1月10日、ブルース・スーター投手の殿堂入りが決まった。しかし、同じ救援投手であるグース・ゴッセージは、通算セーブ310と、スーターの300を上回る成績を残しているのに落選、「不公平」な結果と、ファンの間で論議を呼んだ。
今回の殿堂投票結果は、「スーターが殿堂入りしてゴッセージがしないのはおかしい」という程度の「騒ぎ」ですんだが、来年は、引退5年目のマーク・マグワイアが候補者リスト入りする。「ステロイド汚染疑惑選手」が殿堂入りするかどうかという、「大騒ぎ」が待っているのである。
マグワイアは、通算583本塁打(歴代7位)と、数字だけを見れば文句なしに殿堂入りの成績を残している。しかし、昨年三月の議会公聴会で「過去については話したくない」と、ステロイド疑惑について「黙秘権」を行使、ダーティーなイメージが染みついてしまった。1回目の投票で即殿堂入りすることはむずかしいだろうと言われている。
投票権を持つ米野球記者協会在籍10年以上の記者達がどう判断するかにも関心が集まっているが、ジョー・モーガン(70年代「ビッグ・レッド・マシーン」時代のレッズで活躍)や、フランク・ロビンソン(現ナショナルズ監督)など、すでに殿堂入りを果たしている名選手達が、ステロイドで成績をかさ上げした選手達が殿堂入りすることに対する不快感を表明していることも注目される。殿堂のメンバーとなった名選手達にとって、「殿堂は選ばれた者だけが入ることを許される聖域」という思いが強いし、ステロイド汚染選手が聖域に入ってくる事態を考えると、まるで自分たちが築き上げてきた実績までもが汚染されるような気持ちにさせられるようなのである。
殿堂入りした選手達の「選良」意識の強さとプライドの高さを示す好例が、2001年の「殿堂ベテラン委員会」規約変更だ。それまでは、ベテラン委員会が、記者投票で殿堂入りできなかった名選手を殿堂入りさせるという救済機能を担っていたのだが、規約変更のきっかけは、同年、ベテラン委員会が、ビル・マゼロウスキー(56−72年、パイレーツ。好守の二塁手として知られた)を殿堂入りさせたことだった。「なんであんな格下の選手を殿堂入りさせた」と怒った殿堂メンバー達が動き、「委員」だけの評決ではなく、殿堂入りしているメンバー全員の投票で殿堂入りを決めるように規約を改訂したのだった。規約改訂後、ベテラン委員会の投票で殿堂入りを果たした選手は一人もいず、記者投票の選にもれた選手を「救済」するための制度が、「格下の選手は誰も入れない」と「拒絶」するための制度に変わってしまったのだった。
殿堂メンバーの名選手達の力は、ことほどさように、無視できないものがあるのだが、かりに、マグワイア、ソーサ、ボンズ、パルメイロ等のステロイド「汚染」選手が、記者投票で殿堂入りした場合も、過去の名選手達が「不快感」を表明するために、式典をボイコットするような事態も予想されるのである。
というわけで、マグワイアが候補者リスト入りする来年以降、ステロイド汚染疑惑選手の殿堂入りを巡る議論が沸騰することは間違いがない。「そもそも殿堂入りがふさわしいかどうかが議論の対象になるような選手に、殿堂入りの資格はない」と喝破したのはフランク・ロビンソンだが、ロビンソンの言に従えば、ステロイド疑惑選手には、一切、殿堂入りの資格がないということになるのだが……。
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