スポーツ報知のメインコンテンツへジャンプ

◇…スポーツ報知の購読申し込みは、フリーダイヤル 0120-16-4341(イロ ヨミヨイ) まで…◇

◇…過去の記事は、ご使用のプロバイダのデータベース・サービスをご利用ください。…◇

スポーツ報知>コラム>城田憲子の「フィギュアの世界」

ここからスポーツ報知のメインコンテンツです

日本のメダリストのコーチたち~山田満知子〈4〉

デビッドウィルソン(中央)と山田満知子コーチ(左から2番目)とご主人(左端)

 山田氏「まあ、そんな風に私たちのやり方や、私がみどりを育てることに対して反対の人がいっぱいいたと思うんですよ。でも無事にみどりが引退して、次に小岩井(久美子)がいろいろな大会に出させてもらえる選手になって、そして恩田(美栄)、中野(友加里)、舞、真央(浅田姉妹)が続いて…。今は佳菜ちゃん(村上佳菜子)と、私も選手に恵まれてるよね」

 城田「選手たちを育てたことに加えて、山田先生の功績で面白いのは、振付師のデビット・ウィルソンを、早くから日本に呼んでたでしょう? みどりちゃんから始まって、真央ちゃんくらいまで」

 山田氏「デビットね。みどりが引退して、ショーに出てたころかな? アメリカやカナダの男の子たちを見てると、すごく目に入ってくるプログラムがあってね、『誰が振り付けてるのかなあ?』って思った。聞いたら、デビット・ウィルソンって人だよ、って。それで樋口先生(樋口美穂子コーチ)にコンタクトを取ってもらったの。最初はみどりのショーの振り付けを頼みたいと思ったのね」

 城田「デビットといえば、ヨナ(金妍兒)に(ジェフリー)バトル、高橋大輔君と、ビッグネームの振り付けで知られてるけど…」

 山田氏「当時はまだそれほど有名じゃなかったから、『名古屋に来てくれる? 』って頼んだのよ。しかも『安くお願いね』って(笑)」

 城田「安くね(笑)」

 山田氏「うちはそんなに払えないからね。その変わり出来るだけ稼げるように、みどりから初心者の子どもたちまで全員見てもらったの。長い時は1カ月、名古屋にいてもらったかな」

 城田「ちびっ子までデイビット! 今じゃ考えられない…」

 山田氏「働く気があるのなら、お願いしたい仕事はいっぱいあるのよ、と」

 城田「でもデビット、芸術家タイプだから気まぐれで、大変なこともあったでしょう?」

 山田氏「うん、だから私、すごく怒ったこともあるよ。『そんなにたるんでばかりじゃ、お金払えないよ!』『お金稼いでカナダに帰りたかったら、頑張りなさい』なんて。今考えるとすごいことだけれど、彼は大須のリンクの一般営業の時間に子どもたちを教えてくれてたんですよ」

 城田「あの、お客さんでいっぱいのリンクで? 今はトロントの名門クラブで貸し切って振り付けしてるのに!」

 山田氏「ある時、小学生の団体が遊びに来たの。リンクを仕切って、あっち側では子どもたちがギャアギャア騒いでる」

 城田「そのすぐ近くでプログラムの振り付け…」

 山田氏「そう、デビットもさすがにギャーっとなって、リンクの真ん中でキレて出てっちゃった!」

 城田「さすがにかわいそうねえ」

 山田氏「美穂子先生とね、『どうする? 怒って出ちゃったよ』『仕方ない。捜しに行くか…」って(笑)。彼には日本のリンク事情を話して、『ごめんね、日本はこうなの。イライラするかもしれないけど、頑張ってね』って言った」

 城田「今や彼に振り付けてもらいたくて、世界中の選手がカナダに行く、そんな振付師よ」

 山田氏「ねえ(笑)。そんな風にデビットの振り付けたプログラムを、例えばジュニアの選手たちが国際大会で滑るでしょ? そうすると、『これ、誰の振り付け?』ってよく聞かれたな。時にはカナダの人にも聞かれるから、『デビット・ウイルソン。カナダの人よ!』って言っても『ええっ! 誰?』って驚かれたりもして(笑)」

