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 本日、最初に投稿した最新話は非難が起こった場合、再投稿する予備の話でした。
 なので本来、投稿するはずだった最新話を再投稿します。
 7月7日付けで第一次編集を行いました。
第二十六話 揃いし精鋭、特別陸戦隊
1940年(昭和15年)5月15日 富士陸軍演習場

 現代の陸上自衛隊でも使用されている富士陸軍演習場。この地に二階堂達は来ていた。
 何のためかと言うと第零独立機動艦隊特別陸戦隊の視察のためである。特別陸戦隊とは事実では上海事変を教訓に組織された常備の陸戦隊で、本来の陸戦隊は必要な時に艦内で編成され、陸上戦闘を行う臨時部隊の事である。
 この世界では中国との事件・事変は起こっておらず特別陸戦隊は組織されずじまいだった。そこで二階堂はアメリカ海兵隊に対抗する陸戦隊を組織するため、陸海軍上層部を相手に特別陸戦隊の組織を訴えた結果、条件付きで陸海軍上層部は承諾した。その条件とは司令官と参謀長は陸軍将官から出すと言う条件だった。
 それを承諾した二階堂は再び、陸戦隊司令官を選出すべく陸軍上層部と会談した。そして選ばれたのが事実で『硫黄島の戦い』で有名な栗林くりばやし忠道ただみち陸軍少将を司令官に、参謀長には同じく『硫黄島の戦い』で混成第二旅団を指揮した千田せんだ貞季さだすえ陸軍大佐となった。
 その他に陸軍から選出したのが『ビアク島の戦い』で歩兵第二二二連隊を指揮した葛目くずめ直幸なおゆき陸軍大佐に、第一戦車師団からドイツ軍事顧問団の6人等陸軍随一の精鋭を引っこ抜いて特別陸戦隊に編入させたのだ。これも陛下の信頼が厚い二階堂だからこそできた芸当である。

「お待ちしておりました二階堂司令に姫島参謀長」

 そう言うのは特別陸戦隊司令官、栗林忠道海軍少将である。ある意味、年上である栗林海軍少将が年下である二階堂や姫島にこうも丁寧であるのは些か滑稽に感じるであろう。
 だが、栗林自身はそんな事は気にしていない。むしろ、自分に対して精鋭部隊を任された事を考えればそんな事を考える暇もない。

「出迎えありがとうございます栗林少将。早速だが、案内を頼みたい」

「了解しました。では、案内します」

 そう言うと近くに停まっていた百式小型貨物車…所謂『ジープ』にへと搭乗し、案内してもらった。
 移動中、二階堂の目に入ったのは近くに堂々と鎮座する百式重戦車『シホ』と百式砲戦車『ホヌ』であった。
 ノモンハン事件での牟田口廉也陸軍少将が指揮する第一戦車師団の圧倒的な戦果・活躍によって今年2月『シホ』と『ホヌ』は無事に正式採用された。
 そんな『シホ』と『ホヌ』はそれぞれ一個大隊分の16輌ずつ特別陸戦隊に配属されている。その他にも歩兵が演習を行っていた。その中でまたも目に留まったのが、キャタピラ駆動の装甲兵員輸送車と歩兵戦闘車…前者は百式装甲兵車『ホキ』、後者は百式歩兵戦闘車『セイ』である。事実では一式装甲兵車『ホキ』として存在していたが、この世界では歩兵連隊の迅速な移動、つまり『電撃戦』を行うために早期に開発させていたのが『ホキ』であり『セイ』である。『セイ』だが当然、事実では存在していない歩兵戦闘車であるが、何をモデルにしたのかと言うと現代の陸上自衛隊が使用している89式装甲戦闘車とアメリカ陸軍が使用しているM2『ブラッドレー』歩兵戦闘車である。

