こんにちは、黒木続木です。
『小説家になろう』で新作です。語彙に劣るところはありますが、えと、楽しんでいただけると幸いです。なお、現在の投稿は冒頭部分のみです。随時更新していく予定です。
天井につりさげられた電球から、灰色の、綿のような埃が木造の本棚の角に落ちた。菊池はそれを箒で払うと、煙に巻かれて咳を一つ。
あたりを見直すと、天井の四隅には煤がかかり、そのほかの多くの本棚の上にも灰色のじゅうたんが敷かれている。ハンカチで顔を覆いながら、菊池は再びそれらを綺麗に払った。
これこそが、創業半世紀の老舗、『晩秋堂』の主人である菊池春樹の日課だ。
とは言っても、この店も東京の、しかもさびれた古本屋に過ぎないのだ。
繁華街などには大手企業の書店が立ち並び、かつての客もそこへ全て流れてしまっている。
そのような書店は本はもちろんのこと、CD、ゲームソフト、さらには携帯電話なども取り扱っており、とても一商店街の、晩秋堂のような店などが太刀打ちできるような相手ではない。
菊池のような個人経営の店は、そっと、潰れ行くのを待つだけだ。
その証拠に、もう一週間以上も店内に客の姿を見たことはない。そのため朝は本棚の掃除をし、それ以降は店を見はったり、近所の小学生の悪戯をしかりつけたり、時々お茶を飲むなどして一日を過ごすのだ。発注の電話もかかりはしない。
そうして菊池は過ごす。店内の薄暗い、奥の片隅で。
…現実だ。しかし、半世紀守ってきた老舗だ。どんなことがあっても潰してはならない。この町の商店街がシャッター通りになろうとも、この店だけは潰してはならない。そのために、今日も菊池は日課をこなすのだった。
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