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2011 年 11 月 4 日
第73回「内部被曝⑪ 本コラム欄を閲覧した方から寄せられる貴重な感想‐再臨界あった?」

 今回は、このコラム欄のビジターがどのような印象を受けたのか、さまざまな感想が寄せられる中で、福島県須賀川市出身のT大学1年生、渡辺光さんからの一文を紹介させて頂こう。同市は今も空間線量1マイクロシーベルト/時前後、土壌からは1kgあたり最大2,200ベクレルの放射性セシウム汚染が記録されている場所である。

 私は、福島県の出身である。3月11日、郡山市の隣にある須賀川市の実家に帰っていて、そこで地震にあった。その後、交通機関の乱れなどもあり、3月末まで実家に居たが、かなりの量を被曝したと思う。

 東京に戻ってきても、原子力や放射能に関する情報収集は続けた。東京では、周りの人が福島や放射能について、あまりにも関心がないことに驚いた。

 今回の一件で、原子力や放射能に関する勉強はしたので、大方の事はしっているつもりだったが「セシウムが見つかれば、その約半量のストロンチウムが存在する」という先読みコラム『第64回「内部被曝② 外部被曝と決定的に異なる-セシウムあらば必ずストロンチウム(検出困難)あり』が初めて聞く話だったので、とても衝撃的だった。

 情報収集の中で私が見落としたかもしれないが、どの媒体にもセシウムがあれば必ずストロンチウムがあると書かれたものはなかったように思う。前述の先読みコラムの記事にもあったように、ストロンチウムの検出は難しいという背景もあるだろうが、セシウムの検出とストロンチウム検出は別々に発表されていたので、完全に別物だと考えていた。私のように、今でも完全に別物として考えている人は多いのではないだろうか。

 10月12日の産経新聞に、横浜で初めてストロンチウムが検出されたという記事が載ったが、今までの事を踏まえると当たり前の事だとわかる。この記事では「文科省の発表によると、放射線セシウム137の検出される堆積物には、ストロンチウムが微量だが一定割合で含まれる。」と書かれているが、かなり過小評価して書いているのではないかと思ってしまった。

 情報は色々と出回っているが、とりあえず大きなところだけ伝えられて、その裏にある小さいけれどもとても大事な情報がいまだに伝わってないんだと実感した。

 現に原子力事故は起きてしまったことなので、今更どうこう言ってもしょうがないし、私自身にもこれからどういった影響が起きるかわからないが、本当の情報を知らせて欲しいと、VECの先読みコラムを読んで思った。それと同時に、このままではチェルノブイリ以上の悲劇がこれからの福島で起きるのではないかと少し不安になった。

 チェルノブイリ以上の悲劇という怖い不安で渡辺さんの話は終わっている。だが、放射線被曝が、空気中からの外部被曝から、食物、飲料などによる内部被曝へとステージが移ってきた現在、食物汚染が改めてクローズアップされてきた。

 さらには、原子炉圧力容器や格納容器の底にたまっている溶融した燃料棒の塊、デブリが不注意な扱いなどによって再び水蒸気爆発、あるいは再臨界事故を起こさないとも限らない。

 再臨界の可能性についてはすでに本欄でも取り上げているが、あり得ない話ではないという証拠が去る11月初めにあった。東電福島第一発電所2号機のデブリがたまっている格納容器から一時的?再臨界に達した可能性を示すキセノン135が検出されているのだ。中性子の検出については不明だが、さらなる進行を防ぐためホウ酸の水溶液が注入されたという。(チェルノブイリ事故の主要因となったキセノン135については別途とり上げる)

 冷温停止の裏にある再臨界のような危険性は、まったく消えているわけではない。チェルノブイリ以上の悲劇の芽が全くないとは、言い切れないのである。

(多摩大学名誉教授 那野比古)