2010年 松下政経塾 100km 行軍
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◆西村 公一(岡山政経塾 7期生)
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松下政経塾100km行軍レポート
『100キロ行軍、ありがとう』
ありがとう。
米国国務省のダレル・ジェンクス氏と岡山政経塾生四名が心を一つにして力を合わせ、事故なく怪我なく100キロを完歩できたことに深く感謝しています。口ではうまく伝えることができなかった思いを、このレポートに綴ってみたいと思います。
サポーターの皆さん、ありがとう
二十四時間に及ぶ時間を、いつも明るく優しくサポートしていただいた松下政経塾、岡山政経塾の皆さん、本当にありがとうございました。私も岡山の地でサポートをした経験があるので、皆さまのご苦労は大変なものであったことと推察いたします。
長い道のりを歩くとき、サポーターの皆さんのかけ声や優しい気遣いが心のエネルギーになりました。あと〜キロ歩けばサポーターが待ってくれていると考えるだけで重い足を前に進めることができました。また、これほどのサポートを受けながら完歩できないようでは申し訳ない、何が何でも歩き抜くぞと心を奮い立たせることもできました。
このご恩は忘れることなく心に刻ませていただきます。
石井真人さん、千葉修平さん、ありがとう。 100キロ行軍前半の50キロは松下政経塾の石井さんが、後半の50キロは千葉さんが私たちのチームに伴歩してくださいました。
お二人とも不要なことは一切口にすることなく、最後尾を歩かれながら淡々と私たちの歩く姿を見守ってくださいました。お二人のおかげで安心して心強く前に進むことができました。またゴールしたときは満面の笑顔で祝福していただいたことも金の思い出になっています。
石井さん、千葉さんと歩かせていただいて私は幸せでした。ありがとうございました。
ダレル・ジェンクスさん、ありがとう 親愛なるジェンクスさん、岡山政経塾生はジェンクスさんとは初対面で100キロ行軍をご一緒させていただいたので、私たちのペースに合わせていただくことにとてもご苦心をされたことと思います。しかしジェンクスさんは何一つ苦情を言われることなく、最後まで悠然と歩いてくださいました。ジェンクスさんとご一緒できたことで人間の強さ、優しさを学ぶことができました。
また、100キロ行軍の後に、ジェンクスさんがものすごく偉い米国政府の高官であられることを初めて知りました。道中で助平話をしたりして、いろいろと失礼なことがあったと思いますが、どうかお許しください。
この100キロ行軍を機会に、末長く岡山政経塾とのお付き合いをしていただけることを、一塾生として希望いたしております。
ジェンクスさん、本当にありがとうございました。
小林孝一郎さん、ありがとう 小林さんは岡山政経塾生四名のリーダーとして、100キロ行軍参加に必要なあらゆることに、いつも迅速かつ誠実に取り組んでくださいました。時には煩わしいことや大変なこともあったはずです。しかし、あなたはいつも明るい笑顔とプラス思考で私たちの心に希望という明かりを灯し続けてくださいました。
小林さんは来年の岡山県議会議員選挙への出馬を控え、とても多忙であったはずです。しかし、あなたは「忙しい」という言葉を一度も口から吐かれませんでした。練習会にも時間をこじ開けて参加され、一心不乱に歩かれていました。
100キロ行軍の最中には、大きなかけ声でチームの心を一つにしてくださいました。後半には少々お疲れの様子でしたが、何一つ弱音を吐かれることなく、最後までリーダーの風格を漂わせていました。
小林さんと100キロをご一緒できて私は幸せでした。ありがとう。
采女康宏さん、ありがとう 采女さん、あなたが創ってくださった地図のおかげで、私たちのチームは一度も道に迷うことなくゴールにたどり着くことができました。歩いている最中には「そこは左だよ、そこは右だよ」と優しく指示していただき、安心して歩くことができました。たった一度しか下見をしていないのに、あれほどスムーズに歩けたのは采女さんのおかげです。本当にありがとう。
采女さんは練習会にも積極的に参加され、私たちを優しくリードしてくださいました。今年の夏は特に暑く、二か月に及ぶ練習にはとても厳しい環境でしたが、両足に重りをつけて汗だくになりながら歩くあなたの姿に、私は震えるほど感動しました。
