魔法少女リリカルなのは ~一般人な転生者~ (奇跡的な人間)
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現状確認は転生後の鉄則

無事転生したか。
心の中でそっと呟く。あたりを見渡し、その途中で自分がベッドの上で寝ていることに気づく。見たところ俺はアパートの一室に居るようだ。着ていた服のサイズは変わっていないのにもかかわらず、目線がやけに低い。
ぶかぶかの学生服のズホンの裾を捲り上げてから部屋を出て、トイレを探す。部屋を出て数歩左へいくとすぐに見つけた。自分の目線よりやや下に位置するドアノブを掴んでドアを開け、背伸びをして照明のON/OFFボタンを操作し、部屋の中を明るく照らす。
すぐ近くの鏡を見る。そこにいたのは無造作な黒色の短髪に、同色の眼。肌の色はほんの数分前の健康的に焼けていたいろとは違い女性のように白く、頬はほのかに赤みをおびている。男のような体格ではなく、男でも女でもどちらとも言えない筋肉も糞もない体型をしている。そして極めつけはまるで少女のような可愛い(決して自画自賛しているわけではない)顔立ち。
そう、俺である。
おそらくだが五歳の頃の俺だろう。平均よりも高い身長もあってか、小学校一年に間違われそうだが………。いや、事実前世で間違われたな。

ひとまずトイレから離れ、リビングへと向かう。リビングにはテレビやソファー、椅子やテーブルなども既に完備されており、生活するのに申し分ない。部屋の片隅にはエアコンが設置されており、夏の暑さにも冬の寒さにも対応できるようになっている。
部屋を一旦見渡し、そこで木製のテーブルの上に白色のネックレストップがつけられたネックレスが置いてあった。もしかして…、と思った俺は、ネックレスを手に取る。

「んと、もしかして君が俺はのデバイス?」

ネックレスに話しかける五歳児。うむ、我ながらシュールな光景だ。

『はい。私が貴方のデバイスで、名前は《エターナル》と申します。』

「《エターナル》……永遠、か。いい名前だね」

『へっ?あっ、ありがとうございます……』

うん、口調が少しかたいけど、神様が他の人に渡したデバイスに比べたらずっと感情表現が豊かだ。だって他はバルティッシュみたいな感じだもんな~。

『……急に黙り込んでどうかしましたか?』

「ん?ああ、ちょっと考え事をね。そういえばエターナルってアウトフレームできたよね?」

『ええ。一応そのような機能は備わってますが』

「じゃあさ、やってみてくれない?」

『はい、分かりました。』

エターナルはそう告げると、白いネックレストップの部分が光りだす。その光の眩しさに俺は目を閉じると同時に、手の中にあったエターナルの感覚が無くなる。
光が収まったと思った俺はゆっくりと目を開ける。俺の目線より少しばかり低いところを見る。まず目に入ったのは栗色の綺麗なストレートヘアだ。次にその上質な髪を両側に垂らした顔は小さな卵型。小ぶりだがスッと通った鼻筋の下で、桜色の唇が華やかな彩りを添える。瞳は閉じていて見えないが、きっと綺麗であることに違いはない。そしてその華奢な身体を簡素な白い短衣(チュニック)と膝丈上のスカートが包み込む。
やがて、少女はゆっくりと閉じていた瞳を開ける。その仕草があまりにも可愛らしく、俺は思わず唾液をのむ。開かれた瞳は綺麗なはしばみ色だった。俺はしばらくの間彼女の端麗な容姿に見とれていたが、満を時して閉じていた口を動かす。

「えっと、エターナル、だよね?」

「うん………」

一言告げ、少し頷く彼女…エターナル。俺よりも背が低い為、必然的に彼女は俺に上目遣いする形となる。と、そこで今まで忘れていたことを思い出す。

「そういえばお金とかってどうなるの?」

「えっと、神様が毎月この口座に一定量を振り込んでくれるらしいよ。」

そういってエターナルは懐から銀行手帳を取り出す。俺はそれを受け取り中身をめくる。そこには『10,000,000』の数字が書かれていた。『10,000,000』………つまり一千万円だ。とても(見た目は)幼稚園児が持っているような金額ではない。

「これを毎月?」

「神様が、『最初の月は必要な生活用品を買う為に多めにした』って言っていたけど」

「成る程ね、」

足りないもの、と言われてもほとんどの生活用品は既に揃っている気がする。…いやもしかしたら、と思い今の自分の格好を思い出す。ぶかぶかの学生服。下着だってそうだ。もしかしたら神様のいう足りないものは服とかのことだろう。
そう思った俺は俺が目覚めた場所……俺の部屋に向かう。部屋の入り口でぐるりと部屋の中を見渡す。六畳ほどあるであろう部屋は、天然木のフローリングに細い板材を貼り合わせた壁。家具はシンプルなパソコンデスクにウォールラック、さきほどまで俺が寝ていたパイプベッドとタンスの四つのみだ。俺は服が入っているであろうタンスをあける。しかし無情にも入っているのは黒系の無地の服にベージュのスタイルアップカーゴ(子供用のってあるのか?)、そして黒色のトランクスに同色の靴下が二足のみだ。
これだけで生活できるか、と心の中で突っ込んだあと、俺のあとをついてきたエターナルを部屋の外で待っているようにいい、服を着替える。そしてパソコンデスクに置いてあったこの家のものと思わしき鍵を手に取り部屋を出る。リビングに向かうとエターナルがソファーに座っていた。

何処かに行くの?、と首を傾げながら聞いてくるエターナルを可愛いと思いながら答える。

「んー、いや日用品とかは殆ど揃っているんだけど洋服とかが揃っていなくてさ。それで買いに行こうと思うんだ。」

「そうなんだ。それじゃあいこうか、マスター。」

「あっ、ちょっと待って。」

ソファーから立ち上がり玄関に向かおうとするエターナルを俺は止める。

「どうしたの?」

「いやさ、外で俺のことマスターって呼ぶのやめてくれない?絶対変な目で見られるからさ。それで出来れば名前で呼んでほしいな~って思ったんだけど」

「そっか、それもそうだねマス………カズヤ、くん。」

エターナルは恥ずかしいのか、頬を僅かに紅潮させる。ホンットに可愛いよな。デバイスだよね?

「けどそれだと私の名前もおかしくないかな?エターナルなんて人名ないだろうし」

「それもそうか」

「だから、その…カズヤ君が私にアウトフレーム状態の名前つけてくれないかな?」

エターナル の なみだめこうげき!!
かずや は せいしんに 9999の ダメージを おった!!

「えっと、じゃあアスナなんてどうかな?」

アスナ。エターナルの生活とアウトフレーム時の姿の元となった人物。これ以外思いつけない俺は悪くない。

「アスナ、か。……アスナ、うん!!いい!!凄くいいよ!!」

「そっ、そっか。それは何よりだ。(相当気に入ったんだな~)」

「(アスナ、か~。ふふっ♪)」

俺はエターナル改めアスナを連れて俺たちはこの世界に来て始めての買い物へと向かった。

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