「どうぶつ医療クラウド」の構築目指す、ペット医療に関して富士通とTRVAが実証実験
富士通のクラウド・サービスを活用した、「ペット医療」に関する実証実験が始まった。同社と東京城南 地域獣医療推進協会(以下、TRVA)は、ペットの診療情報を地域で共有・活用する実証実験を2011年5月12日に始めた。富士通は今回の実験を通し、人間に対する医療とは保険制度や規制の内容が異なるペット医療の分野で、「どうぶつ医療クラウド」という新たな枠組みを構築したい考え。
最近では、ペットの“家族化”に伴い、「ペット医療に対する飼主の意識が変化している」(TRVA)という。人間と同様に、医療の質の向上に対する要求が強く、例えば、夜間の救急診療や高度な医療設備を必要とする2次診療への対応、地域内の医療連携、診療の透明性などが求められているとする。こうした飼主の要求と同時に、医療現場における効率化も同時に図れる取り組みとして、今回の実証実験に着手した。
今回の実証実験は、TRVAが2011年2月に開設した「夜間救急動物医療センター」および「動物2次診療センター」を拠点とし、同地区の会員病院(かかりつけ病院)と連携しながら進める。具体的には、夜間救急動物医療センターと動物2次診療センターで得られたペットの検査結果や診療記録、処置記録などの診療情報を、富士通が提供するクラウド・サービスを用いて入力・管理・活用することで、大きく以下の五つの内容の実現を目指す。
(1)診療、医療事務の効率化・迅速化、および獣医師のコア業務への集中
(2)飼主とかかりつけ病院との診療情報の迅速な共有、および総合的な飼主支援
(3)診療情報の電子化による利便性向上
(4)飼主への診療情報の開示による診療の透明性の確保
(5)診療情報の分析による獣医師の医療技術の向上
なお今回の実証実験では、上記の情報の流れとは逆に、かかりつけ病院で得たペットの診療情報をクラウド上で管理する試みは実施しないという。
将来的には、クラウド上に蓄積されたペットの診療情報の集計や分析により、動物病院が必要とする「疾病分析」や「予防分析」、「流行症状分析」、「医療ノウハウ」などの統計情報を得たい考え。しかし、こうしたデータ・マイニングにはデータの母数や時間が必要で、「数年は掛かる」(富士通)とする。