社説:尖閣諸島と竹島 冷静かつ賢明な対処を
毎日新聞 2012年08月18日 02時32分
領土をめぐる摩擦で中国、韓国との関係がきしんでいる。
一連の事態を受けた政府は、領土保全という主権国家の原理原則に沿って、必要な措置を着実に実行に移していけばいい。その一方、感情的対立が高じて隣国との関係が決定的に悪化することのないよう、冷静な対応も必要だ。当面の事態を沈静化させるとともに、将来にわたって外交懸案化しないよう問題を制御するには、何をすべきか。それを考えて行動することが、それぞれの国の政治家の重い責務である。
政府は、沖縄県石垣市の尖閣諸島に上陸した香港の活動家らを逮捕したあと、強制送還処分とした。国内法にのっとった迅速な措置であり、日中関係を混乱させないためにも賢明な判断だと言えよう。
また、李明博(イ・ミョンバク)・韓国大統領の竹島(韓国名・独島)上陸を受け、領有権の問題を、国際司法裁判所(ICJ)に提訴する方針も決めた。国際社会に日本の主張の正当性を訴えることで、韓国の今後の動きをけん制する狙いもあるだろう。
強制送還も、今回の事態を踏まえたICJへの提訴も、主権国家として妥当な対応だ。今後は、尖閣諸島と竹島をめぐる摩擦が再燃しない態勢づくりが重要になる。
尖閣諸島については、領海の警備を一層強化すべきだ。上陸した不法入国者を海上保安庁の職員が逮捕できるようにする法改正案が今、国会で審議中だが、こうした法整備を淡々と進める必要がある。