脳卒中から懸命のリハビリで活動を再開した演歌歌手の友紀希望(ゆうき・のぞみ)さんが、病気の予防や重症化を防ぐ方法を広く知ってもらおうと、自身がパーソナリティーを務めるラジオ関西の番組に、専門医2人をゲストに招いた。番組は「友紀希望 歌の旅」(毎週金曜午後9時40分〜同10時)で、収録分は17日から3週連続で放送される。(鎌田倫子)
友紀さんは2009年に脳卒中の一種の脳出血で倒れ、4カ月間入院。言語障害と左半身のまひが残ったが、リハビリを重ね、1年半後に音楽活動を再開。今年秋には新曲の発売も予定する。番組のゲストは、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)先進医療・治験推進部長で、日本脳卒中協会(大阪市)副事務局長も務める山本晴子医師と、同センター脳血管内科の重畠裕也医師。
山本医師によると、脳卒中は寒さで血圧が高くなる冬に起こりやすいと思われているが、血管が詰まる脳梗塞は夏でも少なくないという。番組の中で「脱水で血がどろどろになる。節電すればより汗をかきやすくなると思うので、水分はきちんと取って」と訴えた。
特に注意が必要なのは、アルコールを摂取する時だ。「お酒で水分を取ったつもりでいても、尿として出てしまうため、気付かないうちに脱水状態になる」と山本医師。
また、普段から脳卒中予防のために心掛けたいこととして、同協会が作った「十か条」を紹介。危険因子として高血圧や糖尿病、太り過ぎなどを挙げた上で、山本医師は「アルコールは控えめならオーケー。ただし、たばこは駄目。百害あって一利なし」と断じた。
一方、脳卒中を発症すれば、一刻も早く受診することが大事。特に脳梗塞の場合、発症後3時間以内なら、詰まった部分の血を溶かす薬「t‐PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)」が有効だからだ。
重畠医師は「見逃さないよう、脳梗塞の症状と対処法を知っておいて」と指摘。覚え方について「顔(FACE(フェース))、腕(ARM(アーム))のしびれやまひ、言葉(SPEECH(スピーチ))の乱れが出たら、時間(TIME(タイム))を確認して急いで救急車を。これらの頭文字を取って『FAST(ファスト)』(速く、速いの意味)と覚えてほしい」と紹介した。
山本医師は、脳卒中を克服するためのポイントも説明。再発予防に必要な薬の継続や自己管理、リハビリを根気よく続けること、社会参加の重要性を強調した。
友紀さんについて、山本医師は「リハビリは発症から2年以内が効果的とされるが、友紀さんは今も後遺症が改善し続けている。人前で歌いたいという気持ちが原動力となって、一生懸命続けたからでしょう」と話し、友紀さんも「皆さんも諦めずにリハビリを続けて」と呼び掛けた。
(2012/08/06 12:08)
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