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下痢などの症状を引き起こすとされ、塩素消毒が効かない原虫「クリプトスポリジウム」が昨年度以降、少なくとも県内6カ所の水道施設の原水で検出されたことが16日、県環境部のまとめで分かった。2000年10月を最後に県内で検出されたとの報告はなかったが、ここに来て急増。いずれも明確な健康被害は確認されていないが、原因が特定できず、水道事業者は対策に追われている。
同部によると、昨年度からことし7月までに検出したと報告があったのは、伊那市の3施設、上伊那郡箕輪町の1施設、駒ケ根市の1施設、北佐久郡御代田町にある佐久水道企業団(佐久市)の1施設。クリプトスポリジウムは人や家畜などのふん便が汚染源だが、6施設はいずれも山間部にあり、上流に民家や家畜の飼育施設はないという。
厚生労働省の指針では、浄化する前の原水で検出されても、浄化処理で水の濁り(濁度)を一定基準以下にするか、紫外線照射や膜処理で原虫の感染力を失わせたり、取り除いたりすれば飲用にできる。6施設のうち、伊那市の2施設は濁度の基準を満たして給水を再開。箕輪町と同企業団の各1施設は代替水源に切り替え、駒ケ根市の1施設は膜処理で対応している。
残る伊那市長谷の1施設は、塩素消毒以外の浄化設備がないため現在は飲用を停止している。水の供給先である別荘地の約10戸には、要望に応じて市がポリタンクで飲用水を運んでいるという。
厚労省によると、国内では1996年に埼玉県越生町の水道水に含まれたクリプトスポリジウムを原因とする集団食中毒が発生している。同省はクリプトスポリジウムを水道水の水質基準50項目に含めていないが、クリプトスポリジウムがいるかどうかの指標となる大腸菌の検査や、クリプトスポリジウムが混入する恐れがある場合の施設整備といった対策の強化を水道事業者に通知している。
県環境部によると、県内では08年度以降、県企業局と長野市、松本市など5市町が国の補助を受けてクリプトスポリジウム対策の設備を一部に導入。ただ、未対策の水道事業者も多いとみられ、同部は「担当者の研修会などで検出事例を紹介したり、濁度管理や対策施設導入を呼び掛けたりしたい」としている。