ICT(情報通信ネットワーク)分野の標準化やその普及・促進を目的に、25年以上も活動してきたTTC(情報通信技術委員会、1985年設立)は、2010年10月に新しい専務理事「前田洋一氏」を迎え、意欲的な改革に取り組んでいる。また、2011年4月からは「社団法人」から「一般社団法人」への脱皮を契機に、これまで総務省の各委員会が取組んでいたITU-Tへの準備作業も、TTCが一手に引き受けるなど、組織としてのステータスも一段と向上させた。さらに前田専務理事自身は、国際的にも人望が厚く、現在もITU-T SG15(第15研究委員会)議長として活躍されるなど、日本のエース的存在でもある。
この新生「TTC」の前田専務理事に、新しいTTCの活動をはじめ、国際標準化活動の体験談や、ITUとアジア(CJK)の注目すべき新しい展開(MoUの締結)、さらに現在最もホットになっている、スマートグリッド戦略からクラウド戦略をはじめスマートカー戦略、フューチャーネットワーク(FN)戦略、G.hnを含むホームネットワーク(HN)戦略に至るまでを、幅広くお聞きした。
(聞き手:WBB Forum 編集部)
第4回(最終回):「スマートカーAG(SmartCar-AG)」と「業際イノベーション本部(I3C)」が発足
≪1≫TTCでスマートカーAG(SmartCar-AG)がスタート!
■ これまで、TTCのスマートグリッド戦略からクラウド戦略、スマートカー戦略、フューチャーネットワーク(FN)戦略、G.hnを含むホームネットワーク(HN)戦略に至るまでを、幅広くお聞きしましたが、最近の電気自動車(EV)の登場も含めて交通機関のICT化(テレマティクス)への関心が高まっていますが、TTCの取り組みはいかがでしょうか。
前田 TTCでは、これまでは「ネットワークド・カー」、すなわちネットワークにつないだ自動車ということで、TTCのスマートグリッドAG(アドバイザリーグループ)配下のネットワークド・カーWGが検討してきましたが、2011年6月から、スマートカーAGとして独立させ、新しい体制で検討を加速しようとしています。なお、AG(アドバイザリーグループ)はTTC会員ではなくても、どなたでも参加いただけます。
■ なるほど。
前田 洋一氏
(TTC 専務理事)
前田 考えるべき中身としては、従来、レジャーやビジネスの交通手段としてのシンプルな用途であった自動車が、最近は、エネルギーを大量に貯められる蓄電池を装備として、いざという時(停電時等)の電源設備としても注目されるようになり、スマートグリッドのかぎになるという期待が高まってきています。
また、通信の面から見ると、自動車は、動く基地局になる可能性も出てきましたし、さらには動くモニタのアンテナという可能性が認識されつつあります。このため、自動車が24時間ネットワークにつながることによって、新規にどのようなビジネスが可能となるか、すなわち新しいビジネスチャンスへの期待がまず1点目です。
ところが、現在の自動車関係の製品は、カーナビも含めて、みんな自動車会社ごとに専用となっており、特定ベンダごとに閉じているのです。そこで、カーナビ的な情報や、安全・災害に関する情報、さらに走行中に自動的に集められてくる環境情報といったデータなどをどう統一するか。これらの標準化は、自動車がネットワークに繋がることにより社会インフラの一部として貢献するうえで必要なことではないかと思っています。
これを実現するには、TTCとしては、国際的な仕掛けとして標準化を進める必要があると思っています。例えば、現在、自動車関係全般については、IEC/ISO関係の標準を担当する経産省をはじめ、安全性に関しては国土交通省だけでなくて警察庁も関連し、これにICT関連の標準化の担当として総務省を含めて、関係省庁だけでも4つがかかわってきています。さらに、CO2削減や環境モニタなどでは環境省も関連しますから、いかに複雑な関係あるかが想像できるのではないかと思います。ですから、縦割り組織でいくらボトムアップの議論を重ねても共通の議論は難しい環境なのです。したがって第2回でもお話ししたように、例えば、ITUとISOを連合させ国際的に大きな方向性をもたせて、通信であるICTを横串として連携することで議論を深めていきたいと思っています。
その具体的アクションとして、ITUとISOは2011年4月に、ITS分野において両者が連携して標準化課題を調査、検討するため、共同作業部会(Joint Task Force)を設置することを発表しています。(http://www.itu.int/net/pressoffice/press_releases/2011/10.aspx)。
このタスクフォース(Task Force)設立のための特別会議(Ad-hoc会議)を2011年8月24日に、TTCがホストとなり、NICTにスポンサー支援をいただき、京都で開催することができました。
≪2≫スマートカーAG(SmartCar-AG)の設立と国際的な背景
