現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 社説

社説

朝日新聞社説のバックナンバー

 大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去90日分の社説のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。

2012年8月18日(土)付

印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

予算編成―政権の覚悟が見えない

来年度予算編成のスタートとなる概算要求基準が閣議決定された。消費税率を段階的に10%へ上げることを決めたばかりだ。増税への国民の理解を得るには、経済の活性化を促しつつ、[記事全文]

大阪教研集会―市教委は判断を改めよ

組合への便宜供与になるので学校は貸せません――。大阪市教職員組合(大阪市教組)が年に1度の教育研究集会を開くため市立小学校を借りようと申請したら、市教育委員会が不許可と[記事全文]

予算編成―政権の覚悟が見えない

 来年度予算編成のスタートとなる概算要求基準が閣議決定された。

 消費税率を段階的に10%へ上げることを決めたばかりだ。増税への国民の理解を得るには、経済の活性化を促しつつ、無駄な歳出を思い切って削る予算改革が欠かせない。

 ところが、要求基準にはその覚悟が一向に見えない。

 今回の目玉は、7月に策定した「日本再生戦略」に基づく特別重点要求枠だ。各省庁に一定割合の予算削減を求めつつ、エネルギー・環境、健康、農林漁業の3分野では、合わせて最大4兆円の要求を認め、査定でメリハリをつけるという。

 民主党政権は、これまでの予算編成でも「元気な日本復活」などの特別枠を設けてきたが、省庁が既存予算を様々な理屈をつけて紛れ込ませ、予算削減の抜け道になってきた。こうした失敗をどう防ぐのか、肝心な点があいまいなままだ。

 前年度から10%減とされた公共事業にも抜け道がある。

 一般会計とは別建てで、上限なく要求できる大震災復興特別会計である。今年度予算にも昨年度の補正予算にも、被災地の再建とは直接関係のない事業が入っている。

 民主、自民、公明3党は「防災」を旗印に公共事業の拡充を求めており、「復興」「防災」の拡大解釈が心配だ。

 一般会計の3割を占め、最大の支出項目である社会保障費は「聖域視せず、最大限の効率化を図る」と明記した。社会保障も例外にしないのは当然だ。

 ただ、生活保護の見直しを掲げる一方、70〜74歳の医療費の窓口負担を今の1割から本来の2割に戻すことについては先送りした。選挙で反発を受けそうな分野を避け、削りやすいところだけを削る姿勢では効果が薄い。必要な予算まで減らすことにもなりかねない。

 予算全体を見渡せば、借金まみれの構造が来年度も続くことになる。新たな国債発行額の目標は今年度並みの「44兆円以下」で、国債費(過去に発行した国債の元利払い費)の2倍程度となりそうだ。つまり、返した借金の倍以上を新たに借金する異常な姿である。

 政府の試算によると、基礎的な財政収支は、消費税率を2015年に10%に上げても、年に15兆〜16兆円の赤字が残る。

 増税だけでは、財政は安定しない。民主党政権は、マニフェストに掲げた予算の全面組み替え・財源捻出が果たせていないことを、どれほど自覚しているのだろうか。

検索フォーム

大阪教研集会―市教委は判断を改めよ

 組合への便宜供与になるので学校は貸せません――。

 大阪市教職員組合(大阪市教組)が年に1度の教育研究集会を開くため市立小学校を借りようと申請したら、市教育委員会が不許可とした。労使関係に関する条例で、組合への便宜供与を禁じているという理由だ。

 市教組は約40年前から学校で教研集会を開いてきた。

 公立校の先生ら約300人が集まり、授業の実践例や研究内容をやりとりする。昨年は性同一性障害の生徒と向き合った先生の報告や、障害児教育などが紹介された。

 組合の集会といっても目的は先生の自主研修である。組合員以外の先生も参加でき、現に非組合員の人も参加している。

 条例は「適正かつ健全な労使関係の確保」が目的だ。他の先生の取り組みを知り、日々の教育に生かす。こうした集会は、市が一線を画そうとする組合活動とは違うと解釈すべきだ。

 市教委は集会の内容に向き合い、判断を改めてほしい。

 条例は、職員の政治的行為制限条例とともに今月施行された。労使関係の厳格化をめざす橋下徹市長が提案し、大阪維新の会などの賛成で成立した。

 大阪市では昨年の市長選で、職員が選挙ビラを配っていたことなどが発覚して、第三者調査チームが不適切な活動の事例を調べた。

 人事への組合の関与や、事務所の格安貸与などが問題化したが、研究会のような仕事のスキルを伸ばす集会に部屋を提供することは問われていない。

 市は区民センターを有料で借りることは認めるという。だが音楽室や理科室が必要な発表もある。何より、子どもの教育を考える先生の集会を学校で開くことに何の問題があるだろう。

 約40年間、市教委が学校を提供してきたのも、その意義を認めていたからではないか。

 多様な教え方を報告しあい、先生が研鑽(けんさん)を積むことはむしろ奨励すべきことである。

 かつては広島県呉市と教職員組合との間で、教研集会の会場に公立学校を使うことの可否が法廷で争われた。最高裁は使用目的は相当として、06年に呉市の敗訴が確定した。

 判決は教研集会について述べている。「教師や学校単位の研究や取り組みの成果が討議され、結果が教育現場に還元される。教員らによる自主的研修としての側面もある」

 先生たちが身につけた力を生かすためには、組合の方も、集会が教育力の向上に結びついているか自己点検してほしい。

検索フォーム

PR情報

朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介
海猿×朝日新聞デジタル