野生では絶滅の危険が増大しているフンボルトペンギンが、国内の水族館や動物園で増え続けている。繁殖技術に加えて日本の気候などが合ったとみられ、飼育数は40年ほど前の4倍以上の1700羽(昨年末)に迫る勢いだ。愛知県の施設では飼育スペースが過密になり、神戸市の須磨海浜水族園に一部が“引っ越し”するなどぜいたくな悩みも浮上している。(紺野大樹)
日本動物園水族館協会(東京)加盟施設で飼育されているフンボルトペンギンは、1970年に54施設391羽だったが、90年には75施設765羽とほぼ倍増。2011年は69施設1658羽に達した。30年には3700羽を超えるという試算もある。
愛知県にある南知多ビーチランドでは、32年前の開園当初は4羽しかいなかったが、繁殖を重ねるなどして現在は約90羽に。15年を目標に飼育エリアを拡大する予定だが、現状では手狭なため7月、12羽を須磨海浜水族園に預けた。
フンボルトペンギンの血統登録を管理している葛西臨海水族園(東京)によると、野生のフンボルトペンギンは天候が悪くなると卵を抱くのをやめるなど繁殖は不安定。日本では気候が飼育に向いているほか、人工ふ化などの技術も進み、繁殖を後押ししているという。
ただ同園の担当者は「現在の国内の施設では2千羽ぐらいが飼育の限界。このまま増え続けると、近親交配が進み、繁殖率の低下や死亡率の増加を招く恐れもある」と指摘する。
一方、須磨海浜水族園では初めての飼育。12羽は、いずれもまだ繁殖に参加していない3〜5歳の雄と雌で、新規ペアリングまでの行動も研究するという。同園では7月にペンギン館がリニューアルオープンしたばかりで、同園の長谷川修平副園長は「これまでのマゼランペンギンに加えて、フンボルトも観察できる。須磨でも繁殖を成功させたい」と話している。
フンボルトペンギン ペルーからチリにかけての海岸や沖合の島々に生息。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、絶滅の危険が増大している「絶滅危惧2類」に指定されている。岩の隙間などにトンネル状の巣を作り、産卵や子育てをする。全長約70センチ。胸の上側に黒い羽毛の帯が1本あるのが特徴。ペンギンでは日本で最も多く飼育されている。
(2012/08/17 13:36)
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