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渋谷駅はなぜ1日280万人をさばけるのか

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2012/7/19 6:30
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 また、プラットホームには、単式、相対式、島式、櫛形といったいろいろなタイプがあるため、アクセス方法もタイプによって異なる。路線によっては改札がいくつもあるのでルートもより複雑になる。さらに、プラットホーム間のみならずハチ公口、宮益口、東口、西口といったメーン口とプラットホーム間をつなげているルートも調べた。これら条件を加味し、全部で84ルートを検討した。

図2 渋谷駅内ルート図。副都心線から銀座線へ
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図2 渋谷駅内ルート図。副都心線から銀座線へ

図1 渋谷駅内ルート図。井の頭線から埼京線へ(資料:図6まで田村 圭介、吉永由美子)
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図1 渋谷駅内ルート図。井の頭線から埼京線へ(資料:図6まで田村 圭介、吉永由美子)

 いくつかのルートを、田村研究室で作成した渋谷駅全体構内図を使って見てみよう。図1の赤いラインは、井の頭線から埼京線への乗り換えルートを示している。これを見るといかに複雑なルートかが分かると思う。しかし、利用者にはこんな複雑なルートを毎日利用しているという認識はないだろう。

 次に図2は、副都心線(地下化される東横線)から銀座線への乗り換えルートである。利用している人が本当に気の毒に思えてしまう。多分このルートの利用者こそ、自分が毎日9階層分のビルに相当する上下移動を行っている認識はないであろう。なにか体が疲れやすいと感じているならば、これが一因ではないかと考えられる。あるいは、これがために足腰が鍛えられているとか…。

■計画した「導線」、発見した「動線」

 2011年、全84のルート図を展示する機会があった。そのとき、来訪者からある一つのルートについて、さらなる最短ルートがあることを指摘された。それは駅の外に出て、街中を通って行くルートであり、大変驚かされた。

 建築の設計をしていると、たびたび用法について戸惑ってしまう「動線」と「導線」の二つの語句がある。彰国社「建築大辞典」には動線しか掲載がなく、「建築空間における人・物などの運動の軌跡、運動量・方向・時間変化などを示した線」とある。百貨店業界では導線を多用する場合があるようだ。単なる「動く」線ではなく、計画的に「導く」線という意味を含められる「導線」は、運営者には魅力的である。

図3 重ね書きした渋谷駅内全移動ルート図
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図3 重ね書きした渋谷駅内全移動ルート図

 導線と動線について興味深いことが、ウェブサイトの「アクセス解析」にある。アクセス解析におけるユーザーの導線と動線は、計画と実績で使い分けられることがある。すなわち、運営者がユーザーのアクセスルートをあらかじめ計画しても、必ずしもその通りにユーザーが利用するわけではなく、実際には、合理と便利の点から利用者が別ルートを発見し、ルートとして成立することがある。運営者が計画したルートが導線であり、ユーザーが見つけた実績のルートが動線である。渋谷駅の動線の変遷を見てみると、この導線と動線のいたちごっこの賜物であることが分かる。

 全84ルートを重ねてみたものが図3である。複雑怪奇だ。しかし、この複雑な図から不思議なパターンが浮かび上がってきた。

■二つのリングが見える

 現代科学の「複雑系」の話に触れるとき、つい渋谷駅のことを頭に浮かべる。渋谷駅は一日約280万の乗降者数を持つわけであるが、フランスのパリの人口が約220万人なので、どう見ても驚異的である。ちなみに東京の一日乗降者数で渋谷駅は、新宿駅、池袋駅に次いで3番目。世界の一つの都市人口に匹敵する数の乗降者が、渋谷駅内をどのように動いているのか。あるいは渋谷駅がどのようにその数の人々をさばいているのか。渋谷駅を利用するたびに、こうした視点で見てきた。

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