特集:宇宙を知る ホーキングの世界

放送日/7月23日(月)スタート 夜11時〜ほか

スティーブン・ホーキング、その素顔とは

1988年に出版された「ホーキング、宇宙を語る」が日本でも110万部を超えるベストセラーになり、車椅子の物理学者として知られる スティーブン・ホーキング。理論物理学者として、今もなお様々な主張を展開し新たな研究成果を発表し続ける、彼の素顔とは。病魔と闘いながらも今年70歳を迎えたホーキングの半生を振り返りながら、その持論を一週間にわたって特集。

佐藤教授が見るホーキング博士

ディスカバリー今回ディスカバリーチャンネルでは、
「特集:宇宙を知る ホーキング博士の世界」という事で、ホーキング博士にスポットを当てます。佐藤教授は、ホーキング博士と面識もあるようですが、少しお話しお聞かせ下さい。

佐藤教授ホーキング博士のお名前は、昔から聞いておりました。私より少し年配の方ですけれども、「ケンブリッジで天才的な研究者がいる。しかも彼が、“ブラックホールの蒸発”という驚くべき事を予言した」という事で、私は大学院生の頃からお名前は知っておりました。

80年代に、私がインフレーション理論を提唱したり、ホーキング先生が「果てのない条件から宇宙が生まれる」という理論を作られたりしたので、議論する機会が増えました。
非常に精力的な方で、何かの議論をする時も、懇切丁寧に自分の研究内容を紹介してくれました。

純粋に物理の「センス」が素晴らしい方です。直感的に物理の結論が見えてくる方で、それを後から数学的に証明する方法を取られる方です。色々な国際会議でお会いする事もありましたが、自分が障害者だからといって遠慮するという発想ではなく、積極的に様々な事をしたいという気持をお持ちの方です。なので、意欲的に研究も進めていけたのではないかと思います。

同時に彼は、とてもイギリス人らしく、シニカルなジョークを言う事が得意な方で、一緒に食事をしていても、各国で開催された講演でも、ジョークに溢れています。そういう意味では、非常にコミュニケーション能力が高い方だと思います。



宇宙研究のゴールデンエイジ

ディスカバリー現在の宇宙科学時代についてどう思われていますか?

佐藤教授この四半世紀で、宇宙論の研究は爆発的に進んだと思います。最初は理論の研究が主導し、素粒子やそれに基づいた素粒子的宇宙論の研究が大きく進みました。

しかし、その後急速に進展しました。
その例が、アメリカのNASAが打ち上げたCOBE(コービー)衛星(※)です
(※宇宙全体からやって来ているマイクロの電波を計測する観測衛星)
この計画の素晴らしさは、宇宙が始まって、わずか38万年しか経っていない頃の宇宙の地図を作る事なのです。結果的にCOBEは、まさにその頃の宇宙の地図を作りました。
そうするとその中には、後に銀河や銀河団に成長するような「種」がある事が見えてきました。なんとその種は、インフレーションが予言したものと統計的に一致していた。という事が分かりました。

最近では、すばる望遠鏡が大活躍で、宇宙初期の観測がなされるようになりました。2012年6月にも、すばる望遠鏡が見つけた新しい銀河は、129億年前の銀河である。と言われています。つまり、宇宙が生まれて8億年しか経っていない銀河なのです。
ですから、素晴らしく宇宙の研究は進んでいると思います。

アインシュタインが相対性理論を作って約100年ですが、宇宙の誕生から現在までに至る宇宙の進化の描像が、見事に描きだされてきたのではないかと思っています。
今はまさに宇宙論の研究の「GOLDEN AGE(ゴールデンエイジ)」と言えるのではないかと思っています。

佐藤
「インフレーション宇宙論」の提唱者の一人。
東京大学名誉教授、自然科学研究機構長。
専門は宇宙物理学、宇宙論。