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特集 第1部 CCCの21世紀戦略 |
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データベースマーケティングで世界一の企画会社をめざす
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[2009-12-28 01:10:26] |
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カルチュア・コンビニエンス・クラブが再び躍動し始めた。起爆剤はTポイントカード。利用者数3 378万人、加盟企業62社のポイントカード連合を形成している。Tカードを通して集まるマーケティング情報を駆使して、世界一の企画会社に照準を定めた。「将来はカード会員を6000万人に増やし、加盟企業の顧客を拡大、おもろいプロデューサーを育てたい」と社長の増田宗昭は豪語する。 (文中敬称略)
躍進するTポイントカード
増田宗昭、58歳。カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を創業して27年、来年は還暦を迎えるが、以前より若々しく青年のような軽やかさで社内を闊歩する。毎日欠かさないトレーニングのせいもあるが、創業以来掲げてきた世界一の企画会社の夢がようやく実現する機運が高まってきたからである。
今朝も増田は午前4時に目を覚ました。ハネ起きるや否や頭脳がフル回転し、次から次に事業構想が浮かび上る。脳裏から噴出するアイデアを例の太い鉛筆で紙に書き止めるのももどかしそうだ。増田は今、企業家として最も充実した日々を送っている。
増田に精気を蘇らせたのはTポイントカードの躍進である。ビデオレンタルチェーン「TSUTAYA」の顧客向けに発行したカードに03年10月からTポイントを付けてから瞬く間に発行枚数を増やして行った。普通、この種のカードは1000万枚を超えることはめったにないが、Tカードは年を追うごとに会員数を増やし、09年11月現在、3378万人に達した。09年は1年間で400万人も増えた勘定になる。
Tカードは表面的には店舗での買い物の際、100円につき1円のポイントが付くという単純な仕組みだが、店舗側にとっては顧客の拡大など販促面で大きな威力を発揮する。たとえば、あるコンビニエンスストアはTカードの加盟店になって、1年間で20%も顧客数が増えたという。
Tカードが年を追うごとに威力を増すにつれ、多くのチェーン店がTカードを発行、現在ファミリーマート、新日本石油、キタムラ、ドトールコーヒーなど有力チェーン62社がTカードグループに参加している。
06年10月に、TカードをTSUTAYAだけでなく、他のチェーン店でも使えるようにしたことが、Tカードの躍進につながった。「ひと言で言えば、Tポイントを円から基軸通貨のドルにしたわけです」と増田は解説する。有力チェーン店はセブン&アイグループの「nanaco(ナナコ)」、イオングループの「WAON(ワオン)」のように独自のカードを持っている。しかし、これらのカードは自社グループ内では使えても、他のチェーン店では使えない。Tカードは企業間の垣根を乗り越えて、顧客がどこの店でも使えるようにしたのが功を奏した。正にコロンブスの卵である。
だからと言って、他社がこぞってTカード加盟店になった訳ではない。どこの企業もプライドがあり、増田の勧誘に簡単には首をたてに振らなかった。ファミリーマート(7600店)のTカード加盟も初めは難航した。増田の提携の提案にファミリーマート社長の上田準二はすんなり賛同したが、取締役会では大半の取締役が条件が厳しいなどの理由で反対した。このとき、上田は「君たちには夢がない。増田さんには夢がある。ここは増田さんの夢に乗ってみようではないか」と強引に説得してTカード導入に踏み切った。この結果、ファミリーマートは消費不振の中で、09年2月連結決算は経常利益395億円、前期比16・5%増を達成した。「増田さんの夢に乗って良かった」と上田は上機嫌だ。
Tカードはファミリーマートのエーエム・ピーエム・ジャパン(am/pm、1100店)買収にも一役買った。am/pmは今回のM&Aにより、Tカード会員3378万人を新たな顧客として迎えることが出来る。合併効果が2倍にも3倍にもなる。上田はそのことを計算してam/pmの買収に踏み切ったに違いない。