 城田「私が覚えてるのは、みどりちゃんがアイスショー(97年プリンスアイスワールドなど)で日本の曲で滑ったプログラム。『ずいずいずっころばし』だっけ?」

 山田氏「そう、『ずいずいずっころばし』。あれはデビットよ」

 城田「あれは、かわいいプログラムだった。そのことでデビットと話したこと、覚えてるわよ。『このへんでもうひとつ、ステップ入れたらどう?』『いいねえ』って。でもみどりちゃん、ステップ増やしたらジャンプ跳べなくなるからイヤです、って(笑)」

 山田氏「そのうちデビットも、カナダでトップの選手たちの振り付けをするようになって」

 城田「(ジョアニー)ロシェットとか、(シンシア)ファヌフとかね。あれが05年頃でしょう? 実は山田先生の方が、先に彼の才能を買ってたのね」

 山田氏「そうそう(笑)。古くからの付き合いだからね。デビットが何かのインタビューで私のこと、『日本のママだ』って話してくれたのよ。真央ちゃんを連れて世界ジュニアに行った時も、彼がわざわざ会いに来てくれたの。『デビットっていう人が、先生を待ってますよ』って言われて、どこのデビット? って思ったら、彼だった。もう結構有名になってたのに、ずっと私のこと待っててくれてね」

 城田「05年の世界ジュニア(カナダ・キッチナー)ね」

 山田氏「そう。『いやあ、久しぶり』『デビット、ちょっと太ったんじゃない?』なんて話したの(笑)。デビットはまた、美穂子のことをすごく可愛がってたし、認めてたみたい。『カナダに連れて帰りたい』『自分と一緒に仕事をさせたい』って、よく言ってたな」

 城田「今でも選手たちが海外に振り付けに行く時は、だいたい美穂子先生が付き添ってるわよね」

 山田氏「うん、デビットの後に真央ちゃんたちは、リー・アン・ミラーやローリー・ニコルのところに行ったんだけれど、だいたい美穂子に行ってもらってた。美穂子も振り付けのアイディアをすごく豊富に持ってる人だから、デビットだけじゃなくみんなにかわいがってもらったのよ。他の振付師がついてくるのはダメだけど、美穂子だったらいいよ、なんて言われてね。去年も真央ちゃんの振り付けで名古屋に来てたローリーが、『ミホコ、元気?』って訊いてくれたの」

 城田「美穂子先生も、世界中で勉強してきたんでしょうね」

 山田氏「色々な人と組んで来て、美穂子もたくさんのノウハウを得られて。また今度は違う人とやりたいってことで、去年は佳菜ちゃんと一緒にタラソワの所に行ったり、マリーナの所に行ったりもした。ありがたいなって思いますよ。私たちチームみんな、あちこちで良くしてもらって。デイビッドにも、私たちがまだこんなに頑張ってるところを見せたいよね、って美穂子と話すのよ」

 城田「デビット、本当に毎年のように名古屋に来てたものね。もう世界的な振付師なのに」

 山田氏「その世界的な振付師に、文句言って作り直させたの、誰だっけ?」

 城田「アハハハハ」

 山田氏「『これダメ、やり直し』って(笑)。あれは美栄の時だったかしらねぇ。当時は美栄ちゃんが日本のトップの一人だったから、城田さんがわざわざ名古屋に来たのよ。『え、デビットって人を呼んでるの? じゃあ見に行くわ』って。そしたらいきなり、『このプログラム、左回りばっかり! もうスタートから変えなさい』って(笑)。しょうがないからデビットに、『左回りばかりでダメだって。スタートから変えろって言ってるよ、連盟が』って伝えた。あれには彼もびびったと思うよ。『はあ?』って(笑)」

