「演劇は現実から自由な世界を創造することができるため、存在価値が無限です。韓日関係が政治的にふさがっている時も、演劇を通じて真心のこもった交流が続くと信じています。」
今年で創団70周年を迎える劇団文化座の佐々木愛代表(69)は、昨年11月にソウル・鍾路区寬勳洞で「韓日の観客皆が共感できるような作品を作り、両国間に心の橋をかけたい」と話した。文化座は、今月10‐12日、大学路で初の韓国公演『小樽の女たち(原題:てけれっつのぱ)』(後援:韓国演劇協会)を成功裏に終えた。『小樽の女たち』は明治維新直後の北海道の小さな店を舞台に、庶民の夢と希望を描いた作品だ。この日、同席した俳優のパク・チョンジャさんは、「基本が生きている文化座の公演を見て、演劇の正統性を守るということがどれほど重要なことかを改めて考えさせられた」と話した。
文化座は日本で2番目に古い劇団で、1947年と1973年に日本で『春香伝』(韓国の古典芸能の作品)の公演を行ったという特別な縁がある。初演は柳致眞(ユ・チジン)氏(韓国の演劇家)が脚色し、佐々木代表の父で劇団の創設者でもある故・佐々木隆氏が演出を手掛けた。1973年の『春香伝』には佐々木代表が春香役、母親の故・鈴木光枝がウォルメ役で出演した。「初演当時、日本で韓国の戯曲を演じるのは簡単なことではありませんでした。父は韓国の方々に謝罪する気持ちで屈することなく推進したと聞いています」
昨年、デビュー50周年を迎えた女優としても活動する佐々木代表は、「韓国の演劇の中で2年前に観覧した『壁の中の妖精』が最も印象深かった」と話した。特に一人多役で登場する俳優、キム・ソンニョ氏(現国立創劇団芸術監督)を見て「演技は精神力で行うものだという事実を改めて知った。原作が日本の作品なので何度か見ているが、キム・ソンニョさんの演技で見てより強く共感できた。公演後に懇親会があったが、自分がとても小さくなったような気持ちになり参加できなかった」と話した。
佐々木代表は、「生活が苦しいため、昼間は仕事をして夜間学校に通う人たちや、国を離れて戻れずにいる人たちのように、影で努力する人たちのための演劇を続けて行きたい」と話した。