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2012年8月20日(月)付

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 ベトナム戦争のころ、米軍が高性能の攻撃用ヘリを作り、開発にかかわった技術者らがどんなパイロットを乗せるか合議した。結論は、「理学系博士課程の学力があり、五輪選手級の運動神経を持つ、自殺志願の男性」。航空自衛隊医官や早大教授をつとめた故・黒田勲さんから聞いた話だ▼性能を高めたいあまり、危険で操縦の難しい航空機を作りたがる。そうした軍幹部や技術陣への皮肉として語られていた話らしい。垂直離着陸で売るオスプレイを、いやでも連想してしまう▼4月にはモロッコで墜落事故を起こした。予想通りと言うべきか、米軍は先日、主原因は操縦ミスだったと公表した。操縦士の失点にして一件落着させるのは、昔の事故調査を見る思いがする▼機体に問題はなく、要するに「操縦士がしっかりしていれば事故は起きなかった」という結論だ。だが機体の問題とは、何かの不具合だけではあるまい。ヘリと飛行機の二兎(にと)を追った設計である。どこか飛行に無理があるなら、それ自体が問題をはらんでくる▼ヒューマンエラー研究の草分けだった黒田さんは「人間のせいにすれば対策は安くなる」と指摘していた。たとえばの話、「しっかりやれ」と指導すれば格好はつく。だが、むろん抜本的な対策ではない▼ともあれ、これで「安全は確認された」と肯(うなず)けるものだろうか。沖縄の普天間飛行場は市街地が隣接して「世界一危険な基地」と言われる。10月配備の台本に沿って事を進めるなら、乱暴にすぎる。

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