- [PR]
政治
【主張】靖国と野田内閣 首相の責務放棄は残念だ
67回目の終戦の日を迎え、今年も全国から多くの遺族や国民が東京・九段の靖国神社を訪れた。民主党政権になってから3度目の8月15日だが、野田佳彦首相も菅直人前首相と同様、靖国神社に参拝しなかった。
野田首相は靖国神社をよく理解する政治家だけに、残念である。
野田氏は野党時代の平成17年10月、「4回に及ぶ(戦犯釈放を求める)国会決議などで、A・B・C級すべての戦犯の名誉は回復されている」「A級戦犯合祀(ごうし)を理由に首相の靖国参拝に反対する論理は破綻している」という趣旨の質問主意書を当時の小泉純一郎内閣に出した。
靖国神社に東条英機元首相らいわゆる「A級戦犯」が祀(まつ)られていることの正当性を訴え、小泉首相の靖国参拝を間接的に応援するような質問主意書だった。
しかし、野田首相は今月10日の会見で、「昨年9月の内閣発足時に首相、閣僚については公式参拝を自粛する方針を決めた。この方針にのっとって私自身も、その他の閣僚も従っていただけると考えている」と閣僚全員の参拝自粛を求めた。
繰り返すまでもないが、首相が国民を代表して戦死者の霊に哀悼の意を捧(ささ)げることは、国を守るという観点からも、重要な国家指導者の責務である。
首相の靖国参拝は小泉首相が平成18年8月15日に参拝して以降、途絶えているが、野田首相はこの責務を自覚してほしかった。
ただ、野田内閣の閣僚で、松原仁拉致問題担当相と羽田雄一郎国土交通相の2人が靖国神社に参拝した。民主党政権下で、閣僚の靖国参拝は初めてだ。
松原氏は「今回は私的な参拝だ。一人の日本人として自分の信条に従って行動した」と述べ、「臣 松原仁」と記帳したことを明らかにした。羽田氏は超党派の「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」副会長として、他の所属議員54人とともに参拝した。羽田氏は「今の日本の平和は、先人のみなさまの尊い命の上にあると考えている」と話した。
両閣僚の行動を評価したい。
今年の終戦の日の靖国神社も、年老いた遺族や戦友にまじって、学生や若いカップルの姿が目立った。国民が自然な気持ちで先祖の戦死者を慰霊する静かな靖国の杜(もり)であり続けてほしい。
- [PR]
- [PR]