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【社説】

尖閣・強制送還 外交力をもっと高めよ

 尖閣諸島に不法上陸した香港の活動家らは逮捕、強制送還された。法に則(のっと)った政府の対応は適切だった。領有権を主張する中国との摩擦を減らすには、外交力をもっと高めることが肝心だ。

 政府が、不法上陸した活動家らを逮捕したのは、「尖閣は固有の領土」と主張する日本政府の毅然(きぜん)たる姿勢を、はっきり示したものといえる。

 二〇一〇年に海上保安庁の巡視船に衝突した漁船の中国人船長を逮捕、送検したことに中国は激しく反発した。公務執行妨害などがなければ、今回、強制送還したのは冷静な政治判断といえる。

 肝心なのは、日本が実効支配する尖閣をめぐり、緊張の海にしないような日中関係を築く外交の力である。これが、民主党政権には決定的に欠けていた。

 わが国は四方を海に囲まれている。尖閣だけでなく、竹島や北方領土などを守る強い決意は常に明確に示すべきだ。

 その上で、紛争のもとになりかねない領土問題を、複雑化させない絶えざる努力が必要だ。尖閣では日中のパイプを太く、信頼できるものにできるかが肝要である。それが外交の力を裏打ちする。

 民主党は、自民党外交を「対米追随」と批判。政権の座について「東アジア重視」の旗を掲げたが、その場しのぎの日中外交だったと批判されても仕方がない。

 戦前、カミソリ大臣といわれ、「蹇々録(けんけんろく)」を著した陸奥宗光外相は、政治家は「机上の空論をもてあそぶ人間ではない」と言った。旗を掲げるだけでなく、日中間のトゲを大事に至る前に抜けるような人脈を育てることが急務だ。

 中国は、日本政府の尖閣国有化方針に反発を強めていた。中国政府の意を受け、香港当局が抗議船の出港を容認した可能性がある。一方、中国は北京での抗議デモが拡大しないよう抑えこんだ。

 秋の指導部交代を前に、反日世論にも目配りしながら、国内安定を第一に考えたからであろう。

 〇四年の強行上陸と逮捕の際には、北京で日の丸が燃やされた。中国政府はこれを容認することで「憤慨を表明」した。領土問題の対応ですら、中国の国内事情に左右される危険性を、日本側は胸に刻むべきであろう。

 今年は国交正常化四十周年にあたり、中国は抑制的な対応に努力するだろう。だが、新指導部が始動する来年以降は不透明だ。長期的な、外交の力が求められる。

 

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