アキトは焦っていた。
格下のハズのリョウジに思わぬ苦戦を強いられていたからだ。
二人とも長身、鍛え込まれた筋肉の鎧を身につけた逆三角形で、一見すると体格差は
ほとんどない。
経験で勝るチャンピオンであるアキトが圧倒的に有利なはずだった。
しかし・・・
(クソッ、素早い・・・ボディで動きを止めなくては)
アキトはなんとかリョウジをコーナーに追い詰め、渾身のボディブローを繰り出した。
”ドムッ”
鈍い音とともにアキトの拳がリョウジの鳩尾にクリーンヒットした。したはずだったが、
「ヌルイっすねぇ、なんスかそのパンチは?」
リョウジは涼しい顔で言うとニヤリと笑った。
(オレの渾身のパンチが効いてないだと?)
「せめてコレくらいはやってくれないと!」
”ドゴォッ”
「ウグッ」
リョウジの拳はアキトの鳩尾に浅くではあるがめりこんでいた。
一瞬、横隔膜が痙攣し、息がつまる。想定外の威力のパンチに、アキトは不覚
にも数歩後ずさった。
「お! ちょっとは鍛えてるんスね。さっすがチャンプ。じゃ、ちょっとぐらいホンキ
出してもいいかな?」
余裕の表情で言い放つリョウジ。
(今のでホンキじゃないだと?)
息をなんとか整えながらリョウジをにらみつけていると、
「よっと」
リョウジが軽く気合を入れた途端、リョウジの肉体が膨れ上がった!
分厚い筋肉に覆われていた胸板はさらにもりあがり、鍛え上げられた豪腕と太い脚が
さらに一回り太くなる。6つに割れていた腹筋はさらに溝が深くなり、アキトからは
見えないが、背中の筋肉も分厚く膨らんでいる。
「なん・・・だと!?」
あまりのことに驚愕のうめきをもらすアキト。
そして次の瞬間、
”ドボォッ”
リョウジの拳はアキトの腹に深々と突き立っていた。手首近くまでめりこんでいる。
「はうぅっっっっっ」
不意をうたれたため、満足に腹筋を締められなかったアキトはうめき声を上げると
数歩あとずさった。
「逃がさないっスよ!」
リョウジは軽快に踏み込んでくると、アキトの太い首に丸太のような腕を回し、ガッチリと
つかんだ。
(はや・・・い!)
逃げられないと悟ったアキトはとっさにボディに力を込めると、ボコボコの腹筋を浮き
上がらせる。
しかし・・・
”ぼぐぅっ” ”ドスッ” ”ボゴッ” ”ドボォッ”
筋肉で膨れ上がったリョウジのヒザが次々とアキトの腹を抉る!
「あがっ! ウグッ はうっ! げぇぇ・・・」
アキトの割れた腹筋はかろうじてヒザの進入を阻止していたが、衝撃までは防ぎ
きれない。
「そうそう、その調子で力入れといたほうがいいっスよ! じゃないと内臓、つぶしちゃい
ますから」
”ドボッ” ”ボスン” ”ドゴッ” ”ゴスゥッ”
連続で襲い掛かるリョウジのヒザが次第にアキトの腹筋にめり込み始めた。
ボディはリョウジのヒザを包み込むように凹み、吸収しきれない衝撃がアキトの内臓を
えぐる!
