特集ワイド:原発の呪縛・日本よ! 社会学者・大澤真幸さん
毎日新聞 2012年07月27日 東京夕刊
3・11後、ドイツ、イタリアなど欧州諸国は即座に脱原発を決めた。だが、「屈折した日本」は何事もすんなりいかない。昨年夏、菅直人首相(当時)が脱原発を表明したのに、支持率が上がらなかったのもその一つと大澤さんは言う。「日本人全体が迷っている時、首相が脱原発を主張すると、迷っているのにやめてくれという感じでした。首相が意見を言うのは良いことなのに、日本は何事もはっきりと言うとダメなんです」
それに「もし原発が安全なら、原発設置自治体への交付金は出す必要がない。廃止すべきなのに、広く論議されない」。原発を始めた動機と同様、日本社会の変化はどこかねじれている。
「デモという意見表明は良いことなのに、日本ではそう考えないところがある。デモが暴徒化して街を荒らすのなら別ですが、平和的なデモを支えていく雰囲気がこの国にはない。警察は暴走族を取り締まるみたいに、デモはない方がいいという扱いをする。メディアのデモ報道も事実を伝えるだけ。あれほどの規模なのに大きく報じないのは問題だと思いますね」
人に無意識があるように、社会に無意識があるとすれば、それは今どんなふうに変わっているのだろうか。【藤原章生】
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