采女さん、あなたほど豪快でうまそうにものを食べる人を私は知りません。100キロ行軍の前夜、風呂桶ほどある大盛ラーメン+ライスに食らいつく幸せそうなあなたの顔が今でも目に浮かびます。100キロ行軍が終わり、松下政経塾からカレーライスと豚汁をご馳走になった後、岡山へ帰る新幹線の中で嬉しそうに駅弁を平らげていく姿も微笑ましい限りでした。
しかし采女さん、あなたの心は胃袋よりもずっと大きいことを私は100キロ行軍で知りました。いつもたくさんの優しさをありがとう。感謝しています。
ところで、采女さんは閉会式で、今後100キロ歩行から引退すると宣言されました。しかしどうでしょう、苦痛に喘ぎながら歩き、身も心もボロボロになりながらゴールするチャレンジャーの姿を目にすれば、あなたの中の血が騒ぎ出し、きっとまた歩きたくなるのではないでしょうか。楽しみですね。
高原弘雅さん、ありがとう 高原さん、あなたは誰も見ていないところで自主トレーニングにしっかりと取り組まれていましたね。真っ暗な夜道を歩いていてゲリラ豪雨に襲われ、ずぶ濡れになりながら自宅に帰ったこともあったはずです。本当によくがんばられましたね。
チームの合同練習では積極的に意見提言をしていただき、「一人はすべての人のために、すべての人は一人のために」という高原さんのメッセージがチームに深く浸透していきました。あなたのおかげで岡山政経塾の四名は心が一つになれたのだと感謝しています。
100キロ行軍の後半、高原さんはたくさんの面白い話や怖い話をしてくださいました。今の奥様と思われる方と経験された「ラブホテル恐怖の怪談」は本当に恐ろしかった。重苦しい空気の部屋、誰もいないのに浴室を移動するシャンプー、窓に映る血だらけの女の手。そのような極限の状態でも最後まで目的を遂行した高原さん。夜道を歩くのが嫌になるくらい怖かった。しかしチームの仲間の疲れを紛らわそうと必死に語りかける、あなたの優しい心遣いに私の心は泣いていました。
ゴールまで残り11キロ付近で、高原さんは「折れる!折れる!」とうめきながら、両手で両足の甲を抱え込むようにして歩道に倒れこみました。やばい!疲労骨折でもしたのではないかと私はびっくりしました。しかしあなたは、すばやく靴下の上からがっちりとテーピングをし、這うようにして立ち上がり、再び前進を始めました。あの姿は本当に見事でした。感動しました。しかし痛く、辛く、苦しかったはずです。あなたは弱音を吐きませんでしたが、目から滴り落ちる涙があなたの置かれた状況を悲愴なまでに物語っていました。ゴール直前になったとき、あなたは号泣していました。ゴールした後も「一億円やると言われても、もう二度と100キロは歩かん!」と男泣きする姿に、チームで歩かなければならない松下政経塾100キロ行軍の厳しさを垣間見ることができました。
しかし高原さん、あなたはこれからの人生で、どんなに辛く苦しいことがあっても、最後まで決して諦めなかった100キロ行軍を思い出し、一歩ずつ前に進んでいくことができますよね。私も高原さんに学び、絶対に負けない人生、諦めない人生を歩んでいきます。一緒に歩けて本当によかった。多くの感動をありがとう。
松下政経塾100キロ行軍を未来に生かすために
目的
何事にも目的があるはずです。岡山政経塾の「24時間100キロ歩行」の目的は「24時間内で100キロを無事完歩すること。限界を超え、未知の領域に挑戦し、勇気と精神力を養うこと」と明文化されています。
松下政経塾の100キロ行軍の目的は、特に明文化されたものはなく、本番の前日になって「チームの皆が力を合わせ、事故なく怪我なくゴールすることである」と口頭で教えていただきました。すなわち完歩に要する時間よりもチームワークを重視していることを直前になって知り、急遽、チームの作戦を練り直すことになりました。
目的が明確でないと手段が見つかりません。何事についても目的は何かを問い続けながら手段を考え行動することが大切であることを再認識しました。
ストレッチ(体の準備)
岡山政経塾の100キロ歩行では、全員がそろって入念なストレッチを行ってから歩き始めますが、松下政経塾では自修自得の精神からか、ストレッチをするかしないかは各人の判断に任されている状況でした。
