出ていない。しかし、記録的な天候を前に電力生産をいかにして維持するのか、難題をはっきりと浮かび上がらせる象徴的事例となった。2012年7月は、記録が残る1895年から最高の暑さを記録しており、干ばつも1956年以来最も広い範囲に及んでいる。

 アメリカ原子力規制委員会(NRC)は7月、イリノイ州シカゴの南西約100キロにあるブレードウッド原子力発電所に対し、規制値を上回る温度の冷却水を使用する特例を認めた。

 また、イリノイ州の別の発電所では、冷却水用の池の蒸発が進み、水温規制値を超える恐れが浮上。ほかの水源から補給する特例をアメリカ環境保護庁(EPA)に申請する事態に追い込まれた。

◆危機に瀕する発電所

 テキサス大学オースティン校国際エネルギー・環境政策センターのマイケル・ウェバー(Michael Webber)氏は、「猛暑と干ばつが組み合わさって、電力網が受けるダメージが増大した」と指摘する。「電力生産では、水は一般に考えられているよりはるかに重要な資源だ。家庭で消費するより、家庭用の電気を生み出すために使われる量の方が多い」。

 熱波で1万人以上の死者を出した2003年のヨーロッパでも、冷却水用の川の水温が高くなりすぎて、稼働レベルを下げる原発が相次いだ。「今夏のアメリカは何とか乗り切っているが、電力不足に陥る夏がいずれ来るだろう」とウェバー氏は語る。実際に冷却水源の水位が取水管の位置よりも低くなったために、操業を停止した発電所も出ている。

 干ばつは水力発電にも影響を与える。カリフォルニア州の送電を担う独立系統運用機関(ISO)の広報担当ステファニー・マコークル(Stephanie McCorkle)氏は、「カリフォルニア州の水力発電所では今夏、電力生産量が例年に比べて1137メガワット減少すると予測されている。昨冬の干ばつの影響だ」と話す。水力発電の源となるシエラネバダ山脈の積雪量は、春の段階で例年の50%しかない場所もあったという。

「カリフォルニア州では、雪に電気が蓄えられている。夏のピーク時、水力発電は州内の電力生産量の16%を占める。残念なことに、今秋も例年より気温が高くなると予想されている」。

 夏は終わりを告げようとしており、異例の猛暑もアメリカの大部分で収まっているが、干ばつは広い地域で継続している。ネブラスカ大学国立干ばつ軽減センター(NDMC)の気候学者ブライアン・フュークス(Brian Fuchs)氏は、「今後、ミズーリ、アーカンソー、オクラホマ、カンザス、ネブラスカ、イリノイの各州で範囲を広げ、勢いを増す」と述べる。「秋も雨不足が予想され、厳しい状況が続くだろう」。

Joe Eaton for National Geographic News

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