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中間貯蔵施設 候補地を初提示
8月19日 18時14分

中間貯蔵施設 候補地を初提示
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原発事故で拡散した放射性物質を取り除く除染で出る土を保管する中間貯蔵施設を巡って、細野環境大臣は、原発を抱える福島県の沿岸部を中心とする8つの町村に対して、施設を建設する候補地を初めて具体的に示し、建設に向けた現地調査の実施を要請しました。

中間貯蔵施設を巡っては、細野大臣がことし3月、福島県の双葉町、大熊町、楢葉町の3つの町に分散して設置する方針を示していましたが、3つの町や周辺の自治体から反対する意見が相次ぎ、具体的な計画は進んでいませんでした。
19日は4か月ぶりに、中間貯蔵施設の建設などについて話し合う会議が福島市で開かれ、細野環境大臣と平野復興大臣、原発を抱える福島県の沿岸部を中心とする8つの町村長などが出席しました。
この中で細野大臣は、▽双葉町は東京電力福島第一原発の北西方向の2か所、▽大熊町は福島第一原発の西から南方向にかけての9か所、▽楢葉町は福島第二原発の西から南方向にかけての1か所の合わせて12か所を候補地として初めて示しました。
そのうえで、細野大臣は、それぞれの候補地について、建設に向けた地質や生息する動植物などを調べる現地調査の実施を要請しました。
候補地は、山や川など地形的に施設の設置が難しい場所を除いた福島第一原発から半径およそ15キロの範囲にあり、住宅も含まれていて、国が買い上げたり、借り上げたりする方針ですが、住民にとっては元の場所に戻ることができなくなる可能性が出てきました。
今回の候補地を選んだ理由について、環境省は、大量の土などを運びやすくするために、国道や高速道路へのアクセスが便利なことや、放射線量が高く住民が帰還するのに時間がかかることなどを考慮して選んだとしています。
この要請に対し、8つの町村と福島県は回答せず、実務者レベルで協議する意向を示しました。
中間貯蔵施設について、環境省は、先月から現地調査などを始め、今年度中に設置場所を決める方針でしたが、計画どおりに進んでいないのが現状です。
環境省は、今回の要請で施設の建設を進めたい考えですが、候補地に住宅地が含まれるなど、さらに住民の理解が必要となり、建設に向けては今後も難航することが予想されます。

環境相“できるだけ早く作りたい”

協議のあと、細野環境大臣は、「除染で出た土などは3年以内に仮置き場から中間貯蔵施設に搬出するという約束があり、できるだけ早く作りたい」と述べ、設置を急ぐ方針を示しました。
そのうえで、細野環境大臣は、「設置の検討をする自治体にはいろんな思いを持つ人がいるのが当然なので、丁寧な説明が求められる」と述べ、候補地となっている自治体との協議は慎重に進める意向も示しました。
また、地元から中間貯蔵施設が最終処分場になってしまうのではないかという懸念が出ていることに対しては、「最終処分施設として受け止められることは断じてあってはならない」と述べました。

中間貯蔵施設とは

中間貯蔵施設は、福島県内での除染作業で出る汚染された大量の土やがれきを、専用の容器に詰めて最終処分場ができるまでの間、保管しておく施設で、▽土などを放射線量によって分別する施設や、▽地下水への浸水を防止しながら貯蔵する施設、▽それに、草木などの量を減らすための焼却施設などを備えた施設となる予定です。
1か所で設置する場合、大きさとしては、容量で最大で東京ドームおよそ23杯分に当たる2800万立方メートル、敷地面積は最大でおよそ5平方キロメートルになるとしています。
環境省が作った工程表では、今年度中に設置場所を決め、除染で出た土などは地域ごとに設ける仮置き場に3年ほど保管したうえで、より安全性の高い中間貯蔵施設への搬入を平成27年1月以降に始めるとしています。
中間貯蔵施設が設置されないと、仮置き場の設置や除染作業が進まないとして、去年の年末には、細野環境大臣が双葉郡内への設置を要請し、ことし3月には、1つの自治体の負担を軽減するために双葉町、大熊町、楢葉町の3つの町に分散して設置する案を示しました。
この際、設置場所について、▽双葉町は福島第一原発の北側、▽大熊町は福島第一原発の南側、▽楢葉町は福島第二原発の南側に、それぞれ国が買い上げるなどした土地に設置することを検討していましたが、具体的なエリアについては示されませんでした。
しかし、地元の首長や住民からは施設への不安や協議の進め方に対する不信の声が相次いだうえ、賠償や避難区域の見直しの協議を優先してきたこともあり、中間貯蔵施設についての議論はほとんど行われず、いずれの町からも同意が得られていません。
工程表では先月から施設の構造や規模、それに工事の費用を算定する基本設計を始めることになっていましたが、事前に必要な候補地の地質などを調べる現地調査について、地元の了承が得られておらず遅れが出ていました。
国は、中間貯蔵施設への搬入を始めてから30年以内には福島県外で最終処分を完了するとしていますが、最終処分場の設置の見通しはまったく立っておらず、福島県内の自治体からは、中間貯蔵施設が最終処分の場所になってしまうのではないかという不安の声も出ています。

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