■ それは大きな前進ですね。ところで、先ほどお話のあったTTCのスマートカーAG(SmartCar-AG)の設立に関して、国際的な動きやその背景についてもう少し詳しくお話いただけますか。
(http://www.ttc.or.jp/j/info/topics/20110607-1/)
前田 それでは、図1を見ながら説明しましょう。まず、図1に示すように、自動車メーカーとして有名なメルセデス・ベンツやBMW、フォルクスワーゲンなど国際的にも大きなシェアをもつ自動車メーカーを擁する欧州では、ETSI(欧州電気通信標準化機構)という標準化組織において、個人的に利用する携帯型端末までを含む広義なITS(高度道路交通システム)の標準化が進展しています。
また、EC(欧州委員会)では、2012年度の第1四半期までにITS仕様の枠組みを決定し、2020年までのITSに関するロードマップを策定する予定となっています。そのために、EUは米国、日本にも連携を呼びかる一方、欧州各国では、これに合わせて各種の実証実験が開始されています。
FG-CarCom:Focus Group on Car Communication
FG Distraction :Focus Group on Driver Distraction
■ 欧州勢の動きはかなり活発ですね。
前田 はい。また、国際標準化機関であるISOのTC204専門委員会(Intelligent Transport Systems)では、ITSの国際標準化を扱っており、具体的な標準案の作成は、10以上の作業部会(Working Group)で実施されており、作業部会のうちの1つであるISO/TC204/WG16において、CALM(Communication Air interface for Long and Medium range)が検討されており、ITSに用いられる次世代の路車間・車車間通信技術の標準化を進めています。
前田 洋一氏
(TTC 専務理事)
このCALMとは、ITS分野の移動体無線通信における中域的・広域的な範囲の無線通信インタフェースに関する標準のことです。これまでに実現されている、
(1)ETC(Electronic Toll Collection、電子料金収受システム)
(2)VICS(Vehicle Information and Communication System、道路交通情報通信システム)
(3)通信ナビゲーション
などのITSアプリケーションでは、道路もしくはセンタと車両を接続する無線通信手段として、DSRC(注1)と呼ばれるごく狭い範囲内(20m程度)でのスポット通信技術や携帯電話を利用したものがほとんどでした。
CALMは、これまでの無線通信技術と異なり、中広域の通信(数m~数100m)、大容量の通信(数Mbps程度)、インターネットプロトコル(IP)への対応、複数の通信手段の切り替え、を可能とする特徴をもっており、このような通信技術が実用化されれば、さらに利便性の高いITSのサービスが提供可能となるでしょう。
すでに、通信機器ベンダや自動車ベンダの間では、広域的な無線ブロードバンドサービスであるLTE(Long Term Evolution)と専用狭域通DSRCの連携によるITSサービスや、EV(電気自動車)の充電状態を管理し、適切な充電ステーションへ誘導するサービスなどの開発や、その実証実験も始まっています。
DSRC:Dedicated Short Range Communication、専用狭域通。道路の路側に設置される無線基地局と、自動車内の車載機の通信のために設けられた無線通信規格
■ ITUなどの標準化の動きはいかがですか。
前田 ITUでは、207年11月からFIT(From/In/To)カーコミュニケーション・フォーカスグループ(FG-FitCarⅠ:主なテーマは、自動車内外における広帯域音声での通信の検討)を立ち上げ、その後2009年に、FG-CarCom(Focus Group on Car Communication:主なテーマは、自動車内のコミュニケーションにおける要求条件および音声認識のためのシステムの検討)を設置し、自動車内外でのコミュニケーションに関する標準化の課題について検討を開始しています。
また、2011年2月にはFG Distraction(Focus Group on Driver Distraction)というFG(フォーカスグループ)を設置し、運転者の不注意による事故防止のための要求条件の検討を始めています。その背景としては、自動車にICTが導入されることによって、ナビゲーションや衝突防止機能、運転中の電話機での通話や配信情報の確認等が原因で、運転者の注意散漫による交通事故の増加が心配されており、事故防止などのための情報提供の方法やサービス要求条件の検討を行っています。
また、すでに2005年から5回にわたって、ジュネーブでのモーターショーと併せて、Fully Networked Car Workshop(ネットワークドカー・ワークショップ)を開催し、ITS周辺での標準化課題の情報共有を行ってきています。
