性犯罪:電子足輪に思わぬ盲点

 先月30日午前6時30分、ソウル市衿川区始興洞にあるチョンさん(59)=女性=の食堂に、無職のキム元被告(55)がやって来た。ちょうど昨年6月、チョンさんに対する強制わいせつの容疑で起訴されて懲役1年の判決と電子足輪装着命令(5年)を受け、1カ月半前に刑務所から出所した、前科53犯の酔っぱらいだった。

 キム元被告は、泥酔状態でチョンさんに対し「おれのことを覚えてるか。おれの顔をまっすぐ見て、しっかり覚えろ」と声を張り上げた。1年前の性犯罪の通報に恨みを抱いての報復だといっているかのような勢いだった。チョンさんは「その人を見て1年前の悪夢を思い出し、あまりに怖くてぶるぶる震えた」と語った。

 キム元被告はチョンさんの食堂にやって来て10分間暴れたが、その間、キム元被告の足首に付けられた電子足輪は全く作動しなかった。どうしてこんなことが起こったのか。

 キム元被告は2010年6月に、別の強制わいせつの容疑で起訴され、懲役1年の刑と電子足輪装着3年の命令を受けていた。1年間の服役を終えた後、キム元被告は出所してからわずか1日しかたっていない昨年6月14日にチョンさんの食堂を訪れ、電子足輪を付けたままチョンさんの胸に触るなど強制わいせつに及んだ。そして裁判所で再び懲役1年の刑と電子足輪装着5年の命令を言い渡された。

 問題は、キム元被告は今年6月13日に出所したものの、キム元被告が付けていた電子足輪は2010年の強制わいせつ事件関連のものだったという点だ。キム元被告は、この足輪の装着期間が終わる15年6月から、改めて2つ目の電子足輪を付けることになっていた。

 法務部(省に相当)の関係者は「現行法上、電子足輪を同時に幾つも付けることはできず、一つずつ順に付けるようになっているため、どうすることもできない部分」と説明した。このため、キム元被告が最近出所した直後、昨年の強制わいせつ事件の被害者だったチョンさんに接近するのに何の支障もなかったわけだ。キム元被告が付けていた電子足輪には、2010年の事件に関する情報が入力されており、チョンさんは3年間もキム元被告の報復犯罪の脅威にさらされるよりほかにない状況だった。

 キム元被告は、チョンさんを脅迫した容疑のほか、今年6月29日に酒を飲んで始興洞住民センターの執務室で電子足輪を見せつけ、「基礎生活受給者(生活保護受給者に相当)に指定して欲しい」と暴れるなど、ここ2カ月の間にソウル市衿川区一帯で10回も酒に酔って人に迷惑をかけた疑いが持たれている。食堂のカード決済機を壊し、言葉遣いを理由に60代の高齢者に暴行したこともあった。ソウル警察庁衿川警察署は10日、報復犯罪や暴行などの容疑で、キム元被告の身柄を拘束したと発表した。

アン・ジュンヨン記者
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