住民出資の「百貨店」が閉店 京丹後の常吉
京都府京丹後市大宮町常吉地区の住民が出資する食料・雑貨品店「常吉村営百貨店」が19日に閉店する。社長の大木満和さん(65)の健康上の問題が理由だが、JA支所撤退後に地域経済とコミュニティーの拠点として設立され全国的にも注目された施設が、惜しまれながら15年の歴史に幕を閉じる。
同百貨店は1997年、地区唯一の生活拠点だったJA支所が廃止されたのに伴い、住民33人が計350万円を出資し、支所を改装して開店した。食料や日用品の販売に加え、宅配便やクリーニングも請け負い、高齢者の買い物や過疎地区での暮らしを支えてきた。
一方で、経営は厳しく、開業から10年目には約1千万円の負債を抱えた。一時は閉店を決めたが、地区の老婦人から「やめられたら生きていかれへん」との手紙をもらい事業継続を決意。大木さんが以降4年半を無給で働き、在庫調整や経費削減などで、借金は全て返済したという。
ところが、昨年末に大木さんが体調を崩して入院。治療に専念したいという思いと、負債を返済していることから7月に撤退を決めた。今月1日には出資者の了承も得て、19日の閉店が決まった。
常吉地区は約500人が暮らし、高齢化率は約35%。最も近いスーパーまで自転車で約30分かかる。また同百貨店は地域の催しや都会からの体験ツアーの拠点でもあった。
大木さんは「悩んだ末の決断。やめないでという声もあるが、一度閉店して、また新しい形でスタートできればと考えている」と話す。
【 2012年08月16日 10時18分 】