前田 洋一氏
(TTC 専務理事)
さらに、今回(第4回)のお話のはじめで、スマートカーAGに関連した活動として、ITUとISOが共同でITS通信(ITS Communications)の標準化を推進するためのタスクフォースを設立することを述べましたが、2011年8月24日に京都で、ITS通信の標準化のためのISO/ITU合同ワークショップとタスクフォースを確立するための合同アドホック会合を開催しました。参加者としては、国際標準機関としてISO TC204 WG16とITU-Tが、地域標準化組織として、米国からTIA、中国からCCSA、欧州からETSI、そして日本からはARIBとTTCが参加しました。また、ITS関連標準化組織として米国からSAE(Society of Automotive Engineers、米国自動車技術者協会)が参加しました。
会合情報は、ITU-Tのウェブサイト:http://www.itu.int/ITU-T/worksem/its/index.htmlから得られますが、合同ワークショップでは、これらの標準化機関での活動状況に関する情報交換を行い、合同アドホック会合では、ITS通信に関するISO/ITU合同タスクフォースの坦務課題や検討体制などの組織活動規定案を議論しました。今後のタスクフォースの検討では、ITUとしては、ITU-TとITU-Rが協力し、ISOとの連携を進めますが、そのリード役は、ITU側はITU-TのSG16、ISO側はTC204のWG16が担当する見込みです。
≪3≫日本政府は、「ITSに関するタスクフォース報告書」を発表
■ 日本ではどのような取り組みがされているのでしょうか。
前田 2011年3月に内閣の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)は、「ITSに関するタスクフォース報告書」を発表しました。
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai55/sankou1_6.pdf)
この報告書において、ITSを安全運転支援だけでなく、環境問題解決のための渋滞防止なども踏まえたグランドデザイン(長期構想)を検討し、実現のためのロードマップを策定することを提唱しています。
■ なるほど
前田 以上のような国内外の状況を踏まえ、日本でも、自動車ベンダ、通信事業者、情報通信機器ベンダ、学識経験者他による業際的な検討の場が必要になってきました。そのため、TTCでは、スマートグリッドアドバイザリーグループ(スマートグリッドAG)の下でネットワークド・カーワーキンググループ(ネットワークド・カーWG)を設置し、ITSに関する情報収集を行ってきました。しかし、スマートグリッドのみでなく、広義な高度な自動車交通関連通信の標準化課題を検討する場が必要であるため、前述したように、スマートカーAGを設立したのです。
≪4≫中国は13.5億人、インドは12.1億人の巨大市場
■ これまで、スマートグリッドやフューチャーネットワーク(FN)、クラウドコンピューティング、ホームネットワーク、スマートカーなどの標準化のお話しいただきましたが、第1回のITUのアジアを重視した戦略のお話も含めて、急速に市場が大きくなってきている中国やインド、韓国との関係をどう見ておられるか、もう一度お聞きしたいのですが。
前田 洋一氏
(TTC 専務理事)
前田 まず中国やインド、韓国の市場という前に、一番気になっているのは、日本の企業がいわゆる国際ビジネスをどうとらえ、本当にどこまでグローバル市場に出て行きたいのか、という点なのです。例えば、大手の通信関係の企業の国際市場における収入は、全収入の30%程度しかないのです。(国際競争力データの補足情報として:http://www.soumu.go.jp/main_content/000027029.pdf)
■ ちょっと少ないですね。
前田 収入のほとんど(70%)がドメスティック(国内市場)に依存しているのです。そういう体質でよいのかどうか。将来も引き続きそのような低いグローバル市場依存の状態でよいのか、という懸念があります。それで、日本企業は生き残っていけるのでしょうか。日本の半分以下の人口しかない韓国が、サムスンやLGをはじめとして、本気でグローバル市場でもうけないと国として成り立たないと考え必死に海外市場でのビジネスを展開しています。
一方、今の日本は非常にまだ国内ビジネス指向が強く、そのためマインドの面からも危機感が少なく危ない状況となっています。国際的に見て、国内指向の強いビジネスだけで、これからも国民が安心して暮らせるほど簡単な時代でもないので、日本の経営層を含めて今後どう考えるかということが重要な1つとなっています。ご存じのとおり中国(人口:13.5億人)やインド(人口12.1億人)の市場については、人口だけを見ても、明らかに日本の10倍以上の規模なのです。(URL:http://www.un.org/esa/population/unpop.htm)
