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宮城代表

2012年8月16日13時9分

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流れ呼んだ一発 仙台育英の5番、要所で本塁打

写真:仙台育英―飯塚 2回表仙台育英無死、早坂は左越え本塁打を放つ=白井伸洋撮影拡大仙台育英―飯塚 2回表仙台育英無死、早坂は左越え本塁打を放つ=白井伸洋撮影

写真:飯塚戦で力投する渡辺=加藤諒撮影拡大飯塚戦で力投する渡辺=加藤諒撮影

写真:仙台育英―飯塚 4回表仙台育英1死三塁、高橋竜のとき、投手西の暴投で三塁走者伊藤が生還=諫山卓弥撮影拡大仙台育英―飯塚 4回表仙台育英1死三塁、高橋竜のとき、投手西の暴投で三塁走者伊藤が生還=諫山卓弥撮影

写真:仙台育英―飯塚 3回表仙台育英1死一、三塁、上林は左中間に適時二塁打を放つ。投手西=竹花徹朗撮影拡大仙台育英―飯塚 3回表仙台育英1死一、三塁、上林は左中間に適時二塁打を放つ。投手西=竹花徹朗撮影

写真:仙台育英―飯塚 4回表仙台育英1死一塁、走者高橋竜は柏木の適時二塁打で生還する。次打者星(7)=諫山卓弥撮影拡大仙台育英―飯塚 4回表仙台育英1死一塁、走者高橋竜は柏木の適時二塁打で生還する。次打者星(7)=諫山卓弥撮影

(仙台育英6―3飯塚)

 マウスピースをはめ、小走りで右打席に向かった。前夜から、狙っていた。

 初回に3点を先取された直後の2回。先頭は、5番の早坂和晋(かずゆき)選手(3年)。

 ボールが2球続いた。「きっと甘い球が来る」。3球目の直球を強振すると、打球は浜風に乗って伸び、左翼席中段へ入った。

 「試合の流れを引き寄せた」。公式戦初の本塁打を甲子園で、しかも大事な場面で打った5番を、佐々木順一朗監督はたたえた。

 「4番を打ちたい」。それが原動力だった。

 小学1年生から野球を始め、秀光中等時代には4番を任された。「高校でも4番が回ってくる」。自分も仲間も、そう思っていた。

 そこに立ちはだかったのは、1年後輩の上林誠知(うえばやし・せいじ)選手。同じ外野手だ。「ずば抜けていた。足も速いし、コンスタントに打つ」。怖かった。「4番どころか、レギュラーの座も危ない」

 「4番はチームの顔。3年生が座らないといけない」という自負があった。普段の練習から走者がいる場面を想定し、「打点を稼げる打撃」を心がけた。だが、昨秋に新チームになってから、4番は常に上林選手。悔しかった。

 けがが追い打ちをかけた。3月の練習試合で球を顔に受け、前歯を3本折った。復帰直後の5月にも左足肉離れで戦線を離脱し、何とか夏に間に合わせた。

 顔に球を受けた記憶は、簡単には消えない。「本当は、今も右投手が怖い」。それでも球を引きつけて打てるように、左足を上げるフォームから、すり足で踏み込むフォームに変えた。

 5番に定着した今は、小中学校時代は3回ほどしかしたことがないというバントもする。バントの練習を増やし、精度を上げた。

 初戦の佐賀北戦では、1打数1安打1打点2犠打1犠飛。飯塚戦でも、第2打席できっちり犠飛を決め、三塁走者を生還させた。

 「新しい自分」を見つけられたような気がする。「勝つためなら、自分を捨てなきゃいけない時がある」と考えるようにもなった。頂点まで、まだ4試合ある。「もっと勝ちたい」(力丸祥子)

■大舞台で成長実感

 「自分がどういう投手か分かっているのか。どうやって勝ち進んできたか、配球を思い出せ」。1回終了後、ベンチに戻った渡辺郁也(ふみや)投手(3年)と田中吏(つかさ)捕手(3年)に、佐々木順一朗監督が活を入れた。

 初回3点を失った。「制球が甘く、配球も慎重になってしまった」(田中捕手)。福岡大会打率3割5分9厘、1回戦の広島工戦でも10安打を放った飯塚の強打を警戒していた。

 渡辺投手も「打たせてとるのが持ち味なのに、力で押そうとしてしまった。監督の一言で冷静になれた」。制球を立て直し、強気の配球をすれば、流れは来るはずだ。バッテリーは、気持ちを切り替えた。

 先発で6人並んだ左打者には内角低めを直球で突き、右打者には外角へ落ちるスライダーを中心に組み立てた。8回裏には無死一、二塁とされたが、冷静だった。「大丈夫、楽に行こう」。伝令を受け、2三振、中飛と後続を断った。

 佐々木監督は「ガタッと崩れず粘り、大人になった」と渡辺投手をねぎらった。そのエースは「ピンチを無失点で切り抜け、自分の成長を感じた」。田中捕手は「一つずつアウトを重ねることが大切だと実感した」。バッテリーは、甲子園という大舞台を楽しみ始めた。(長嶋晶子)

     ◇

 《仙台育英・小杉勇太主将》 初回に先制されたが、誰も焦らなかった。早坂が本塁打を打ち、流れを作ってくれた。ただ、相手投手が代わってからは決定打が出ず、次は好機の時こそ楽に打ちたい。気を引き締め、2年前に届かなかった8強を目指したい。

 《仙台育英・佐々木順一朗監督》 打ち合いを予想していたが、エラーから3点奪われ、流れが全部向こうに行った。もやもやした雰囲気を早坂が本塁打で一掃してくれた。投手の渡辺もいらいらせず粘った。ピンチの連続だった気がする。長い試合だった。

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