魔法少女リリカルなのは ~一般人な転生者~ (奇跡的な人間)
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幽霊少女ゴーストアリサ 後編

ローウェルさんと会った翌日、やはり俺は例の廃ビルに来ていた。アスナを再び誘ったのだが、実際に幽霊が出たと言ったら不貞寝の狸寝入りをした。どんだけ怖いのさ?

再び持参した懐中電灯の電源をいれ、あたりを照らす。そして素早く階段を駆け上り、最上階たる四階に行き着く。

「おーいローウェルさーん、いるぅー?」

「……アンタ、また来たの?」

「おっ、こんばんはローウェルさん。まあ未練について心当たりでもあったかなー、って思って。」

「さあ、自分で考えて見たけど分からなかったわ」

やっぱりか。まあ、予想通りと言えば予想通りだ。長い間復讐のことしか考えていなかったんだ。いきなり別のことを真剣に考えろというほうが無理な話だ。

「どっか行けば思い出せる?」

「さあ、分からないわ……一つ聞いていい?」

「ん?」

「なんでそんなにわたしに構うの?」

「うーん、幽霊が珍しいから、って言われたら元も子もないけど…。やっぱりさ、復讐を果たしてやっと自由になれるのにこんなところにいなきゃいけないのが可哀想、…だからかな?安っぽい同情だってのは分かってる。けどやっぱり……知り合ったのに放っておけないんだよ」

「………何ソレ?」

………まあ、別に彼女になら言ってもいいかな?

「この際だし言っておこうと思うけど、俺一回死んでるんだよ」

「はぁ!?」

「いやさ。神の手違いで死んじゃって、この世界に転生したんだよ。全く巫山戯ているとしか言いようが無いよな。まあ、この世界に転生できて良かったとは思うけどな。毎日が楽しいし。勿論、信じてもらいたいだなんて思ってない。……だけどさ、ローウェルさんも転生したらきっと楽しいハズだよ。そうすればこんな辛い目にあわなくていいから。」

「………そっ、か。じゃあ、ちょっとついてきてくれる?」

「わかった」

「それと!」

「ん?」

「…普通にアリサでいいわ。ローウェルさんって、無理矢理呼んでいる気がするし」

「えっ、あー、じゃあ分かった。アリサ…で、いい?」

「……まあいいわ。行くわよ」

名前で呼んでいいということは、ある程度信用されたのだろうか。俺はそう納得し、ローウェ…アリサのあとをついていくことにした。



海鳴の夜はよく冷える。
しかも俺は今海辺の近くに来ているのだ。俺はアリサについていき、たどり着いた場所は………アリサの墓だった。
孤児ということもあってか、はたまた疎まれていたが故にか、彼女の墓は一度も掃除された気配がなかった。コケは墓中にこびりつき、名前も部分的にしか読み取れない。見晴らしのいい場所に建てられたのが唯一の救いだろうか。

「なあ、どうしてこんな場所に………?」

俺は直ぐに湧いた疑問をアリサにぶつける。

「ねぇカズヤ……貴方はこれを見てどう思う?」

『これ』…つまりは墓。さっきも述べた様に一度も掃除された気配がないそれは、もはや汚れたい放題だ。

「まあ、酷い汚れだと思うけど…?」

俺は余所余所しく正直な感想を述べる。

「そうよね。昨日言った塾の先生達も、所詮こんなモノだったのよね。始めて自分の墓をみたけど、まさか一度も掃除された気配もなく、誰もお墓参りにこなったんだもの。」

自らの墓を見ながら渋々と語るアリサ。

「結局、みんな上辺での優しさだったってことね。……誰もわたしを見てくれる人が居なかったわ。ただ一人を覗いてね」

そう言ってアリサは振り返り、俺を真っ直ぐに見据える。……って俺?

「カズヤが始めてだわ。あんなにもわたしのためを思ってくれたりしたのは。………多分わたし……友達が欲しかったんだと思う。それが、わたしの本当の未練。…ねぇカズヤ」

「……なんだ?」

「わたしと友達になってくれる?」

「……何言ってるの?」

「へっ?」

「俺たち、もう友達だろ?」

その言葉に、アリサはよくわからないといった顔になる。だが、俺は止まらない。

「ある人が言っていたよ。(今はまだいってないと思うけどね…)『名前で呼んで』、ってさ。名前で呼び合えば、友達なんだと。」

Call my name、と俺は付け足す。

「……カズヤ」

「なんだい?」

「……自分で呼べって言ったくせに」

「主語だけ言っても思いは伝わらないって。ちゃんと述語もつけないと」

「………だちになってくれて…りがとう」

「ん?」

「友達になってくれてありがとう!!」

「………どういたしまして!!」

その言葉と共に、アリサが徐々に透明になっていく。

「アリサ……」

「お別れみたいね。………ねぇカズヤ、最後にお願い聞いてくれる?」

「……最後なんて言うな」

「へっ?」

「最後なんかじゃない。俺が死ねば、また会えるだろ?」

「………死ぬこと前提がまずおかしいわ」

「いや俺もう死んでるし」

「それもそうね」

やれやれ、という風にアリサが笑う。それにつられ、俺も笑う。笑うとこんなに可愛いんだなぁ…、と不埒なことを考えながらだが。

「それで、お願いとはなんでしょうかお嬢様?」

「そうね……あのね、実はわたしのお墓参り、してくれないかなって」

「そんなことか。それくらい、言われなくても行くさ。その時はお前の墓、新品同様にピカピカにしてやるからな」

「ふふっ、まあ雲の上から見物させて貰うわ。」

そして更にアリサは透明になってしまう。

「……いっちまうのか?」

「えぇ。それよりカズヤ……泣いてる?」

「……………泣いてない……!」

「まあ、そういうことにしてあげるわ。それじゃあ……」

「ああ、『また』な、アリサ。」

「!……えぇ、『また』ね、カズヤ。」

そして。
半透明だった少女の体も、消しゴムを擦り付けるように消えていく。彼女が立っていた場所には現在海鳴市周辺でおきている不可解な現象の元凶たるジュエルシードが落ちていた。そしてそれをゆっくりと拾い上げる。

もう、あの少女はいない。二日の間、真夜中という限られた時間を一緒に過ごした幽霊の少女はもういない。

「(けど、いつか、必ず………)」

もし今度自分が死んだら神に頼み込んでアリサと同じ世界に転生しようと。必ず再会しようと。そう胸の奥で決意し、涙腺から流れる涙を服の袖で拭く。
さて、夜も遅いし帰ろうと思ったそのとき、不意に背後から声が聞こえた。

「動かないでください」

しかし、そんなことは出来ず。振り返るとアリサのブロンドとは質の違う綺麗な長い金色の髪をツインテールにし、黒のスクール水着にマントを羽織っただけという余りにも際どい服……否、バリアジャケットを身に纏った少女が巨大な漆黒の斧・バルディッシュを構えていた。
そして隣には犬耳に犬の尻尾を付け……もといはやしたスタイル抜群な美人がたっていた。

今日は厄日かなぁー…、などと考えつつ両手を上げる。上げた右手にはジュエルシードが光り輝いていた。



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