【ソウル】韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領の竹島(韓国名:独島)訪問を受け、日本政府は、抗議の姿勢を鮮明に示すため10日に武藤正敏・駐韓大使を一時帰国させた。
韓国大統領として初めて同島を訪れた李大統領は、同島で独島は韓国の領土だと言明し、「命をかけて守らなければならない価値がある」と強調した。この島は「ライアンコート・ロックス」とも呼ばれている。
日本の野田佳彦首相は、これに対し「到底受け入れることはできない。毅然とした対応をとっていかなければならない」と述べ、竹島が歴史的にも国際法上も日本の領土であると主張している。
この訪問は、先に発表された日本の防衛白書が竹島を日本の領土と記述したことへの報復のようだ。
2010年末にはロシアのメドベージェフ大統領(当時)が日本が北方領土と呼ぶ南クリル諸島と呼ばれるロシアが支配する島々の日本本土に最も近い島を訪問したが、このときも日本政府は10日に韓国に対して行ったのと同様の抗議をしている。
李大統領は日本の支配からの解放と第二次世界大戦の終戦を記念する15日の演説で領土問題と日韓問題に言及するとみられる。
5年の任期が残り7カ月となった大統領は最近、大戦中の従軍慰安婦問題など日本との歴史上の争点についての進展がないとして国民の批判を浴びている。過去1年に韓国の憲法裁判所は日本による植民地支配時代の補償問題で2件の判決を下している。
同大統領は08年の就任時、対日関係について未来を見すえた関係を築くことを呼び掛け、歴史問題にはあまり触れないようにしてきた。
日本ではこの島の領有権は政治問題の中ではそれほど注目されておらず、騒いでいるのは、ほぼ右派の政治家だけだ。日本政府の防衛白書における竹島に関する言及とそれに対する韓国の批判と領有権の主張はほとんど年中行事化していた。
しかし大統領府は10日、大統領が竹島の訪問に出発してから、このことを発表するなど、これまでとは異なった。
「しばらく前から兆候はあった。大統領は進展のなさにうんざりしていたのだろう」と、元大統領補佐官で現在は延世大学の学部長のリー・チュンミン氏は述べた。
日韓間の争いは、韓国の対北朝鮮関係にも波及した。北朝鮮は、韓国・日本両国への批判を高めた。北朝鮮の国営放送は防衛白書について、日本政府が、この島を朝鮮への再侵攻への足掛かりとしようとしていると批判した。
両国の歴史書によると、この島は長く韓国に帰属していたが、100年ほど前に日本が韓国を植民地化したのを受けて領土争いの的になった。
島は小さく経済的価値はほとんどない。しかし、両国の政治家は愛国心を鼓舞するために折に触れてこれを領土問題として取り上げる。だがそれ以外では両国は政治経済的に緊密な関係を維持している。
韓国人は党派によらず、この島の領有権をめぐって感情的になりやすい。有名な政治運動家がニューヨークのタイムズスクエアやロンドンのピカデリーサーカスに韓国の領有権を主張する広告を出したこともあった。
6月下旬には、韓国内に日本の占領時代への批判が強いことから李大統領は、日本と結んだ軍事的な情報交換についての合意への署名を当日になって延期せざるを得なくなった。この合意は韓国が20カ国の国々と結んでいるのと同様の内容だ。しかし過去の歴史が障害となって日本との合意への批判が高まった。
昨年2月には、与党・民主党の2議員が島根県の主催する「竹島の日」の式典に初めて参加した。昨年夏、日本の最大野党・自民党の国会議員がこの島を訪問しようとしてソウルに入ったところ、韓国政府の妨害に遭い訪問できなかったこともあった。