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尖閣上陸問題 あくまで平和的解決を2012年8月17日  このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録

 香港の活動家らの乗った船が日本の領海に侵入し、15日午後、尖閣諸島の魚釣島に到着、沖縄県警と第11管区海上保安本部は上陸した7人を含む14人を入管難民法違反容疑で逮捕した。14人は取り調べや検証結果を踏まえ17日夕までに強制送還か送検かの判断が行われるが、政府は強制送還の方向で調整しているという。今回の問題について、政府は厳重に抗議しつつも、平和的な解決策を貫いてもらいたい。
 2004年3月に中国人活動家7人が不法上陸した際は、県警が入国管理局に身柄を引き渡し、強制送還した。10年9月に尖閣の周辺海域で海保の巡視船に漁船が衝突した際は、海保が公務執行妨害容疑で中国人船長を逮捕、送検。那覇地検は処分保留で釈放、強制送還した。
 04年の事件で県警は徹底捜査の意欲を見せたが、日中関係への影響を懸念した当時の自民・小泉政権は方針転換。政治主導で送検見送りを決め、入管難民法に基づき全員を強制送還した。
 日本の法令にのっとり、厳正に対処すべきだという声もあるが、両国の領土ナショナリズムをことさら刺激しないよう配慮も必要だ。与野党に「弱腰外交」を批判し、毅然(きぜん)とした態度を示すべきだとする向きがある。ただ、ここで過剰に反応し、日中関係が一触即発の事態に発展することは避けねばならない。政府には粛々とした対応を求めたい。
 今回の上陸について、尖閣列島戦時遭難者遺族会の慶田城用武会長は「遺族が求めるのは尖閣諸島が平穏であること。日中が互いに主張をエスカレートさせ、変な方向に行ってしまう気がしている。外交で平和裏に解決してほしい」と語った。日中関係をこれ以上悪化させないでほしい、という率直な声で傾聴に値する。
 日中両政府は、これまで尖閣諸島の問題を事実上棚上げしてきた。ここへきて、それぞれの主張をエスカレートさせるのは外交の失敗と言えよう。外務省は事態の沈静化に努める一方、見解の相違を埋めていけるような外交戦略を練り直すべきだ。
 尖閣問題をこじらせて、日中が武力衝突する事態は絶対にあってはならない。場合によっては国際社会にも見える形で正々堂々と外交交渉に乗り出し、領有権をあらためて主張することも、選択肢として検討する時期ではないか。


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