(本)矢沢永吉「成りあがり—矢沢永吉激論集」

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2012/08/16


夏休みに読んだ本。書籍の作り方が面白いと聞いて読んでみたのですが、内容も素晴らしいです。こんな本があったんですね。読書メモをご共有。


音楽で成功する秘訣

いまでも若者に言いたい。音楽学校通ってるやつ、全部やめなさい。必要ないから。
オレの経験から、言える。
書道の先生がいまして……教える。必要なし。商売だもん、そう思う。金儲けに塾やってるだけのことなんだって。
オレは、そう思う。紙買ってスミ買って、書けばうまくなるよ。ほんとにやりたいやつはうまくなるって。
まあ、他の世界は知らないけど、音楽の場合は特に言える。
音楽の世界で成功するやつ、言おうか。
目立ちたいやつだけよ。そういう気持ちがなきゃダメね。人の前に出てやるのが誰よりも好きなやつ、成功するよ。
オレがそうだったもん。


アーチストが馬鹿だから

「わかんないけど、エレキ持ちゃカッコいいじゃん。ナオンにモテテよォ」
圧倒的に多いよ、そういう感じ。
オレのやり方、考え方というのは、完全に向こうのアーチストの方法よ。
エルトン・ジョンとかさ。
いま、すごくそれを感じる。成功するよ、それは。
エレキ小僧じゃないんだもの。
クソみたいなマネージャー連中が、ハンコをペタッと押し、イイ加減なことができる理由言いましょうか。
アーチストが馬鹿だから。そういう日本の音楽会だったから。


生活でなきゃいけない

エレキ・ボーイの時代は終わったんだよ。
エレキ、ガチャガチャ。ナオンにキャーキャーの時代は終わるのよ。ホントに。
エレキでウオーってのは、生活でなきゃいけない。
自分でメシ食ってる領域ってのは、生活でなきゃいけないんだ。事務でペン握ってるやるも、板金屋やってるのも、米作ってるのも、全部同じ。価値は違わないんだ。
ふつうに、職場で働いてるやつが、ミスやるでしょ。上司に叱られる。
アーチストってやつらも、同じように思わなくちゃダメ。
手を抜いたら、お客に叱られる。これを常に……。
ほんとに疲れたら、やめろって。グズグズせずに。
会社でも、上司に二回、三回、五回……あんまり起こられたら、クビになる前に自分からやめたほうがいい。なぜなら、自分はその仕事に合ってないと判断すべきだから。
合った職を探す。それが才能よ。才能ってのは、何も、創る人間にだけ使われる言葉じゃないと思う。
タイプライターがやれる。これも、才能だよ。だって、オレ、できないもん。それができて、メシ食えてるってのは素晴らしいよね。


過去のものを引き継ぐほど簡単なものはない

矢沢永吉、ソロになった。サンプラザでコンサート。
ラメを着て「アイ・ラヴ・ユー、OK」を歌った。「夏のフォトグラフ」「安物の時計」……客、唖然としてたよ。
違和感がすごかったんだと思う。キャロルで、ロックンロールで盛り上がってる時に、あのコンサートだもの。
でも、それがクリエートでしょう。勝負でしょ。男一匹でしょう?
過去のものを引き継ぐほど簡単なものはないんだよ。オレは、あの頃、「ファンキー・モンキー・ベイビー」みたいな曲なら、寝てても書けたよ。ナメてるんじゃない。
だって、ロックンロールは、オレにとっちゃ空気みたいなものなんだから。息を吸って、吐き出せば、もうロックンロールができあがってる、そんな感じなんだよ。
オレは、色を変えた。散々だったよ、あのサンプラザの時は、安全ラインを越えたでしょう、その辛さがほんとに肌で感じられた。
だけど、うしろを向きたくないんだ。何で解散したんだ。そうだよ、オレは、これからは矢沢永吉として新しい世界をつくるというか……。どこまでできるか判らないけど。
だから、キャロルの遺産みたいなものを食いつぶして生きていくなんて、オレはいやだったんだよ。


ファンとの向き合い方

ファンって、大事。そんなのは常識だ。
そんなふうなことは、当然の当然。
オレに言わせれば、まず、ファンってのは冷たい。身勝手なのね。
これは、悪いってことじゃないよ。そういうものだ。
よく見てる、オレたちを。
だから怖い。そして幼い。そういうこと全部含めてファンだと思う。それを知ってるか知らないかじゃ、大きな違いがある。
浮かれちゃ行けないし、媚びちゃいけないと思ってる。
オレ、六割は、自分指向でやってる。
オレのオリジナリティーを出して説得していく。ファンよりも先を走る。
合わせよう合わせようと考えてるやつには、本物はできない。
もちろん、ファンが何を求めてるか、考える。でも、それをあんまり意識したくないんだ、それが心情だね。
「オレ」なんだ、まず。
オレの「オレ」との闘い。
それをファンが評価すればいい。


七、八、九までは自分でやれ

だから、音楽やりたいやつに、オレ、言っとくよ。
頼るなって。
十が全部なら、そのうちの七、八、九までは自分の力でやっていけ。残り三、二、一は黙っていても集まってくる。
契約さえ結べれば、何とかさんとさえ知り合えば、成功する?そんなに甘くない。
そういう考えは絶対やめた方がいい。


この本、出版されたのはなんと1980年。30年前の本です。今でこそ「矢沢永吉」はソロアーティストとして知られていますが、当時、人気バンドを解散し、ソロとして活躍を始めた時期の思いを知ることができて興味深いです。

僕自身も「物書き」という意味では、自分をアーティストだと思っています(おこがましいと言われようが、まぁ、僕の自覚のようなものなので他人から何を言われようが関係がありません)。読者の方々に感謝をしつつも、今後も自分の表現を追求していこうと思います。

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