■ おっしゃる通りです。
前田 ですから、例えば、中国が中華思想ではないですが自己中心的な態度で、中国が決めた独自規格(国内標準)を国際仕様として押し付けてきたら、もう市場規模的には、中国市場だけで世界市場の規模を意味していますから、中国の言いなりにならなければいけなくなるかもしれません。それでも日本や米国、欧州もハッピーということであればいいのですが、そうではないです。
ですから重要なことは、日本が標準化技術の実現にあたって、キーとなる要素技術を確保し、標準化仕様に対しての発言権を維持するだけの研究開発をすることと、中国が国際社会の重要な一員として、国際社会の秩序を守り、市場の安定化を図るうえで寄与できるリーダーの一員であるように、日本と中国でコミュニケーションを図っていくことが重要です。こうすることによって、国際標準の議論の場に積極的に参加してもらい、中国の独自方式で好きなようにビジネスをやらないように持っていくこと、すなわち日本が国際的な対等な仲間として認識してもらうことはとても重要なことなのです。
■ 知的財産権(IPR:Intellectual Property Right)の面からも重要と思いますが。
前田 おっしゃる通りです。IPRも含めていろいろと国際的な課題はあるのは事実です。中国の場合、このまま放ってきますと、彼らは一国だけで何でもできてしまうほど、それだけの大きな市場的な魅力も、ポテンシャルも持っているのです。
これに対して、輸出が重要な日本は、どのような方法で国際ビジネスを展開していくかという戦略をもたないと戦えないと思います。IPRは、未だに商習慣の異なる中国での考え方では難しい問題を抱えていると思いますが。国際的なIPRの原則としては、ITUとISO、IECが共同で合意した共通IPRポリシー(http://www.itu.int/en/ITU-T/ipr/Pages/policy.aspx)を基本として、国際展開を図っていくべきであると考えています。
中国に続いてインドも確かに人口が多い国ですから、インド市場を日本がどうとらえ、考えるか重要な時期となっています。ですから、TTCとしては、なるべく早い段階でインドの標準化機関と連携して、標準をつくろうとしている段階から協力できる関係をつくって、将来日本の企業にとってのパートナーなり、市場としてつき合えるような環境を早目につくっていきたいと思っています。
TTCとインドの情報通信に関する標準化組織であるGISFI(The Global ICT Standardization Forum for India)は、2011年8月22日に、情報通信の標準化活動の連携に関する基本合意書(LoI:Letter of Intent)を締結しました(http://www.ttc.or.jp/j/info/topics/20110826/)。この新しい関係を通じて、TTC会員がインドの実態を把握し、インドのキーとなるメンバーとのコミュニケーションチャネルを構築する一助となれば幸いと考えております。
■ 今のお話の関連ですが、中国や韓国からITUの標準化の会合に参加する人数が多くなっていることはよく聞くのですが、インドから多くの人たちがITUの標準化会合に、たくさん来たっていう話はあまり聞かないのですが。
前田 洋一氏
(TTC 専務理事)
前田 それは時間の問題だと思います。また、現在インドにおける関心事が、どのレイヤーの課題かということも重要です。現在インドの場合、ソフトウェアをインプリメント(実装)する、あるいはプログラミングするビジネスが多いこともあり、本格的に標準や規格を決めることへの関心はこれからの段階なのです。
しかし、だんだんとインドにおける大手の企業の幹部が、欧米などの外国人からインド系の人たちにどんどん替わりつつあります。多分、中国と同じように、現在、北米を含めて海外で活躍しているインド系の人たちが、本国に戻ってきており、欧米でのビジネスノウハウを持ったインド人経営者がこれからのインドを牽引し、ますます活躍すると思っています。そこで、TTCとしては、第1回でお話ししたCJK(中国・日本・韓国連合)としての枠組みは政府レベルでありますので、それは維持して、それに何とかインドがCJKと同じようなレベルで加わるようなそういう連携環境をつくっていくようにしたいと思っています。
そのため、第1回に述べたCJKに関する共同の覚書(MoU:Memorandum of Understanding)の次のステップとして、インドを対象に考える検討も始めています。
≪5≫企業にとって標準化活動と知的財産権の関係
