【武田修宏の直言】
W杯アジア最終予選イラク戦(9月11日、埼玉)を控えるなか、キリンチャレンジカップ(15日、札幌ドーム)、ベネズエラ戦に臨んだ今回の日本代表ではFW前田遼一(30=磐田)に注目した。この試合でワントップを務めた前田は、ポスト役としてボールをキープ。攻撃の起点になるとともに、チャンスの際にはDFがひしめくゴール前からあえて引くことで、味方が走り込めるスペースをつくり出した。
前田のポジション取りや動きがあったからこそ、本田、香川、遠藤らが積極的にゴール前へ飛び出してシュートを狙えた。2列目からの飛び出しはDFがマークしにくいものになるだけに、連動できたのは良かった。
日本の2列目には本田を筆頭に決定力の高い選手が揃っており、選手の特徴を生かした戦い方だろう。また左サイドの香川は自身にマークが集まるため、あえて中央に切り込むことが多かった。これによりマークを引き付け、左サイドバックの長友がオーバーラップしやすい環境をつくった。
ホームで勝てなかったのは残念なこと。ただザッケローニ監督は個人技の高いベネズエラ相手に、試合途中から本田をワントップで起用。DF槙野を右サイドバックで送り出すなど、最終予選本番に向けたいくつかのテストを行った。そういう意味では強化試合の目的は果たせたはずだ。
☆武田修宏:たけだ のぶひろ=1967年5月10日生まれ。静岡県出身。幼少期から「天才少年」と呼ばれたストライカー。名門・清水東(静岡)から86年に読売クラブ(現東京Ⅴ)入り。ルーキーながら11得点を上げ、リーグⅤに貢献し、MVPにも選出された。Jリーグ発足後はV川崎や磐田、京都、千葉などでプレー。00年には南米パラグアイのルケーニョに移籍。01年に東京Ⅴに復帰し、同シーズンで現役引退した。
Jリーグ通算は94得点。JSL時代も含めれば152得点を挙げた。87年に日本代表に選出。93年アメリカW杯アジア最終予選でドーハの悲劇を経験した。
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