日経デジタルコア・CANフォーラム共同企画「地域情報化の現場から」

日経デジタルコア・CANフォーラム共同企画「地域情報化の現場から」

 e-Japan計画でIT先進国を目指す日本だが、地域でのIT化は置きざりにされている。過疎地にブロードバンドを提供する、地域おこしにITを活用するなど、現場での取り組みが重要だ―――日経デジタルコア事務局と、CANフォーラム(國領二郎会長)はこのような認識で一致し、地域情報化の先端事例を取材し、各地での実践の参考に供したいと考え、本企画を連載します。
月1回を原則に、現地取材を報告します。


ツマモノ使用例

第18回 山間の町を元気にした「葉っぱビジネス」
〜徳島県上勝町の「いろどり事業」にみる高齢者活性化〜

 「ところ変われば品変わる」−−という言葉があるが、野山にある、タダの葉っぱが、都会の高級料理店でツマモノとして使われる。それを情報ネットワークで結んでビジネスにし、さらに高齢者や女性の「やりがい」につなげた町がある。徳島県勝浦郡上勝町。徳島駅から車で1時間のところにある、人口2,200人程度の小さな町がそれだ。


バーコードシールを貼る松田文子さん

第17回 「農家のかあちゃん」が経営者に
〜愛媛県内子町の特産物直売所「からり」にみる情報農業最前線〜

  松山からワンマン電車に揺られて1時間の山間に、時代の空気が閉じ込められたような町がある。愛媛県喜多郡内子町。白壁の街並み、大正ロマンの雰囲気を残す劇場「内子座」で知られるこの町には、もう一つの舞台がある。主役は農家の女性たち。全国の人を引き寄せる内子フレッシュパーク「からり」特産物直売所では、農家と消費者を結ぶ情報システム「からりネット」が活用されていた。


西興部コミュニケーションネットワークの司令塔(ア

第16回 トリプルプレーをどう活かすか
オホーツクの村、「にしおこっぺ」の果敢な挑戦〜
  「にしおこっぺ」――北海道の東北部、オホーツク海に近い小村の西興部村だ。既設の村内CATV(ケーブルテレビ)の設備更改で、一気に光ファイバーにして、固定電話も載せた。米国で話題の「トリプルプレー」(電話、CATV、インターネットを1本のデジタル加入者回線でサービスする形態)がこの村では実現している。その環境を利用して、酪農家向けの経営支援サービス、高齢者の健康管理・見守りサービスなどを提供中だ。せっかくの設備をフルに活用して生活密着サービスにしようと、村役場の奮闘が続いている。


電子ホワイトボードを使い発表する生徒たち

第15回 ITは方法論、教育の理念は変わらず
〜つくば市が進める教育情報化の取り組み〜

  「学校教育でIT(情報技術)をどう活用するか」は、インターネットが普及するはるか以前、80年代から議論されてきた課題だ。だが、企業や家庭にパソコンが浸透し、ブロードバンドが当たり前になりつつある一方で、学校、特に小中学校の情報化は遅々として進んでいないのが現実である。そうした中、注目を集めているのが茨城県つくば市の取り組みだ。1977年に、いち早く学校へのコンピューター導入を果たし、その後グループウエアやテレビ会議システムなどを活用した先進的な取り組みを進めてきたつくば市は、IT教育のトップランナーとして全国に知られている。実際にその教育が行われている現場を訪ね、関係者に話を聞いた。


電柱上に取り付けたwebカメラと建築中の住宅

第14回 情報の透明性が信頼を生んだ
〜鹿児島建築市場」からの住宅生産革命が全国へ〜

  中小工務店を中心にバーチャルな企業集団を形成する「建築市場」(けんちくいちば)の動きが、全国的に広がっている。IT(情報技術)を活用して木造住宅の建築生産システムを根本から変革しようというものだ。発想の原点は「ウソの無い情報を共有する」という、単純だが実行が難しかったテーマ。震源地の鹿児島と隣県の熊本で、そのエネルギーに触れた。


光ファイバーが架設された山間の町・宮崎県木城町

第13回 山間の町が「日本最大の光ブロードバンドの町」になった
〜不可能を打破した宮崎県木城町とNTT西日本の連携〜

  ブロードバンド化が進むわが国だが、主役はADSL(非対称デジタル加入者線)。ADSLよりも高速の光サービス(FTTH)が、全世帯の3割に導入された町がある。宮崎県の山間部にある木城町がそれだ。採算がとれないと通信事業者によるブロードバンドサービス提供予定のなかった山間の町。そこが山間部における日本最大の「光ブロードバンドの町」になったのは、町役場の熱意とそれに呼応したNTTの尽力だった。


電子カルテに添付された内視鏡写真を診る中村医師

第12回 ITを活用した地域連携で安心医療を実現〜山形・鶴岡地区の「Net4U(ネットフォーユー)」
  山形県鶴岡市を中心とする地域で、開業医、病院、訪問看護ステーションなどが電子ネットワークで必要な情報を共有し、連携しながら患者の治療に取り組んでいる。このプロジェクトの愛称「Net4U(ネットフォーユー)」は、New E-Teamwork by 4 Unitsの頭文字。4Unitsとは、病院、診療所、介護福祉施設、検査センターのこと。読めば「あなた(患者さん)のためのネットワーク」と聞こえるのがミソだ。