■ ありがとうございました。日本の今後の課題についてお聞きしたいのですが。今お話しのあった中国の企業は民間ですが、何となく国営企業的な感じがします。また、韓国のサムスンやLGも、国営的じゃないですか。インドも同じように見えます。そのような中で日本は、どっちかというと民間企業的になっていて、社長が比較的よく交代します。そうすると当然のことですが、自分の在任期間だけビジネス上の利益を上げていくことに重点が置かれてしまいがちです。ここが、ちょっと国家的にやっているところと違うところがあるように思えます。
そうすると、日本の企業にとって、標準化活動にはお金がかかるから「標準」を買ってくればいいじゃないかということになりやすい。この結果、ますます標準化の活動が軽視されるようになってくる。そうすると、標準化の担当者は、会社から「標準化の活動をやったらすぐビジネスになるのか」ということが問われ、肩身が狭くなりかねない。ところが中国とか韓国とかは国家体制で支援しているため、非常にみんな意欲的に標準に取り組んでいる。そしてどんどん知的財産権を蓄積し始めている。この辺のところは、日本が今後、標準化の取り組むうえでの課題として、どうとらえておいたらよいのでしょうか。
前田 これはまさに、その国や企業がどこまで危機感を持っているか、ということです。ですから、これからの標準化への取り組み方が今までの延長のようなことでしたらだめだと思います。例えば、標準化に関して、最近のスマートグリッドやスマートカーなど、いくつかのテーマもそうですが、実際には、今後の研究を含めた新規の課題が、「標準化活動から見つかる、あるいは見えてくる」という時代に実際になってきています。
これは、みんなが使い出した技術やルールを後づけのようにして、共通性を見い出して標準を決めるというような時代とは明らかに異なっています。すなわち現在は、いかに研究レベルからいかに早く同じ方向性を明確にして、仕様をつくり、研究開発と標準化がほぼ同時に進められていくというのが、標準化活動の位置づけになってきています。
ですから、新規に世の中を誘導し、新しいビジネスに参入したいというテーマを持っている会社の場合は、標準化の場を活用して、仲間を集め、ビジネス展開に関する戦略を練って、国際的にみんなで検討する環境をつくっていけば、開発や研究開発のリスクも減るわけです。すなわち、標準化の場は、そういう新規の国際的なビジネスを行ううえで、積極的に活用する時代になってきていると思います。
≪6≫「強者の論理:デファクト標準」と「弱者の論理:デジュール標準」
■ 企業にとって、新規にビジネスを展開する場合、人材やコストがかなりかかる標準化活動への参加とは別に、もっと目的が明確で即効的なフォーラムやアライアンス、コンソーシアムなどへの参加もありますね。
前田 その問題は、デファクト標準とデジュール標準とも関係してくる課題です。デファクト標準というのは、オープンかどうかは別にして、マイクロソフトのWindowsやグーグルのAndroidなどのように、開発力や資金力がある「強者の論理」でつくられています(図2)。また、ほんとうに日本の企業が世界でナンバーワンの技術を保有し、ほかに代替ソリューションがない場合は、黙っていてもその技術はデファクト標準になるのです。それでは、現状の日本において、それほど優位に展開できているテーマがいくつあるかということになると、そうは多くありません。
■ たしかに、その通りですね。
前田 一方、デジュール標準(国際標準)は、加盟している世界の多くの国々(例:ITUの場合192カ国)の誰もが、資金や人材(知恵)を出し合って協力し、費用最小限で標準化の恩恵を得ることができる「弱者の論理」としてつくられています。しかし、そこで策定された国際標準は、開発途上国を含めた世界中に適用できる可能性があることから、標準に準拠した製品を使うという受身の立場だけではなく、標準をどうビジネスに活用して、自分たちの国の企業をいかにより強くするかが重要な戦略となります。
また、第1回のお話でも触れましたが、デジュール標準は、途上国を含めた海外ビジネスでの調達において、「国際準拠のガイドラインがあれば、各国はそれに準じた仕様(国際標準)を適用しましょう」というWTO/TBT協定に適合した標準であり、国内で培った通信技術をいかにデジュール標準に反映させたビジネス戦略を構築するかの視点からも今後ますます重要になってくると思います。
また、今までの標準化活動というと、企業を防衛するための動向調査とか、世の中がどうなっているかを知るための情報収集が主になる傾向がありました。あるいは、既に標準(規格)ができているからそれに準拠した製品を製造しその認証をもらって、準拠した製品ということで認証のロゴのスタンプを張るために調査に行くなどという、ある意味では受け身的な活動が、従来の日本の標準化活動の主な流れでした。
そのような状況から脱却しないと、世の中の標準化のペースはずっと早くなっていますし、標準化のテーマも技術をベースにして活発な議論がされていますので、参加者のマインドが変わっていかないとついていけなくなり、世界から取り残されてしまいます。
≪7≫ビジネス領域を拡大するため「業際イノベーション本部(I3C)」が発足
■ そのような中で、今後日本にとっての可能性は?
