特集ワイド:原発の呪縛・日本よ! 社会学者・大澤真幸さん
毎日新聞 2012年07月27日 東京夕刊
<この国はどこへ行こうとしているのか>
◇「無意識」と向き合おう−−大澤真幸さん(53)
梅雨明け宣言の暑い日、東京・世田谷の自宅を訪ねると、社会学者、大澤真幸さんはカンカン照りの路地で待っていた。こんな言い方は失礼かもしれないが、80年代のアイドル歌手に似た愛らしい感じの人だ。時代や社会を論じる知識人というと、怖いイメージだが、中低音のよく響く語り口は「マイルド」という言葉がふさわしい。
新著「夢よりも深い覚醒へ3・11後の哲学」(岩波新書)で脱原発を説いた。フロイトの夢のエピソードを比喩に、悪夢(原発事故)から逃げることで表面的に安心せず、悪夢の意味を解釈し夢を突き抜ける方向へと目覚めよ、と説く。
福島第1原発の水素爆発の映像は、日本のみならず世界に、9・11を上回るほどの影響を与えた。災害の後、国民の間に共同体意識が生まれ、革命的な変化をもたらしてきた世界各地の歴史を例に時代を考察する大澤さんは、いまをどうとらえているのか。