勝つために、何度でも選手交代を告げる。攻めまくった原監督はベンチ入り野手を使い切った (撮影・荒木孝雄)【拡大】
勝つために、持ち駒を使い切る。怒涛(どとう)の攻めで、今村を飲み込んだ。村田の先制適時二塁打が飛び出した直後の八回一死二、三塁。ここを勝機とみた原監督が“攻めダルマ”に変貌した。
三走・高橋由の代走に鈴木、加藤の代打に矢野を送った。大きな決断だった。加藤がベンチに下がれば、捕手はこの日一塁で先発した阿部だけになる。それでも攻め手は緩めない。さらに二死満塁で代打・谷を送り、3点適時二塁打で策は的中。その谷に代走・藤村を告げ、ベンチ入り野手16人を使い切った。
「最後(代打に)谷を置いておいたというところもよかった。誰もいなくなっちゃった」
原監督は苦笑い。六回から毎回、代打攻勢を仕掛け、惜しみなく選手をグラウンドに送りこんだ。隣に立つ岡崎ヘッドコーチは「もう1点を取りたかった。(3時間半ルールで)あと1回だったし、リスクを背負った」と証言。覚悟の用兵だった。
もし九回の守備で、野手にアクシデントが発生したら…。原監督は有事に備えていた。九回の登板に備えて西村が肩を作る中、ベンチ裏ブルペンの電話が鳴った。田原が打ち明ける。
「トイレに行っていたときに、ブルペンの電話が鳴ったんです。(コーチに)『野手もあるぞ!!』と言われました。ファースト以外は全部やったことがあります」
内外野の経験がある田原を内野手に、星稜高時代は野手としての評価も高かった高木京を外野手としてスクランブル要員に指名。九回にはブルペンではなくベンチで戦況を見守らせた。そして奥の手は捕手・坂本だ。
「高木は外野、田原は内野ができる。捕手? ここは難しい。一番勇気のある坂本に任せよう」
試合後、原監督は究極の備えを明かした。2位中日がDeNAに勝利した直後のスクランブルでもあった。4・5ゲーム差で追う中日が力尽きるまで、巨人は勝ち続けるのみ-。マジック点灯の最短は21日に延びたが、指揮官の決意がよく表れた、層が厚い巨人にしかできない16人攻撃だった。(上野亮治)
(紙面から)