前田 そうですね。テーマによっては、まだまだ日本がまたリーダーシップをとれる可能性のあるテーマもあると思います。さらに強いリーダーシップをとるには、従来のような固定的な観点ではなくもう1回着眼点を変えないといけないと思います。例えば、ただ先ほどお話しした『スマートカー』なども含めて、そのような標準化の新しいテーマに対して通信事業者(キャリア)やメーカーの経営者層が、「それは私たちにとって真正面から取り組む必要のあるテーマなのですか」ということになってしまうと、さらに検討に時間がかかってしまい、日本にとって新しい可能性を逃してしまいかねないのです。
■ いわゆるいくつかのビジネス領域にまたがる業際的なテーマの場合は、従来の経験からは、それらは理解されにくいということなのでしょうか。
前田 その通りです。このような課題に対処するため、TTCでは、図3に示すように、業際イノベーション本部(I3C:Inter-Industry Innovation Center、本部長:富田二三彦氏)を発足させ、活動を開始しました。このI3C(アイスリーシー)は、ICTを活用する電力分野や交通・運輸分野、あるいは家電分野などが拓く新しい業際的なビジネス分野を、業際イノベーションとして新しい活動の柱の一つとして位置づけています。
■ もう少し具体的にはどのようなテーマでしょうか。
前田 このI3C(業際イノベーション本部)は、具体的には、これまでお話ししてきた、
(1)スマートグリッド(ICT+電力)
(2)スマートカー(ICT+自動車)
(3)スマートホーム(ICT+家電)
などや、災害に強いネットワークの課題なども含めたテーマがあり、これらの業際イノベーションのための調査研究、課題の発掘並びにその戦略の検討、それを実現するための活動を行っています。このI3Cは、図3に示すように、いろいろな領域をICTによって横串した業際イノベーションになっています。
■ 図3は、新しい標準化活動が業際的に活発化していることがよくわかりますね。
前田 はい。図3では、通信技術(ICT)が横串となっていますが、この場合、インターインダストリー(業際)の人たちが、業際を連携させる新しい横串(よこぐし、ICT)に関するルールを決めていかないと、きちんとした次のビジネスに結びつかない懸念も予想されます。そこで、今後、I3Cの重要性を理解していただけるよう、教育や宣伝を行い、普及させていきたいと思っています。
■ 図3の中に、気候変動・災害対応という部分がありますね。
前田 はい。これは今後とも重要なテーマとして取り組んでいきます。私たちは、地球環境問題とは別に、今回の東日本大震災を通じて、例えば、携帯電話が使えなかったり、街中の公衆電話(固定電話)は長い行列となっていたりして、現在の通信の脆弱さを実体験しました。この体験を通して、緊急時の対応の方法や、復旧に向けた対応の方法など、体験した者でないとわからないものがわかってきました。今後とも、継続的に安心・安全確保のための活動を積極的に展開していきたいと思っています。
例えば、I3Cの活動として、「災害に強いICTを考えるワークショップ」の定期開催を行っており、次回は2011年10月7日にTTCでの開催を予定しています。ICT分野の方だけではなく、自動車業界、電力業界などをはじめ、業際的なテーマを議論できる場をどんどん企画しようと思っていますので、ぜひご支援をお願いしたいと思います。
■ 本日はご多忙のところ、ありがとうございました。
(終わり)
プロフィール
前田洋一(まえだ よういち)氏
現職:
一般社団法人情報通信技術委員会(TTC) 代表理事専務理事
【略歴】
1980年 静岡大学大学院 工学研究科電子工学専攻修了
1980年 NTT(当時、日本電信電話公社)の電気通信研究所入所。以来、広帯域伝送方式、光アクセス網システムの研究開発に従事。
1988年 1年間、英国BT研究所の交換研究員としてATM技術の研究に従事。
1989年から、ITU-TのSG13およびSG15会合に参加し、SDH、ATM、光アクセスなどの標準化に寄与。SG13におけるラポータ、SG13副議長を歴任。
2004年 SG15議長に就任。2008年10月にITU-TのWTSA総会にて、2009年から2012年までの第2期目のSG15議長に指名され、現在に至る。また、2000年から2004年には、光アクセスの推進を図るFSAN(Full service access Network)のWG議長も担当。
2006年 NTTを退職し、NTTアドバンステクノロジー(株) ネットワークテクノロジーセンタにて標準化戦略の主幹担当部長およびNTTのシニアアドバイザ(標準化)を担当。
2010年9月 NTTアドバンステクノロジー(株)を退職。
2010年10月 社団法人情報通信技術委員会(TTC)の専務理事に就任、現在に至る。
<学会関係>
IEEE会員。電子情報通信学会フェロー。
<主な表彰>
2002年 日本ITU協会賞 功績賞
2006年 文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)
<主な著書>
「Introduction to ATM Networks and B-ISDN」(1997, John Wiley &Sons)
「わかりやすいB-ISDN技術」(1993、オーム社)など
【バックナンバー】
スマートグリッド/クラウド/FNに挑むTTCとITU-Tの標準化戦略を聞く!(第1回)
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20110722/847