北条小のネットデイでは335人が力を合わせた

第11回 地域が一体となって手作り情報化が進む
〜千葉県南房総地域で頑張る「よそ者」「若者」「バカ者」たち〜

  千葉県館山市を中心とする南房総地域で、IT(情報技術)による地域おこしが盛り上がっている。きっかけは市役所の地域情報化計画策定だが、そこに「よそ者」「バカ者」「若者」と自称するコネクター(人と人とをつなぐ人)が加わり、地域のITのプロたちが加わって、インフラ整備、地域コンテンツの充実、リテラシー向上(ITを活かせる人づくり)を三本柱に、大きなうねりになりつつある。人口減少を食い止めるため、地域をどう活性化するか――どこの地域でも抱える問題への解答が一つ出来つつある。


高校生によるまちづくりコンサートが開かれた 第10回 「ガツンと住民ディレクター」
〜熊本県での番組制作を通じた人づくり・地域づくり〜

  熊本県・人吉球磨地域で住民自身がディレクターとなってテレビ番組を制作している。生活に根ざした作品は視聴率も高い。「テレビは見るものではなく、使う(出る)もの」という合言葉で、番組制作技術を誰にでも扱えるように解放したことで、テレビは見るメディアから、参加しながら共に作るグループメディアへと大きく変化し、地域を内から活性化しつつある。

高校生によるまちづくりコンサートが開かれた 第9回 地域ポータルサイト0563.net
〜花火屋の親父≠ェ街を変える〜

 0563.netは、愛知県西三河地区、西尾市を中心とした1市3町をカバーする地域ポータルサイト。行政の支援に頼らず、NPO法人0563.netが自主運営しているのが特徴だ。ここでは、0563.netが中核となって、若者を中心としたまちづくり活動が西尾市の行政を変えるなど、市民主導のダイナミックな地域づくりの動きが起きた。しかし、リーダー個人に依存する構造からどう脱却できるか、自立性・継続性の確立が課題だ。

島村秀世総務部参事監 第8回 「小分け発注」で地場ソフト企業を育てる
〜長崎県庁がオープンソースの牽引車に〜

 長崎本のITの大きなビジネスチャンスとされ、コンピューター・ベンダーが受注合戦を繰り広げている時、日本の最西端・長崎県ではオープンソースをベースにした小分け発注が実施され、地元のソフトハウスを自立させる試みが根付きつつある。きっかけは、東京から乗り込んだ一人の民間人の、「これでいくしかない」の思いだった。

米沢BNOの代表になった上林教授 第7回 鳥取発、地域メディアを広域連携へ
〜中海テレビ放送+サテライトコミュニケーションズネットワーク〜

 ローカルコンテンツを核に、地域から地域へ、地域から全国への情報発信、さらには広域連携に挑戦――住民と同じ目線で地域社会を見つめてきた鳥取県のケーブルテレビが、今までの民放キー局のトップダウン発想の常識を覆す戦略を展開中だ。

米沢BNOの代表になった上林教授 第6回 生活に根ざした情報化がじわりと進化へ
〜山形県置賜地域の事例〜

 IT(情報技術)を活用した地道な地域活性化の取り組みが全国各地で起こっている。山形県置賜地域では、自家用農産物のインターネット産直である「おすそわけドットコム」、「ソフト小村」、「いつでも参観日」など、背伸びしない取り組みがじわじわと生活に根付きつつある。

友廣さんは翌日東京のコンサルティング先へ出張 第5回 「佐賀の産官学共同ビジネススクール 〜鳳雛塾の挑戦」
 地元産業界が県や大学と共同で、ITを活用した九州初のビジネススクール「鳳雛塾(ほうすうじゅく)」を立ち上げた。小さなコミュニティーだからこそできた、人材育成を通じた地域経済活性化の取り組みを紹介する。

高緑利江さんが開いたティーパーティー 第4回 市民の知識をネットで顕在化 〜富山インターネット市民塾
 市民が自ら講師となって、ネットとスクーリングで教える「富山インターネット市民塾」が5年目を迎えた。東京や札幌でも同様の塾が始まった。市民塾成功の原因を検証する。

街角のビルに取り付けられた無線インターネットのアンテナ 第3回 市民パワーで無線インターネットが広がる 〜京都の「みあこネット」
 無線インターネットが迷走する中で、京都では市民の力で「おもてなし」モデルというユニークな公衆型サービスが広がっている。その「みあこネット」の誕生と運営を検証し、今後を展望する

三重県津市のZTV本社 第2回 CATVは地域総合情報サービス業へ〜先取り経営のZTV
 インターネットの普及で、CATV業者もインターネット・サービスに取り組み始めた。三重県津市に本社を置くZTVはその一番乗りで、さらにIP電話も提供し始めた。「地域総合情報サービス業」を目指すZTVの狙いを聞いた。

「兵庫県全域にADSLを」とネットワーク図を示す関西ブロードバンドの三須社長 第1回 低価格ADSLを全県に〜兵庫県で進行する民間共同事業
 ADSL(非対称デジタル加入者線)業者の大半が「採算がとれない」と相手にしない過疎地でADSLを提供する業者が兵庫県に現れた。安値の秘密はバックボーンに兵庫県が運営する幹線を利用すること。県も市町村に対して補助金をつけて応援を始めた。



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 CANフォーラム http://www.can.or.jp