やはり過激な運動を開始するに当たっては、ストレッチをしておかないと先々で肉離れなどの故障につながります。
今回の100キロ行軍を円滑にスタートできたのは、岡山政経塾の小山事務局長のご指示により、事前にチームでストレッチを行ったことが幸いしたのだと考えています。くれぐれも体の準備は忘れないほうがいいようです。
物の準備
100キロという長距離を歩くには物の準備を欠かすことができません。
今回あってよかったと感じたものはハサミと小型の懐中電灯でした。ハサミはテーピングの微調整や新たにテーピングする際にとても便利でした。 懐中電灯は深夜に歩いているとき、前後から迫ってくる車やバイクに、「ここには人がいますよ」と知らせるのに役立ちました。ヘッドライトに加えて懐中電灯を持っておくことを安全面の上でお勧めしたいです。
「備えあれば憂いなし」の100キロ行軍でした。
100キロくん
岡山政経塾第五期生の三宅雅さんが開発してくださった100キロくんのすばらしさは、松下政経塾の皆さまにも大きな感動を与えていました。
100キロくんとは、パソコンや携帯電話を使うことで長距離を歩くチャレンジャーの状態が誰からでもどこからでも瞬時に分かるとともに、メッセージの送受信によってチャレンジャーとその家族や仲間との心の結びつきをリアルタイムで確認できる優れもののことです。
チャレンジャーを送り出した家族や仲間はその安否がとても気になるものです。100キロくんがあれば、飛行機の中にいようと海外にいようとチャレンジャーの安否を瞬時に知ることができ、応援のメッセージを送ることもできます。
今回の松下政経塾100キロ行軍では、多くの皆さまから次から次へと携帯電話に応援メッセージを届けていただき、苦しいときにはチャレンジャーが交代でメッセージを読み合いながら、前へ前へと進んで行きました。
人は苦しいときに言葉によって蘇生できる生きものです。100キロくんは、チャレンジャーやその家族、仲間が手放すことができない岡山政経塾が世に誇ることができるハイテク機器であると感服しました。
三宅さん、100キロくんを開発していただきありがとうございます。また、ご出張中にもかかわらず飛行機内から送っていただいた応援メッセージがチームの歩く力になりました。深く感謝しています。
練習は嘘をつかない
今回の松下政経塾100キロ行軍に備えて、四名のチャレンジャーは八月頭から二ヶ月間に及ぶ練習会を開催しました。ただひたすらに七キロの距離を一時間かけて歩く練習を繰り返しました。中には自主練習でそれ以上の練習に取り組まれた方もいます。四名は忙しいにもかかわらず、実によく練習をしました。仕事の関係で早朝六時三十分や夜十時開始の練習会も多々ありましたが、チャレンジャーの皆さんは何一つ文句を言わずに黙々と練習を繰り返していました。
今回、完歩できたことは、暑い夏に練習を繰り返したことへの幸運の女神からのプレゼントだと信じています。
「練習は嘘をつかない」、「努力した人が成功するとは限らないが、成功した人は必ず努力している」ことを改めて実感できた100キロ行軍でした。
チャレンジ精神
誰でも100キロを歩けと言われれば、それなりに躊躇するものでしょう。しかし岡山政経塾四名のチャレンジャーは勇気を出して参加を決意しました。
中にはこの決意に対して冷ややかな反応を示す方もいたようです。しかし困難にチャレンジしていく精神はとても貴重で美しく、チャレンジしていく中でこそ得ることができるものがあるはずです。
誰でも楽をしたいものです。夜はビールでも飲みながらテレビを見るほうが楽しいに決まっています。しかし、その時間に誰も見ていないところで汗水垂らしながら目標達成のために黙々と歩行練習を繰り返していると、何かしら見えてくるものがありました。それはこれからの自分の人生の貴重な財産になったと信じています。
前向きなチャレンジ精神、言い訳をしないチャレンジ精神をこれからも大切にしていきたいです。
最後に
今回の100キロ行軍では、三浦半島を一周(松下政経塾→鎌倉→逗子→横須賀→観音崎→久里浜→三浦海岸→城ヶ島→横須賀→葉山→逗子→鎌倉→松下政経塾)しましたが、瞼を閉じれば、その時々の光景や皆さんから親切にしていただいたことが鮮やかに蘇ってきます。「100キロ行軍、ありがとう」と一人つぶやく今日この頃です。
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