「はうぅっ! げふぅっ! おぶぇっ! げぼぇっ!」
ボディにヒザが埋まるたびにアキトの目が見開かれ、口は半開きになり、うめき声と
ともに涎が溢れ出る。脚はガクガクとふるえ、ヒザにつぶされた割れた腹筋が波打つ
ように痙攣している。
その様子を見たリョウジは、
「お? 限界ッスか?」
攻撃の手を止め、アキトの首に回した腕を放した。
”ドサッ”
「はぐぅっ! ぅぇぇぇ・・・ひぐっ うぶぅえぇ・・・」
その場にヒザから崩れ落ちると腹を抱え、悶絶するアキト。ボコボコに割れた腹筋は
ヒクヒクと痙攣し、全身から滝のように冷や汗を流しながら、懸命に呼吸を整えようと
分厚い胸板を膨らませる。
「これがチャンプねぇ・・・がっかりッスよ」
「・・・うる・・・せ・・・ぇ、この・・・ドーピ・・・ング野・・・郎」
苦しい呼吸の下でアキトが言い返すと、スッとリョウジの目がすぼまった。
「どうやら、死にてぇらしいな・・・」
リョウジはボソッとつぶやくと、
「はぁっ!」
気合を入れると、そのカラダが一瞬さらに膨れ上がり、ギュッと音がするかのように
収縮した!
腕の筋肉ははちきれんばかりに隆起し、大胸筋は鋼のように硬くなった。肩の筋肉は
丸々と膨れ上がり、腹筋は八つの島が浮き上がったかのように深い溝が刻まれている。
少し動かしただけでもミシミシと音が聞こえそうなほどリョウジの筋肉は盛り上がっていた。
「オラ、立てよ!」
リョウジは左手で喉のあたりを掴むと、90キロはあろうかというアキトのカラダを軽々と
持ち上げた!
「あがぁっ!」
そのままコーナーポストのほうに軽く放り投げると、コーナーにぶつかって跳ね返って
きたアキトのがら空きのボディに渾身のボディブローを放つ!
”ドゴォォォォォッ”
轟音とともに筋肉の張り詰めたリョウジの腕はアキトの腹に吸い込まれ、アキトは
そのままコーナーに叩きつけられた! あまりの衝撃にコーナーポストはひしゃげ、
リョウジの腕はヒジ近くまでめりこんだ。
「あが・・・・・」
”ずぼっ” ”ドサッ”
リョウジが拳を引き抜くと、アキトは前のめりになって倒れこみ、
「げぶぅぅぅぅぅぅぅぇぇぇぇぇっ!」
盛大に嘔吐した。
「ぇぼぇえっ! おぇぇぇっ!」
嘔吐を繰り返すアキトの前には大量の胃液だまりが・・・
カラダを”く”の字に折って悶絶するアキトを見下ろしたリョウジは無言で再びアキトの
喉を掴み、無事なコーナーポストに投げつける。そして・・・・
”ドボォォォォォッン”
身も凍るような音を立てて再度リョウジの拳がアキトのボディをえぐる!
「はうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ! ぇぇぇぇぇぇぇ・・・・」
アキトの目は瞳孔まで見開かれ、半開きになった口からは胃液と涎がダラダラと流れ、
舌がだらんと垂れ下がっている。
壁の役割を果たせなくなったアキトの腹筋はリョウジの拳が埋まったまま激しく波打ち、
力が入らなくなったたくましいカラダはリョウジにもたれかかった状態でビクン、ビクンと
痙攣している。
「一度だけ、謝罪を受け入れてやるぜ?」
「・・・・・・・・ク・・・ソ・・・野郎・・・」
「・・・」
リョウジは無言で無造作にアキトのカラダを放りやると、コーナーポストに上った。
アキトのカラダは力なく中央に横たわり、ビクビクと痙攣するボディがむき出しになった。
「・・・じゃぁな」
コーナーから高々と跳躍したリョウジのカラダはアキトの腹めがけて一直線に落下し、
”ドゴォォォォォォォォォォォォォォォッン”
轟音とともに鋭くとがった右ヒザが深々と突き刺さった!
「げぼぉえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
アキトのカラダは一瞬折りたたまれるようにVの字に跳ね上がり、残った胃液を残らず
吐き出した。そして、ビクンっと一度大きく痙攣するとリングに横たわった。
「まぁまぁ、楽しかったッスよ」
そういってリョウジが去っていった後には、無残にも白目を剥いて失神し、舌がだらんと
垂れた口からは小さく泡を吹き、全身をピクピクと痙攣させているアキトが残されるだけ
だった。