魔法少女リリカルなのは ~一般人な転生者~ (奇跡的な人間)
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幽霊少女ゴーストアリサ 前編



「ここが噂の廃ビルか…」

呟いてあたりを見渡す。俺が来ているのは二週間ほど前に宏樹と話した例の廃ビルだ。本来の予定ではアスナとくる予定だったが、どうやらオバケが怖いらしく来るのを断られてしまった。別に肝試しみたいなモノなのに…

持参した懐中電灯の電源をいれ、あたりを照らす。数年前にこのビルは廃ビルと化して以来、誰も整備を整えていなかったため、薄く汚れている。俺はあたりを見渡しながら最上階たる四階まで駆け上る。すると、不意に頭上から声が聞こえた。

「アンタ、そこで何してんの!!」

天井を見る。そこには赤いワンピースを身につけたブロンドヘアーに翡翠色の眼を持った文句なしの美少女がいた。…っつかバニングスだろ。何で浮いてんの?

「その質問、そっくりそのまま返させてもらうぜ、ガール?」

おっと、つい尊敬する鳴海荘吉みたいな喋り方しちまった。ん?精神年齢17歳なのに仮面ライダー見るのかって?俺は仮面ライダーが大好きなんだ!!将来の夢は仮面ライダーになることなんだ!!

「アンタねぇ~…はぁ、まあいいわ」

「えっ、いいの?」

「アンタが言ったんでしょ!?」

「まあまあ、落ち着けよバニングス」

「誰がバニングスよ!!」

いやお前だよ。だって見るからにバニングスじゃん。ん、待てよ。確かリリカルなのはには原作があったよな。「とらいあんぐるハート」だっけ?確かWikiで調べたときに登場人物の欄にアリサ・なんちゃらってのがいたな。もしかしてそれがコイツか?リリなのじゃなくてとらハの登場人物ってのは充分あり得る。

「悪い。知り合いに顔がソックリだったからソイツの名前で呼んじまったんだ。他意は無いから許してくれ。それと最初の質問に答えると、最近巷で有名な幽霊に会いにきたんだよ。And you?」

「そう。それならいいわ。それとわたしがここにいる理由は……そうね。わたしがアンタのいう幽霊だからよ。」

「へぇー……」

「何?驚いたりしないの?」

「いや、多少なりとも驚いてるけどさ。俺の中の幽霊像は白い袴姿に白い三角巾みたいのをつけていて、足がなくて若干透けていて「うらめしやー」って言うモンだからさ。なんて言うか、拍子抜けというか。今更そんな非科学今更だしさぁ。」

「何?他にオカルトな体験でもしているの?」

「しているといえばしている。実際俺は非科学の塊だし。」

 「…どういうこと?」

「俺は魔法使いなのさ」

「バカにしているの?」

「滅相もない、っと!」

そういって空を飛ぶ。アスナがいない為、多少は不安定な飛行になってしまったが、それでも充分だろう。俺は空中に浮いた状態で、左手の掌に銀色の魔力弾を形成し、地面に落ちている空き缶に魔力弾を打ち込む。すると空き缶は存在を消した。

「信じてくださる?」

「……俄かに信じ難いわね」

「幽霊だって変わらないさ」

「言い返せないのが悔しいわ」

「結局、世の中は不思議で満ちているということさ。あっ、俺は夢を追う男・鳴海一哉ね。よろしく」

「このタイミングで自己紹介!?」

「因みに俺は通りすがりの魔導師だ!!」

「そんなの知らないわよ!」

「答えは聞いてない!!」

「何!?もう何なの!?」

「俺に質問するな!!」

「横暴にもほどがあるわよ!!」

その後、彼女は落ち着いたのか俺に自分のことを教えてくれた。彼女の名前はアリサ・ローウェル。イギリスからの帰国子女らしく、彼女のIQは小学四年生にして200もあったらしい。…年上だったんだな。

「それでわたしは孤児だったのもあってね、…いろんな人達から疎まれていたわ。唯一わたしに優しくしてくれてたのは通っていた塾の先生とかそこらへんだけよ。そしてある日、わたしは数人の男達にここに連れて来られ……」

「犯されて死んだ、と?」

「そうよ。それからわたしは地縛霊と化して連中への復讐を試みたわ。…けど、所詮は幽霊。結局何も出来なくてね。未練も全う出来なかったわたしはここに残って……。そして最近不思議な石を拾ったの。」

おそらく、その不思議な石とはジュエルシードのことだろう。ジュエルシードは「歪んだ形で使用者の願いを叶える」効果を持つ為、彼女は実体化したのだろう。

「その石を手にしたわたしは実体化することができた。……それからわたしは思える限りの残酷な死を連中にプレゼントしたわ。けど………」

「未練を全うしたにも関わらず、未だに成仏できていない、と……」

「えぇ、そうよ。」

「だとしたらおかしいわな。俺の知る限り、地縛霊は未練を全うしたら消えると思うけど……もしかしたらまた別の未練でもあるんじゃない?」

「『別の未練』?」

「そっ。自分が自覚していない、また別の未練。自覚が無い分、性質(たち)が悪いんだよなぁ。だって自分でも分かんないんだもん。」

「確かにね……ありがとう。話したら幾分か気が楽になったわ。」

「幾分だけ?まあいいや。そんじゃまたね。」

そう告げると俺はまた来るんかい、というローウェル…さんのツッコミを無視して家に帰った。

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