魔法少女リリカルなのは ~一般人な転生者~ (奇跡的な人間)
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買い物とエンカウントと魔法
「ずっと思っていたんだけど、君って本当に男の子?」
「うるさい。こう見えても自分でも気にしているんですよ」
他愛ない会話をしながらアスナ(一応デバイスで、正式名称はエターナル)と共に近場にあるショッピングセンターへと向かう。
アスナは非常に高性能なデバイスらしく、俺たちが住む海鳴市の座標を完璧に熟知しており、現在俺たちが向かっている隣町の遠見市にある遠見ショッピングセンターへ最短距離で向かっている。最初それを聞いた時はカーナビかと突っ込みそうになった。
「でもホントに男の子とは思えないよね~。……もしかして男の娘?」
「俺はれっきとした男の『子』!雄、maleですよ。それに年を重ねるたびに男らしくなっていったぞ?」
「時の流れって残酷だね」
「オーケー、これ以上は他言無用だ。悪りィが、こっから先は一方通行だ!!」
「あっ、ホントだ。」
そういってアスナは目の前の標識を指差す。そこには水色のプレートに白い矢印がかかれていた。標識版・一方通行である。割といろいろ諦めた俺は深い深いため息を吐いてショッピングセンターへと向かった。
★
「大きいな」
「そうだね」
あまりこういう場所に来たことのない俺は独り言のつもりで呟いたが、アスナは聞いていたのか俺の言葉に同意する。事実このショッピングセンターは一般的なショッピングセンターよりは大きい方だろう。
入店して、クーラーの出す涼しい風に浸りながら近くにある遠見ショッピングセンターの見取り図をみる。そこに記されていたのは五階にも及ぶ店舗の数。飲食店や服屋のみならず、雑貨屋や少し小さめのゲームセンターなども完備されている。
まず一階にある◯△銀行で金を十万ほどおろし、ズボンのポケットに適当にねじ込んで俺たちはまず一番近くにある三階の服屋へと向かう。そして服を選ぶ時とき、思わぬ壁とぶつかる。
「服のサイズ分かんねぇ……」
「ふふふっ………」
「アスナさん。いまは笑っている場合ではありませんぞ?」
「でも普通にいま自分が来ている服のサイズをみればいいんじゃない?」
「あ………」
「ふふっ、カズヤ君って何処か抜けているよね」
「黙って服を選びなさいアスナ君。」
それにしても、いまだに慣れないな。異性を名前で呼ぶのは。俺は別に女子と仲が悪かったわけではない。しかし名前で呼び合うほどしたしかったわけでもないのだ。そのため、例えアスナがデバイスであったとしても多少は抵抗があるのだ。言っておくが俺はまだ(精神的には)中一だぞ?思春期だぞ?思ィ春期クンなンだぞォ!?…何言ってんだ俺?
とまあ、二十分程かけて俺たちは服を購入した。因みにアスナが服を買うのに多少時間がかかったと記しておこう。やっぱり女の子だもんな。それと俺たちが周りから温かい目で見られていたということも記しておこう。
★
洋服を何着か買ったのあと、ショッピングセンター内にあったスーパーで夕飯の食材を買い、現在帰宅中。
「そういえば俺って小学校の家庭科でちょっと料理した程度の経験値しかないんだけど。」
「大丈夫だよ、私も手伝うから」
「そっか。ありがとうアスナ。」
そう言ってアスナに向かって笑い、アスナも俺に微笑み返す。初めてだな、こんなにも異性と一緒にいて話したりするのは。まあ、家族は除くけど。
そんなことを考えていると頬が熱くなっていくのが分かる。くそっ、どうしてもう少し子供っぽくなれないんだ!異性に敏感な五歳児って、俺は野原し○のすけか!!嵐を呼ぶのか俺は!!
と考えていると、一つの公園に差し掛かった。何の気なしに公園を見ると、アスナよりも濃い栗毛をした女の子がブランコに乗って泣いていた。顔は見えないがあの髪の色、そしておそらく神が俺を原作主人公達と年齢をあわせているのだとすれば、あれは高町なのはだろう。
「……どうしよっかな~。もう一人よりも先にエンカウントしちゃったよ、俺」
「?カズヤ君どうしたの…ってそういうことか。それで早速介入するの?」
「いや、俺は基本的に介入しない方針でいく。もし闇の書のときにヴォルケンリッターに襲われたとしても極力かかわらないようにすればいいし。」
「そっか………あっ!早速来たよ!!」
アスナの声を聞いてなのは(仮)のほうを見る。するとさっきまでいなかった銀髪の男の子がなのは(仮)に話しかけていた。おそらく転生者だろう。少しばかり遠いせいでよく見えないが、左右の眼の色が異なる。それに顔立ちが五歳児とは思えない程に整っている。あれは小学校高学年…いや下手すると中学生並みに整っているぞ。逆に気持ち悪いっての。アスナもそう思うのか、その端整な顔を歪めている。
「………いこっか。」
「……そうだね。」
俺たちは家へと足を進めた。
★
「それじゃあ早速魔法のほうに取り掛かりたいんですが、」
家に帰り、夕飯を二人で作り仲良く食べたあと、俺はようやく本題に入った。本題とは言わずもがな、『魔法』だ。
「うん、それじゃあ私もこっちに戻るね。」
アスナはそういって、白色のネックレストップの付けられたネックレスへと姿を変えた。
「それじゃあさっそく、」
『うん』
「『セットアップ』」
瞬間、俺の足元に銀色のミッド式の魔方陣が現れる。
『落ち着いてイメージして!マスターの魔法を制御する魔法の杖の姿と、マスターの身を守る強い衣服の姿を!!』
俺の身を守る強い衣服の姿…つまりはバリアジャケット。俺はアスナの元ネタとなったSAOのキリトの服(SAO時)をイメージする。次に魔法の杖なんだが、俺にはレイジングハートみたいな杖は似合わないので同じくSAOのキリトの愛剣・エリュシデータをイメージする。
そしてリリなのでは定番の変身で俺が着ていた服がどういう原理か次々と吹き飛んでいく。そして気がつけば俺は黒の服の上に黒のロングコートを羽織り、黒のズボンに黒のブーツ、黒の剣を黒い鞘におさめた黒の剣士・キリトの姿になった。
背中の鞘から黒の剣・エリュシデータを抜き取る。が………
「重ッ!!」
片手用長剣なので子供でも持てると思っていたが、忘れていた。エリュシデータは片手用長剣とは思えない程の重量とその重量からなる威力をほこる《魔剣》だ。恐る恐るといったように刀身を見ると、ほとんど漆黒に近い色の肉厚の刃がぎらりと光った。素人目でも一目みただけでかなりの業物だと分かるだろう。
「オリジナルそのままになっちまったか。まっ、これぐらいのほうが戦闘では有利になるだろうし、持てない場合は魔法使って身体能力上げりゃあいいか。あっ、そういえば俺の魔力量ってどれくらいなの?」
『うーんと、AAくらいかな。』
「原作組よりちょい低いけど、まあこれでも高いほうか。管理局でもA以上なんて稀だしな。ああ、それと普段はリミッター付けて魔力バレないようにしておいて。」
『うん。』
こうして俺の転生生活初日は無事に終わったのであった。
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