マイケル・フェルプスの金8個獲得など、五輪で大いに盛り上がっているのは、米国も日本と変わらない。しかし、「星野ジャパン」に大きな関心が集まる日本と違って、米国では五輪野球はまったく無視されている。
なぜまったく無視されているのか、その最大の理由は、スター選手が一切出場していないことにある。NBAのスター選手で「ドリームチーム」を編成したバスケットボールが大きな注目を集めているのとは対照的に、ファンが名前を知らない選手ばかり(大学選手一人を除き、すべてマイナーリーグ選手)でナショナル・チームを編成した野球の場合、試合がテレビで放映される機会さえほとんどない。こと五輪野球に関しては、「関心を持て」という方が無理な状況ができあがっているのである。
では、なぜスター選手が出場していないのかだが、それは、五輪の開催時期がペナントレースの山場と重なっているからに他ならない。優勝争いも佳境というときに、「一銭の得にもならないどころか、損になることを承知で、五輪のために自軍スター選手を差し出す」オーナーなど一人もいないし、選手組合にしても、「五輪に協力しても一銭の得にもならない」ことには変わりがないのである。
というわけで、MLBサイドは、機構も選手組合も、五輪に対してずっと「冷ややかな」態度をとり続けてきたのだが、IOCにしてみれば「五輪は世界最高レベルの選手達がその技と力を競い合う場」であるのが原則なだけに、二流選手しか参加させようとしないMLBの非協力的な姿勢が面白いはずがない。両者の冷たい関係が、2005年の、「北京を最後に野球は五輪から除外」というIOC決定につながったのだが、当地では、「野球は永遠に五輪から除外された」という認識では誰もが一致しているのである。
しかも、日本と違って、米国では、野球が五輪から除外されたことを残念がったり悲しがったりする向きはほとんどいない。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)という国際舞台もできたし、一銭の得にもならない五輪と違って、WBCは、機構も選手組合も経済的に潤う仕組みとなっているからである。
一方、「野球に五輪など不要」とばかりにMLB側がWBCを実現したことに対して、IOC側はますます反感を強めているだけに、両者が歩み寄る可能性はまったくなくなったと言われているのである。
予選リーグもいよいよ大詰めとなった8月18日、当地のスポーツニュースで大きく報じられた「国際」野球大会は、五輪ではなく、ペンシルバニア州で開催されているリトルリーグ・ワールドシリーズだった。メキシコのエース投手が、イタリアを相手に、全打者を三振に打ち取るという「完全な」完全試合を達成しただけでなく、自ら満塁本塁打まで打ったという活躍が大きく報じられたのである。米国では、五輪野球よりも子供の野球の方がはるかに人気が高い事実が、この一事からもおわかりいただけるのではないだろうか。
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