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20 Aug 2012 02:21:07

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 「国籍取得特例法」の早期制定を求める声明



 自民党が「特別永住者等の国籍取得特例法案」を今国会提出する方針を決めたということです。2001年に当時の与党案として成案を得ながら、店(たな)ざらしにされてきた法案です。私たちはこの動きを歓迎し、支持し、一日も早い成立を求めるものです。
 
 今年は朝鮮半島のひとびとが日本の植民地支配から解放されて63年になります。特別永住資格を認められた在日コリアン(40余万人)への理解もすこしずつ深まり、日本社会のあちこちで民族名で活躍するコリア系のひとびとの姿が見られます。しかし今日なお、在日コリアンに参政権(選挙権・被選挙権など)を中核とする公民権が保障されていない事実に、どれだけのひとびとが気づいているのでしょうか。 

 この60余年の間に在日コリアンは世代を重ね、今は三世、四世が主流となっています。 これらのひとびとは生涯を通じて参政権を行使できず、国家公務員、裁判官をはじめ各種公務員になる道も一部をのぞいて閉ざされたままなのです。旧植民地出身者とその子孫が何代にもわたって参政権がないなどという例は世界のどこを見渡してもありません。日本の民主主義は重大な欠陥をかかえているのです。 2001年に自民党・公明党など与党3党が作成した「特別永住者等の国籍取得の特例に関する法律(案)」は、こうした異常な事態を打開する画期的な意義をもっていると考えられます。
 
  第一番目は在日コリアンに「届け出」による国籍取得権を認めていることです。1952年4月28日、サンフランシスコ平和条約の発効にともない日本政府は在日朝鮮人から一斉に日本国籍を剥奪してしまいました。しかもそれは一人ひとりの国籍選択権を認めず一片の政府通達で実施するという法治主義にももとるやり方でした。このため在日朝鮮人は参政権を失い、主権者としての地位を奪われたのをはじめ、社会保障をうける権利さえ保障されず社会的差別のただ中に放置されたのです。本特例法案が法務大臣の「許可」ではなく「届け出」による国籍取得を認めていることは、この歴史的過誤の反省の上に立つものと考えられ、実質的に在日コリアン一人ひとりの国籍取得(選択)権を認めたことになります。従来の煩雑で人間としての尊厳を傷つけられかねない「帰化」制度によることなく、在日コリアンは、望めばいつでも日本国籍を取得できる権利をもつことになるのです。 
 
 第 二番目は「従前の氏または名を称する場合にはその漢字を用いることができる」とし、民族名を名のることを保障していることです。従来の帰化手続きでは、ややもすれば朝鮮人のルーツを消し去って民族的にも日本人になることを求めてきました。また尹、姜、趙、崔など、日本の人名漢字に含まれていない姓や名をもつ人は新たに氏をつくったり名を改めたりしなくてはなりません。これは民族的尊厳を傷つけ、同化を強いるものといわざるをえません。この法案はこうした流れとは明らかに違い、少なくとも戸籍上は、民族名をなのり、コリア系日本人(国民)になることを保障しています。これだけでだれもが民族名を名のって生きられるようになるほど現実は甘くはありませんが、差別を許さないとする市民の運動とあいまって、在日コリアン自身の自覚が高まっていけば、朴さん、李さん、金さん、とルーツを明らかにしてコリア系の日本人として活躍する人が、国会や地方議会をはじめとして社会のあちこちで増えていくことが期待されます。 
  
  私たちは、このような画期的な法律案が作成されたにもかかわらず、この数年間、一度も国会に提出されなかったことを残念に思い、ねばり強く法制定運動を続けてきました。    今回、自民党法務部会の「国籍問題に関するプロジェクトチーム」(河野太郎座長)が国会提出の方針を決めたとの報道は遅きに失した感はありますが力強い限りです。 報道によれば太田誠一議員が「前回も地方参政権との関連で取り上げられたが、心外だ。戦後、本人の意思を聞かれずに韓国朝鮮籍になった特別永住者に『申し訳ない』ということで、簡単に国籍を取得できるようにするもので、地方参政権のことは視野に入っていない」(「朝日新聞」1・25)と述べたそうです。 
 
   私たちは太田議員の言われるようにこの法案が政治的取引や党利党略に利用されることなく、国会において十分審議されるなら、必ず全議員の賛成を得られるものと確信しています。 日本の民主主義の基礎をより強固にするためにも本法案が一日も早く国会に上程され、可決成立することを強く求めます。                                                                                 

 2008年2月8日  在日コリアンの日本国籍取得権確立協議会