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 シアノバクテリア(藍藻)は、真正細菌であり、生物の進化の歴史の中で、初めて酸素の発生を伴う光合成の能力を獲得した生物である。また、シアノバクテリアが10数億年前に真核生物に細胞内共生したことが葉緑体の起源であると考えられている。

 地球上に酸素という恩恵をもたらした一方で、シアノバクテリアには今だ未知の性質を持っており、極めて毒性が強いという。
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ソース:The Problem of Cyanobacteria and Toxic Lakes
原文翻訳:konohazuku

 この奇妙な微生物は、植物のように光合成を行って酸素を作り出すことができる。単細胞で浮遊するもの、少数細胞の集団を作るもの、糸状に細胞が並んだ構造を持つものなどがある。また、一部のものは寒天質に包まれて肉眼的な集団を形成する。

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 そのほとんどは、ナメクジのように粘液を出し滑るようにして前へ動くが、このバクテリアの中には、空気の入った気泡を膨らませたり、へこませたりして、浮力を変えて移動する奇妙な動き方をするものもいる。

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 シアノバクテリアはかなり頑丈だ。紫外線、乾燥、高塩分、高温など、多くの過酷な環境でも長時間を生き延びることができ、わたしたちの生きる環境の中で重要な役割を担うこともあり、極寒や砂漠のような地域での窒素固定菌としても機能する。

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 ここまでは、この奇妙な微生物はそれほど害はないように思われる。しかし、人間が肥料やゴミを流したりして湖を汚すと、湖水が栄養過多になりすぎる富栄養化状態になる。貪欲なシアノバクテリアにとって繁殖にうってつけの環境をこしらえてしまうのだ。

 シアノバクテリアは生空気中、水中、土中すべてから積極的にカリウムを摂取する。カリウムのみならず、科学的性質が酷似しているセシウムまでをも、うっかり摂取して、体内に蓄積し繁殖する性質もあるという。

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 気温が上がると、このバクテリアは水面全体に広がり、有害なグリーンに変えてしまう。シアノバクテリアの分厚い絨毯が水面を覆うと、太陽光を遮って、水中の酸素が減り、植物や動物が死んでしまう。さらに、このバクテリアは毒素を出して、湖の生物を殺すだけでなく、人間にも影響を与える。

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 このバクテリアはその時の負荷によって違う毒素を生産し、皮膚、呼吸神経系、肝臓など、それぞれ体の違った部位に影響を与える。出血、嘔吐、癌を引き起こし、死に至ることもある。そのレベルは、日々劇的に変わるので、その毒性を見極めるのが難しい。

 人間はこのバクテリアの毒素で直接死ぬことはないが、汚染された湖の水を飲んだり、泳いだりすると、深刻な病気になる可能性はある。

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 シアノバクテリアに汚染された湖を浄化するのは難しい。一番いい対策は、湖にごみを廃棄して栄養を与えないことだ。栄養分が枯渇して、いずれはバクテリアは死んでいくが、それには長い年月がかかることだろう。


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