ロンドン五輪ボクシング男子ミドル級金メダリストの村田諒太(26=東洋大職)の“プロ転向”に恩師が大困惑している。本人は「話を聞いてみたい」と獲得に興味を示すプロ側に門戸を開いているが、大学側はNO。すでに監督のポストも用意されており、冷静な判断が求められている。
48年ぶりの金メダル獲得で沸きたつ“村田バブル”。大学広報には取材やテレビ番組への出演の依頼が殺到し、五輪チャンプはうれしい悲鳴を上げている。15日、東京都内で行われた会見でも、「これでマイナー競技に光が当たってほしい」と終始笑顔だった。
そのバブルの中でも気になるのは、村田がプロへ転向するか否かだ。現時点で正式なオファーは届いていないものの、複数のボクシングジム関係者が獲得に興味を示している。一部報道では「1億円用意してもいい」とおよそ実現されそうにない額をぶちあげる会長までいるほどだ。
当の村田は「破格の値段を提示してくれて光栄に思っている。五輪が終わって見えてくるものもあるので話を聞いてみたい」とまんざらでもないようだが、これに大学側は難色を示している。
「舞い上がり過ぎだろ。もともと村田は指導者になりたいという信念があったはず。こちらとしては3年以内に監督を任せようと思っているのに」(東洋大学の東郷武総監督)
確かに、いくら金メダリストとはいえ同階級は世界中で強豪がひしめく。安易に転向し、万一敗北すれば金メダルの価値が下がりかねない。そうなれば、プロとアマの関係も再びギクシャクするだろう。しかもプロの世界はマッチメークに翻弄され、ファイトマネーは不安定だ。「額は言えないけど、東洋大は待遇がいい」という同総監督の証言に従えば、大学の監督としてアマチュアの世界にとどまった方が賢明といえる。
金メダル獲得後の村田は「これがゴールではない。それがアマなのか、プロなのか、もう一回五輪を目指すのか」とプロ転向をほのめかしたかと思えば、翌日の記者会見で「僕が憧れるものはそこ(プロ)にはない」と話すなど、発言内容が二転三転している。予想を超えるフィーバーぶりへの戸惑いもあるのだろうが、あまり浮足立つと足元をすくわれそうだ。