 城田「いやあ、あの頃は私も純粋というか(笑)。デビットもまだ若くて、ぶつかり合ってね。『これダメ』『もう、曲から変えちゃいなさい』とか(笑)。でも私とデビット、今でも仲良しなのよ。去年も中国でたまたま会ったの。私が参加したセミナーに彼も来ていて、『日本は最近声を掛けてくれないけれど、中国は僕を呼んでくれるから来てるんだよ』だって(笑)。まあ強化部長だった頃には、選手を強くさせようって気持ちできついことも言ったし、怒ったりもしてきた。でもやっぱり、常に本音で付き合っていきたい気持ちがあったのよ」

 山田氏「城田さんがわがまま娘だってことは、よく分かってますから(笑)。でもやっぱり、そんな人も一人、連盟にいなきゃいけない。聞きわけのいい人ばっかりじゃ駄目なの」

 城田「私もかなり無茶やったけれど、山田先生だってけっこう無茶苦茶だったんだから。私たち、ぶつかりあったりもしたけれど、でもいつもどこかで…」

 山田氏「そう、城田さんと私って、どっかで仲がいいんですよ。連盟とインストラクターって、絶対に相いれないものがある。本来、そうあるべきだ、とも思う。だけど城田さんと私って、どこかでお互いに認め合える部分があるのよね。たぶん連盟とインストラクターという枠を越えた、人間的な共通点があるのかな? お互いに人間的に、惹かれあってるのかな? ちょっと、褒めときましたけど(笑)」

 城田「そうよね(笑)。だからぶつかり合いそうでいて、そうでもないよね?」

 山田氏「いや、ぶつかり合ってはいるけれど(笑)。でもお互い正直だからね」

 城田「お互いにわがままだしね(笑)。よく遠征先でも、みんなの目を盗んで買い物に行ったりしてた。『試合終わっちゃったし、行っちゃおうか?』って(笑)」

 山田氏「パリなんて、よく2人で歩き回ったわねえ。(佐藤)信夫先生にも私たちの荷物を持ってもらったりしたよね。信夫先生からは『のこちゃんと山田先生がそろうと最悪』って、今でも言うもの(笑)。『この2人と一緒に試合に行ったら、ろくなことがない』って(笑)」

 城田「私たち3人で試合に行くこと、多かったからね。私も言われたよ。『のこの旦那さんは大変だよねえ』って(笑)。だから同じわがまま娘でも、久美(佐藤信夫氏の妻)ちゃんは、私たちに比べればまだマシだ、なんて思ったんじゃない?」

この記事をlivedoorクリップに登録

この記事をYahoo!ブックマークに登録

ソーシャルブックマークに登録

(2012年7月23日17時50分  スポーツ報知)

著者略歴 城田 憲子(しろた・のりこ)

 1946年7月4日、東京都生まれ。立大卒。選手時代はシングルとアイスダンスで活躍し、全日本選手権ダンス部門2連覇。現役引退後は日本スケート連盟で選手強化を手掛け、長野五輪からトリノ五輪までフィギュア強化部長を歴任。また、国際審判員とレフェリー資格を持ち、五輪をはじめ多くの国際試合でレフェリー&ジャッジも務める。

お薦めアイテム

携帯サービス

  • ニュース
  • GIANTS
  • 釣り
  • 競輪
NEWS 読売・報知

国内最大規模の携帯ニュースサイト。スポーツニュース速報のほか、旬の社会、芸能ニュースも満載。月額84円(税込)

NEWS読売・報知の詳細へ

モバイルGIANTS

巨人軍公式サイト。待ち受け画像や注目の選手情報など、シーズンオフも必見。「NEWS読売・報知」の全コンテンツも利用できて月額210円(税込)!

モバイルGIANTSの詳細へ

報知つり速報

翌日朝掲載の釣果情報を当日夜に配信。厳選した指定船宿と協力店からの正確な情報や、船宿の自慢料理・仕掛けなど、実用的なメニューもご用意。月額210円(税込)

報知つり速報の詳細へ

報知競輪情報

携帯初の競輪予想情報。グランプリやダービーはもちろん、関東・南関東を中心に各レースを徹底予測。月額210円(税込)

報知競輪情報の詳細へ

スポーツ報知の出版物 スポーツショップ報知
報知新聞社出版局 スポーツショップ報知