「どうですか二階堂司令」

「ああ、中々の機械化が進んでいるようだな」

 二階堂はそっけなく言ったが内心、機械化が進んでいる事に対して自分達が転生してから行ってきた改革が実った実感を感じているのだ。

「それに歩兵部隊も錬度が高いようですね」

「それはそうですよ。陸軍の精鋭が編入されていますから」

 それもそうかと納得する姫島に、栗林少将はとある場所へと案内しようと百式小型貨物車を進ませた。
 そこは演習場の一角にある戦車用の格納庫だった。

「こちらです」

 そう言うと格納庫の中へと案内された。そこには整備中の九七式中戦車『チハ』や九八式砲戦車『ホイ』等がいたが、それを素通りし向かった先は格納庫の奥の方だった。

「こ、これは……」

 奥の方に鎮座している物体…それは戦車だった。それも1輌だけでなくその他にも3輌の計4輌が鎮座していた。

「驚いたな。ドイツのⅢ号戦車、Ⅳ号戦車にイギリスのマチルダMK-Ⅱ歩兵戦車…最後のは…何だ?」

「きっとブラックプリンス歩兵戦車だよ」

 二階堂は一番最後の戦車がブラックプリンス歩兵戦車だと知ると、まさかと思った。ブラックプリンスは事実ではチャーチル歩兵戦車の試験開発型として開発され、装甲は152mmとかなり厚い分類に入るのだが、歩兵戦車特有の時速18km/hと言う鈍足が足を引っ張り、さらにセンチュリオン巡航戦車の17ポンド(76.2mm)戦車砲搭載によってその計画は制限を加えられた。結局、試作車輌6輌のみが完成して計画は終了した。
 そんなブラックプリンス歩兵戦車はこの世界では全く別な経緯を辿っていた。まず、チャーチル歩兵戦車の試験開発型では無くマチルダMK-Ⅱ歩兵戦車の発展型として開発され、その試作車輌が今年の1月に完成しその1輌が研究用に日本にへと輸出されたのだ。

「ブラックプリンスね…明らかに黒太子より『ブラックプリンセス』(黒姫)の方が良いような気がするな」

 二階堂のぼやきに姫島は笑いを堪え、栗林少将は苦笑した。

「二階堂司令。それよりも紹介したい人物がいます。来てくれ」

 話題を変えようと栗林少将はそう言うとⅣ号戦車を整備していた3人の人物がやってきた。1人は男性だが、もう2人は女性だった。

「では、自己紹介を頼む」

「はっ。自分はドイツ連邦共和国陸軍ウェルキン・ギュンター陸軍大尉であります」

「同じくイサラ・ギュンター陸軍准尉であります」

「同じくアリシア・メルキオット陸軍中尉であります」

 3人の士官は見事な敬礼をし、自己紹介をした。

「3人はドイツ軍事顧問団の第2弾として我が国にやって来たのだ」

「ほう…始めましてだな。第零航空艦隊司令の二階堂紅蓮海軍中将だ。こちらこそよろしく」

「同じく第零航空艦隊参謀長の姫島紫苑海軍少将です。よろしくね」

「わ、若いです!信じられません!」

 ツインテールの少女―アリシアは自分達の想像とは違う自分達とほぼ同い年の男女二人組が艦隊司令と参謀長だと知ると、驚いた声を上げた。

「アリシア、失礼だろう」

「す、すみません二階堂司令」

「いや、大丈夫だ。もう慣れている事だからさ…」

 よくよく自分は若いと他の士官・将官からも言われている事であり、二階堂と姫島はそんな事に慣れているのでそう返した。

「それよりも…どうだ、陸戦隊の方は?」

「ハッ、栗林司令。ロンメル大佐から話は聞いていましたが、精鋭ぞろいのため恐らくアメリカ海兵隊とは負けず劣らずの実力でしょう。それに戦車ですが、『シホ』と『ホヌ』は105mmライフル砲と言う大火力戦車砲を搭載していますので優れた対戦車能力を誇っています。こんな素晴らしい重戦車は見た事もありません!」

 ウェルキンは段々、興奮した口調で陸戦隊を批評した。特に彼は『シホ』と『ホヌ』について、彼自身が戦車について戦車伯爵ことヒアツィント・シュトラハヴィッツ陸軍大佐から直々に学んだ経緯を持っており故に、戦車の事は人一倍詳しいのだ。そんな彼だからこそ『シホ』と『ホヌ』の秘めたる性能を一瞬で看破できたのだ。

「兄さん。興奮しすぎです。すみません。うちの兄さんは戦車の事になるとああなるもので……」

 呆れた表情で兄であるウェルキンに言うイサラで、兄は戦車の事になるといつもこうなるのですと、付け加えた。

「そうなのか……まぁ、このような陸戦隊だが改めてよろしく頼むぞ」

「貴方達3人の期待に健闘します」

「ハッ、ご期待に添えれるように身を粉にして頑張ります」

 後に、第零独立機動艦隊特別陸戦隊は帝国陸海軍の精鋭と最新鋭装備を揃えた部隊として対米戦、対ソ戦において多大なる戦果を上げるのは後の話。
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