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社説

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閣僚靖国参拝 不信の連鎖招くだけだ(8月16日)

 野田内閣の羽田雄一郎国土交通相と松原仁国家公安委員長兼拉致問題担当相が終戦の日のきのう、靖国神社を参拝した。

 閣僚の靖国参拝は2009年の民主党政権発足後初めてだ。首相や閣僚の参拝を控えてきた党の方針や、野田内閣発足時に確認した自粛方針に反する行動だ。

 日韓、日中の関係が竹島や尖閣諸島の問題をめぐりぎくしゃくしている時である。参拝は日本に対する不信を増幅させ、さらなる関係悪化を招くことも予想される。

 日中韓の世論が内向きな愛国心に傾かないよう、冷静な対話の積み重ねによってアジア各国との信頼関係を築いていく姿勢が欠かせない。

 羽田氏は超党派の「みんなで靖国神社を参拝する国会議員の会」の一人として、松原氏は公用車ではなくマイカーを利用し、ともに「私的参拝」であると強調した。

 政治家にも思想の自由はある。だが靖国神社は先の戦争を正当化する歴史観をもち、A級戦犯を合祀(ごうし)する。閣僚という国政に大きな責任を持つ人物が参拝すれば、戦争への「痛切な反省」を公式に示してきた日本政府の姿勢が疑われるのは必至だ。

 民主党は09年衆院選マニフェスト(政権公約)で「中国、韓国はじめアジア諸国との信頼関係の構築に全力を挙げる」と宣言した。これに基づき民主党の歴代内閣は首相や閣僚の靖国参拝を自粛してきた。

 羽田、松原両氏の行動は理解に苦しむ。党や内閣の方針に背く行為について明確な説明が必要だ。

 首相の指導力不足は明らかだ。あらためて閣僚に自粛を求めたのに聞き入れられなかった。消費税増税をめぐる党分裂で求心力が低下しているからではないか。首相は「閣内不一致」を招いた2閣僚に厳しい態度を示してもらいたい。

 参拝そのものが不適切な上に、タイミングの悪さが拍車をかけた。

 韓国大統領の竹島上陸を受け、日本政府は駐韓国大使を事実上召還した。大統領は天皇陛下の訪韓に関し謝罪を求め、日本国内に反発が広がっている。2閣僚の参拝は韓国に対抗する動きと受け取られかねない。

 日中関係も、石原慎太郎東京都知事の尖閣購入発言や香港の活動家の尖閣諸島魚釣島上陸で揺れている。

 このままでは日韓が目指す「未来志向」の関係や、日中の「戦略的互恵関係」の構築は遠のくばかりだ。

 宗教施設である靖国神社への閣僚参拝は政教分離原則に抵触する可能性も指摘されている。02年に当時の福田康夫官房長官の私的懇談会がまとめた「国立」「無宗教」の原則に沿って新たな追悼施設をつくる議論を活性化させなければならない。

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