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連載「酒の罪と病」(2) 依存症などリスク要因 | ||
飲酒運転違反者のうちアルコール乱用は85%、アルコール依存症は34%-。神奈川県横須賀市にある久里浜医療センターの中山寿一精神科医(35)らのグループは今年5月、「日本の飲酒運転検挙者における精神障害の実態」と題する調査結果を学会で報告した。 飲酒運転にはアルコール依存症などの精神疾患が関連しているとされるが、国内のデータは少ない。中山医師は「今回は医師が直接面接して聞き取りをしているため、より正確に診断している初めてのデータとなる」と話す。 * 調査は神奈川県警と協力し、2009年4月~11年2月まで、飲酒運転で免許取り消しとなり、処分者講習会に参加した男性226人、女性7人が対象。年齢や職業などの社会背景、精神疾患の有無、飲酒の頻度や量などについて多面的に調べた。 調査結果によると、精神疾患の生涯有病率は、男性はアルコール乱用85%、アルコール依存症34・1%に加え、反社会性人格障害12・8%、大うつ病性障害11・9%、薬物依存11・1%。女性はアルコール乱用71・4%、大うつ病性障害14・3%、パニック障害14・3%だった。 依存症患者の自助グループ「アルコール問題を考える鳥栖酒害者と家族の会」の山口貞憲代表(60)は、この結果を冷静に受け止める。「酒を断つ前の多くの依存症患者が、飲酒運転をした経験があるのは事実」と話した。 * 飲酒運転を複数回繰り返すことは「乱用」の診断基準の一つとなる。依存症はさらに重度で、長年の飲酒で脳に「依存」の回路が生じ、酒をコントロールして飲むことができなくなる精神疾患。家族関係や仕事、趣味などより、はるかに飲酒を優先するようになる。脳の回路は一生なくならないため「上手にお酒と付き合う」ことはできず、酒を断ち続けることが唯一の「回復」の道となる。 ただ、「依存症は“否認の病”と言われ、なかなか本人が認めない」と中山医師。社会に「ただの飲み過ぎ」「意志が弱いだけ」などの誤解や偏見があり、重症化してから病院に駆け込むケースが多いという。中山医師は「依存症患者は、怠け者でも意志が弱いわけでもない。社会的地位や職業に関係なく、酒を飲んでいれば、誰でもなる可能性がある病気です」と理解を求める。 調査結果について中山医師は「アルコール乱用や依存症が、飲酒運転のリスク要因になっている可能性が推測できる」と指摘。その上で「警察の摘発を待つのではなく、周囲が飲酒運転に気づいた時点で適切な介入や治療をすれば、予防に役立てることができる」と強調した。 意見や感想をお寄せください。 ■ファクス 0952(29)5760 ■メール houdou@saga-s.co.jp |
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2012年08月20日更新 |