スマートグリッド/クラウド/FNに挑むTTCとITU-Tの標準化戦略を聞く!(第2回)
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20110728/849
スマートグリッド/クラウド/FNに挑むTTCとITU-Tの標準化戦略を聞く!(第3回)
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20110818/850
スマートグリッド/クラウド/FNに挑むTTCとITU-Tの標準化戦略を聞く!(第4回)
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20110905/852
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〔本書の特徴〕
スマートグリッド/スマートハウス時代に、ホームネットワークが急速に注目を集め、新しい標準が次々に登場しています。ホームネットワークはアプリケーション分野の面、技術要素の面のどの観点から見ても多数の要素が互いに関連する複合型のシステムとなっています。そのため、特定の技術が開発されれば一気に実現できるようなシステムではありません。それぞれの部分にあった適切な技術を組み合わせ、全体としては一般ユーザーが運用していける使いやすいシステムを構築する必要があるのです。
特に、スマートグリッドとしての制御系の波は、これまでのホームネットワークのシステムに、無線やPLC(電力線通信)などの通信技術の進展がみられたのに加えて、家庭内に創エネ、蓄エネの機器が出現し、重要なものになってきています。
さらに2011年3月11日に起きた災害は、人々の意識や社会的ニーズを一変させ、それまではコスト面などで敬遠されてきた再生可能エネルギーおよび分散電源の活用や、快適さを失うおそれから取り組みが足踏みしていた消費エネルギー抑制諸技術の実現に、改めて研究開発の方向性が向かいつつあります。
本書は、現時点の最新技術の羅列ではなく、過去からの技術の蓄積に基づき、スマートハウスを実現するために必要となるホームネットワークの一連の技術について述べたものになっています。
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スマートグリッドシリーズ第5弾
グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011
[太陽電池/LEDテレビから電気自動車までの新戦略を解明]
http://r.impressrd.jp/iil/GreenSemicon2011
執筆者:津田建二(国際技術ジャーナリスト)
ページ数:150P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)
〔本書の特徴〕
半導体は今や、ハード指向からソフトウェアをのせる時代に進化しています。人間の知恵を埋め込んだ新しい半導体が次々と生まれ、スマートフォンやタブレットPCをはじめ、新しい電子機器が生まれてきています。私たち人類の知恵を実現してくれるのが半導体であるからこそ、将来に向けてCO2を削減し、青い地球を維持するために欠かせない環境技術を開発し継続していくことと、半導体技術は一体なのです。
本書は、半導体を使ってグリーン化が進み、今後の推進可能な分野を、調査データと技術解説の両方から解説しています。
半導体産業を通してスマートグリッド関連ビジネスを推進している企業だけでなく、新しい家電機器をはじめ、電気自動車やスマートハウス関連の新ビジネスを推進する企業の、今後の戦略的な参考資料としての一冊となっています。
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スマートグリッドシリーズ第4弾
世界のスマートグリッド政策と標準化動向2011
[実用期に入ったNIST/IEC/IETF/IEEEの全仕様とサイバーセキュリティ]
http://r.impressrd.jp/iil/SmartGrid2011
執筆者:新井宏征/名和利男/湧川隆次
ページ数:328P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)
〔本書の特徴〕
スマートグリッド(次世代電力網)は、2010年1月にNIST(米国国立標準技術研究所)が「スマートグリッド標準仕様 第1版」を発表して以来、急速に世界的な取り組みが活発になってきた。本書は、具体化してきたNISTやIEC、IETF、IEEEなどの標準仕様や世界各国の政策、参入プレイヤーの動向など、最新動向を網羅する。
まず標準化動向については、2010年まではNIST中心に見えていたスマートグリッドを、欧州のIEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)における取り組みについても広く取り上げてまとめている。さらに、個々の標準化のフレームワークのなかの具体的な技術仕様である、IETFやIEEEの最新動向についても整理している。
また各国の事情によって異なるスマートグリッド政策とビジネス動向については、国内をはじめ、米国、欧州、アジア諸国について最新動向と今後のロードマップについてまとめている。特に中国と韓国を中心としたアジア諸国で急速に推進されているスマートグリッド政策については、新しい動きとして注目できる。