Tカードの威力はポイント発行による顧客の拡大だけに限らない。3378万人のカード会員が買い物をするたびにマーケティング情報がCCCのデータベースセンターに蓄積される。このマーケティング情報を駆使すると、いろんな販促活動に利用できる。たとえば、ある店舗で食品の新製品を発売したとする。その場合、新製品を購入したカード会員に「価格に満足しているか」「味に満足しているか」「もう一度買うか」などをアンケート調査し、その情報を店舗にフィードバックすれば、新製品の顧客満足度をある程度つかめ、新製品発売が成功だったかどうかの判断がつき、次の新製品開発のための貴重なデータとなる。
ネット戦略も加速
こうしたデータベースマーケティングが可能になったのは、Tカードの利用者が3378万人にも達したからである。増田はこの数字をさらに増やすため、幾つかの手を打っている。その一つがネット戦略である。99年7月にスタートしたツタヤオンラインは映画などの新作情報や店舗情報を知らせるサイトで、携帯電話でクーポンも提供している。同サイトの会員数は現在1500万人、09年は111万人増加した。
インターネットの情報はすべてデジタル化され、CCCのデータベースセンターに直結している。「ネット戦略はデータベースマーケティング会社を標ぼうするCCCにとって、欠かすことの出来ない戦略部門」と増田は言い切る。
そうした背景から、増田はこのところネット関連のM&A戦略を強化している。その一つが価格比較サイトのカカクコムへの出資である。カカクコムは家電製品、自動車、家具などのあらゆる商品の価格を比較するサイトで、2350万人の月間利用者が毎月8億強ページビューも閲覧している価格比較のナンバーワンサイト。CCCは09年5月、180億円でデジタルガレージからカカクコムの発行済株式の20・28%を取得、傘下に収めた。
現在、インターネットの覇者は米国のグーグルである。利用者がキーワードを打ち込むと、全世界のサイトからキーワードに関連した情報を瞬時に選び出し、利用者の前に並べてくれる。グーグルやヤフーは人々が何かを選択する時、ネット利用のプラットホームとして欠かせない存在だ。カカクコムは商品を価格で選択する場合のプラットホームになっている。プラットホームを制するものがネットを制するとすれば、商品価格のプラットホームを押さえたことはデータベースマーケティング戦略を推進する上で大きな武器となる。
選択という点では、最近、話題になっている出前館の買収も増田のプラットホーム戦略の一つ。同サイトは出前の注文を受けるサイトで、ラーメン、そば、すし、ピザなど合計9100店舗の出前を揃えている。同サイトは夢の街創造委員会が運営しているが、CCCは09年3月、同社の株式30・3%を取得して傘下に収めた。
こうしたインターネットのプラットホームに集まって来る情報はすべてCCCのデータベースセンターに集められる。その情報を分析すれば、消費者が何を考え、何を欲し、どう行動しようとしているかが一目瞭然となる。
CCCは初めビデオレンタルチェーン「TSUTAYA」のフランチャイズチェーン(FC)本部としてスタートした。しかし、増田は単なるビデオレンタルチェーンのFC本部で終わるつもりはなく、初めから世界有数の企画会社を目指した。そのためには、マーケティング情報の蓄積が重要と判断、創業2年目で資本金100万円の時に1億円もする大型コンピューターを導入した。増田はマーケティング情報を丹念に集めて行けば、将来大きなネットワークバリューを発揮すると踏んだのである。創業期からの地道な積み重ねによって、現在TSUTAYA店舗数1388店、Tポイント会員3378万人、ツタヤオンライン1500万人、カカクコム月間利用者2350万人の消費動向を把握する日本最大のデータベースマーケティングの企画会社を実現したのである。
同社の企画本部にはTカード加盟店のマーケティング情報が蓄積されており、加盟店の要望に応じて、マーケティング情報を分析、加工できる。データベースセンターから企画本部の大型スクリーンに次々に映し出されるマーケティング情報を見ていると、大学かシンクタンクの情報センターにでもいるような錯覚に襲われる。
今、産業界は08年秋のリーマン・ショックを境に、大きな構造転換を迫られている。石油大量消費型産業から環境重視型産業へ、店舗販売からネット販売などあらゆる分野で構造転換を余儀なくされている。
その時、必要なのがデータに基づいた市場分析だ。そのタイミングにあわせるかのようにCCCはマーケティング情報を豊富に持ち、データベースマーケティングの企画会社として急浮上してきたといえる。
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