外国特派員協会(FCCJ)のボード&マネージメント批判ブログへの警告騒動は、昨日の一部削除と陳謝をしたが、あれで収まったとは思えない。腰巾着日本人スタッフが今はブログを一生懸命翻訳しているのだろう。時間がかかる。いつだって即刻反応があった試しが無いが、ここ暫くは沈黙を守っておこう。
東野圭吾の「あの頃の誰か」(光文社文庫:2011年3月6刷)は東野の90年代前半に書いた短編が8編収められている。だがいつもの推理やミステリーの切れ味は無い。どちらかと言えば星新一的ショートショートに似た味わいの掌編だ。
あとがきで東野は「言い訳」をしている。「ここに収められた作品は、過去に何らかの形で発表されながらどの短編集にも収録されなかったものばかりです(中略)どれもこれも「わけあり物件」なのです」。「掲載誌を出版していた会社がつぶれたため(中略)20年が経ちました。今読んでみると、もはや時代小説です。これはこれで面白いかもしらないと思い、今回収録することにしました。」
その言い訳を聞いても出来は今一つ。東野が書いたとは思えない駄作ばかりだ。特に多重人格を扱った「レイコと玲子」なぞ映画で沢山取り上げられているし、初めから分かってしまう。広末涼子と役所広司が主演した映画の原作の「秘密」は好きな作品だが、そのネタの「さようなら『お父さん』」がある。バス事故でなく飛行機事故の違いがあるが成程掌編でも面白い。これな例外で「二十年目の約束」など何処がツボなのか少しも興奮しない。やはり大作家でも初期はガラクタを輩出していたことが分かる。
試写で見逃した「画皮」をFCCJの電気ビル横のスバル座に見に出かけた。14時の回はシニアを中心に3割程の入りか。総ての劇場が午前中の回を除けば指定席になっているがこの小屋は自由席で小さなチケットは半券を入り口でモギル方式。エレベーターが無いので下から3階分階段を登るのがシンドイ。
タイトルの「画皮」とは、妖怪が人間に化ける時に使う人間の絵が描いてある皮のこと。映画の中でも妖艶の美女が顔をぺロリと剥ぐ、と下は黒いウジ虫が顔の形で這いずっている。
原作は中国の清代に書かれた短編小説集「聊斎志異」。聊斎の書いた怪異譚と言う意味で、全12巻496の短編からなる。この「画皮」は特に有名でTVドラマに何度もとりあげられ中国人は皆知っている話だそうだ。
秦漢時代の古代中国。辺境の町を盗賊の襲撃を防ぐため将軍・王生(チェン・クン)は守備隊を率いて盗賊征伐の任務についていた。盗賊の捕虜になっていたひとりの女を見つけ連れ戻る。若くて美しい女は小唯(ジョウ・シュン)と言い、盗賊団に誘拐されていた彼女は、もはや頼るべき身寄りもない。王生は妻・佩蓉(ヴィッキー・チャオ)と相談して、彼女を家族の一員として屋敷に住まわせる。
平穏な日が続くが突如、王生の街で毎夜殺人事件が起きる。被害者は一様に心臓をえぐり取られているのだ。王生の警備隊は犯人探しに躍起になるが犯人は杳として分からない。実は殺人者は人間に化けた砂漠に棲むトカゲの妖魔・小易(チー・ユーウー)で、ら愛する小唯の従順な下僕となり心臓を奪って彼女に捧げていた。小箱には心臓が整然と詰っている。小唯はその美貌を保つため、人間の心臓を食べる必要があったのだ。そんな不穏な状況下で数年前から姿を消していた守備隊の前隊長パンヨン(ドニー・イェン)が戻ってくる。王生の妻・佩蓉から多発する事件の手紙を受け取っていた。同じ頃若い女降魔師、夏冰(スン・リー)も妖魔の気配を察知して街にやって来ていた。宿について酒も食べものも売れ切れで無いと断られるが手酌で御馳走を食べていた夏冰に誘われ仲良くなるシーンが良い。彼女は言葉も態度も男勝りでパンヨンも直ぐに気に入る。王生夫妻は強い味方を得て妖怪たちとの対決が始まるかと期待を持たせる。
ところが小易は必死に戦うが肝心の小唯が王生に惚れているので迫力が無い。妖怪対人間の格闘シーンは淡々と進むが単発的な戦いだ。むしろこの映画はアクショナーでは無くロマンティック劇だ。登場人物は皆美男美女。特にジョウ・シュンとヴィッキー・チャオは印象に残る美しさだ。黒髪が色白を引き立たせ目は大きくパッチリと見開かれ、この二人を見ているだけで楽しい。人間の心臓を食らいながら千年も生きてきた妖狐がどうやって将軍の妻の座を奪い取るかというサスペンスを期待しているのに、王生も妖怪も遠慮して手を出さない。互いに倫理観に溢れていて映画は盛り上がらない。映画の冒頭荒くれの強盗団を退治した王生が街に戻ってから全く存在感が無くなる。ヒーロー欠如でスポットは妖怪の小易に当たる。だが彼女は悪い妖怪なのだ。所々で白い子狐が登場して可愛い。
音楽が良いね。「冬のソナタ」風のピアノの美しいメロディが流れ、エンドクレジットの女声が情緒たっぷりに歌い上げる。ゴードン・チャン監督はベテランらしく手慣れた演出で誰も悪者がいないロマンス劇にしてムードたっぷりに観客を酔わせる。
有楽町スバル座で公開中
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遂にお白洲へ召喚状です。会長名で「FCCJ役員、会員、従業員への名誉を傷つける行為の審理」だそうだ。ファッシズム極まれり。
2012/8/9(木) 午後 9:34 [ kj3*96*12 ]