【コラム】凶悪性犯罪者を簡単に忘れる国

125人の女性に性的暴行を加えた男、今や話題にもならず

 韓国社会が性犯罪に対し、瞬間湯沸かし器のような反応を示す原因を探ると「国全体が性的倒錯の状態にあるのではないか」という仮説に行き着く。テレビをにぎわせる性犯罪者たちが、非難されるどころか話題になる。まるで性犯罪者の名前を宣伝するかのようだ。こんな国も世界的に珍しいだろう。インターネットにアクセスすると、服を脱いだ男女がヘビのように絡み合った写真と共に「熱い夜を過ごしたい方々へ」という刺激的な宣伝文句が氾濫している。地下鉄の車内で10人中8人が見ている携帯電話の画面でも「彼女の刺激的な後ろ姿」などといったサイトに指1本でアクセスできる。

 このような状況に歯止めを掛ける方法は、厳しい判決や法の執行しかない。ところが「人権派裁判官」が勢ぞろいした裁判所は、性犯罪に寛大だ。まるでハエを殺すように女性の命を奪ったユ・ヨンチョル死刑囚らは、判決をあざ笑うかのように、刑務所の中で元気に暮らしている。先週、独島(日本名:竹島)を訪問した李明博(イ・ミョンバク)大統領を見ていると、ユ死刑囚らに対する死刑執行命令書に署名したらどうだろうか、と思える。そうすることで、さんざん国民に嫌われた大統領の印象もすっかり変わるのではないかと想像したが、今やそれは諦めざるを得ない。恐らく大統領は、凶悪犯を処刑した後に巻き起こるだろう「犯罪者の人権」をめぐる論争に巻き込まれたくないはずだ。そして「死刑廃止国」という虚像もつかみたいことだろう。しかし、死刑執行命令書に署名する勇気があったならば、韓国が5年間にわたり、現在のような状況に陥ることはなかったはずだ。

 大統領だけではないだろう。次期大統領選挙の有力候補に悪口を浴びせた後、それを撤回した政治家や、セクハラ行為について隠した上、意地を張っている政党もある。そう考えると、韓国の母親や娘たちが望む「性犯罪からの解放」ははるか遠いと言わざるを得ない。

文甲植(ムン・ガプシク)記者
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