さらにスマートハウスやスマートシティにおいて、ネットワーク経由で収集される家庭や企業の個々の電力情報に関するセキュリティ対策も重要視され、いくつかの国で、スマートグリッドのサイバーセキュリティに関する先進的な施策が推進されている。本書では、スマートメーターやスマートハウスにおいて想定されるサイバーセキュリティ対策についても、その脅威について触れながら解説している。
本書の最後には、最新のスマートグリッドの用語集も付け、読者がより理解できるように工夫されている。
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スマートグリッドシリーズ第3弾
日米欧のスマートメーターとAMI・HEMS最新動向2011
http://r.impressrd.jp/iil/SmartMeter2011
執筆者:新井宏征(株式会社情報通信総合研究所)
ページ数:172P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)
〔本書の特徴〕
本書は、第1弾のスマートグリッド、第2弾のスマートハウスに続いてく、「スマートグリッドシリーズ」の第3弾である。本書は、現時点におけるスマートグリッドビジネスの本丸とも言えるスマートメーターをテーマとして、関連するさまざまなトピックを取り上げている。電力量計の歴史をひもときながら、スマートメーターの登場までをたどり、スマートメーターの仕組みや、スマートメーターと密接に関連する重要な要素であるAMI(高度メータ―基盤)やHEMS(宅内エネルギー管理システム)について解説をしている。
わかりやすく整理した「スマートメーター・AMI・HEMS関連用語集」付き。
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スマートグリッドシリーズ第2弾
日米欧のスマートハウスと標準プロトコル2010
[Smart Energy Profile 2.0によるスマートグリッドの新展開]
http://r.impressrd.jp/iil/SmartHouse2010
執筆者:
新井宏征(情報通信総合研究所)、 水城官和・林為義(Wireless Glue Networks)
ページ数:174P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)
〔本書の特徴〕
スマートハウスを実現するための技術動向とSmart Energy Profile 2.0に関する初めての解説書スマートハウスは、近年、地球温暖化対策などの観点から、国際的にその必要性が注目されている。スマートハウスとは、ICT(情報通信技術)を活用して、住宅を取り巻くさまざまなアプリケーションを統合的に制御する取り組みであり、「省エネ」(エネルギー消費の削減)「創エネ」(再生可能エネルギーなどによるエネルギー生成)「蓄エネ」(蓄電池や電気自動車のバッテリーなどを利用したエネルギー貯蔵)が期待されている。米国では、すでにスマートメーターの設置やホーム内での監視制御機器に関しての標準化が活発になっており、日本でも国内版のスマートハウスに関連する動向が注目されている。
本書では、先行する米国のホームエリアネットワーク(HAN)技術を中心に、最新のアプリケーション「Smart Energy Profile 2.0」について全体像を解説している。さらに、スマート ハウスを構成する「スマートメーター」「HEMS」(ホームエネルギー管理システム)」「エネルギー端末」について整理してまとめ、続いてスマートハウスに関連する実証実験プロジェクトやビジネス動向についても触れている。
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インプレス標準教科書シリーズ スマートグリッド教科書
http://www.impressjapan.jp/books/2981
監修者:合田 忠弘(九州大学大学院)、
諸住 哲(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
ページ数:384P
サイズ・判型:B5判
定価:[本体4,700円+税]
〔本書の特徴〕
今、電力網と情報通信網を統合した「次世代電力網」すなわち「スマートグリッド」が国際的に大きく注目され、さまざまな国でその取り組みが開始されています。
私たちを取り巻く社会環境は、現在、地球温暖化問題やエネルギー枯渇問題、経済危機など、人類史上まれにみる深刻な危機に直面していますが、これらを解決する救世主として登場したのが、「スマートグリッド」です。
このスマートグリッドは、大きく3つの可能性をもっています。
1つは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを利用することによって、「電気エネルギーの面」から今後、クリーンなエネルギーを持続的に供給することが可能になることです。2つ目は、情報通信技術を活用することによって、「送配電網の運用の面」から効率的で信頼性の高い電力の供給が可能となることです。3つ目は、家庭やオフィスなどの需要家側においては、電気エネルギーの使い方をスマートにすることによって省エネルギー化を可能とするなど、「消費の面」からも新しい局面を拓くことが可能になることです。
本書は、スマートグリッド関係の分野において、国際的な標準化活動や最前線で研究開発やビジネスを展開されている執筆陣によって刊行され、スマートグリッドの全体像を集大成した内容になっています。このため、電力業界はもとより、情報通信業界をはじめ、家電業界、自動車業界に至るまで、スマートグリッドに携わる幅広い方々が、次世代のビジネス戦略を考えるうえで、大いに参考になる必読の一冊となっています。